不審者
何気なく目が覚めた。よく眠った感覚があり、気持ちの良い朝を迎えられたという満足感がある。フェイランは外の空気を吸いに、扉へ向かった。
「おはよう、起きたんだ」
「おはようございます」
「気づいたんだけど…私、名前教えてないよね。教えてもらってもないけど」
「ですね、すいません。僕の名前はフェイランていいます。で、」
モノの姿を探すが家中にはいないようだ。
「一緒にいるのはモノ、見当たりませんけど」
「私は、デルフィ。よろしくね。彼女の名前は、彼女自身から朝、聞いたわ」
「そうですか」
「今日村を出ていくの」
「ええ、そのつもりです」
「すぐに?」
「暗くなる前には出たいですね」
「そうね、それがいいわね。暗くなってから村の外に出るのは危険ね」
フェイランには、デルフィの様子は少し寂しそうに見えた。
フェイランは、モノを探しに外に出た。そろそろ村を出るための支度を済ませねばならない。目の前を歩いていたおじさんに声を掛けた。
「すいません」
「はい」
「あの、この辺で見たことない女の子探してるんですけど?」
「…何するつもりで」
「はっ、…この村で見たことない珍しい女の子見ませんでした?」
「…あんたも見たことないけど」
明らかに不審な目を向けられていた。
「ごめんね、この人は怪しい人じゃないから」
「デルフィさん、本当ですか?言動が怪しいですけど、この人」
「大丈夫です」
「まあ、あなたがそう言うなら」
「ここ、ここを歩いているのを見かけましたよ」
「ありがとう」
「フェイラン、あなたさっき不審者だったわよ」
「ありがとうございます。助かりました」