魔法の療法士さん
実体験です。
こんばんは。今日はこの場を借りて、お話をさせてください。
リハビリのスペシャリストの一人に療法士さんがいるんやけど、みなさんの中にもお世話になった方いるかもしれませんね。ぼくは9年ぐらい前に脳梗塞で今回と同じ帝京大学付属病院に入院した時にも、1か月半に渡ってリハビリセンターの療法士さんのお世話になったんですよーって、最近付いた担当療法士さんに言ったんやけど、ついでにその9年前の時の療法士さんとのエピソードも伝えました。
「ぼくは完全な左麻痺で左半身がピクリとも動かんかったんよね。腕も何もかもがだらんととしてて大きな左腕の肉の塊を右腕で支える、その状態でベッドで寝返りも打てずに日がなじーっとするしかなく、かろうじて立ち上がるぐらいは左足がきけてたからたまにベッドの周りをヨタヨタと徘徊すんねんけど、気持ち的には絶望感しかなくて、もー担当医の言うように、自然に神経が再生されて元のように動けるのを待つしかないな〜て、気持ちが萎えてた、そんな時に女性のリハビリ療法士さんが来て『動かせるようにこれから一緒にがんばりましょうね』て励ますんやけど、ぼくはもうぜんぜん乗り気でなくてやる気も起こらんで、リハビリが始まってもその先生がぼくの身体をひねくりまわすのをただ身を任せるだけやったんよね。正直、こんなことして治るの?痛いだけやん。神経が無くなったんやで、今は何やっても動くわけ無いやん、て考えばっかり浮かんでるから、顔にもそれが出てたみたいで、ある時その先生が『あなた、私を信じてないでしょ。よくあるんですよ、初めて来られる方には、療法士の仕事が理解出来ずにリハビリに対して無気力になる人が』て言うなり、今までとは比べものにならない力でぼくの身体をひねったりしてものすごく痛くて『ちょっと先生なにすんですか!』って悲鳴あげた時にその先生が静かに『じゃ、左腕、上げてみて』え? 上がるわけないやん、上がるもんやったらとっくの前に上がっとるわ、て不貞腐れながら左腕をあげようとしたら....上がった。すーっとぼくの左腕が天に向かって上がったんです。ぼく、心底驚いて『先生、上がりました!』『でしょ?これが私の仕事』そのあとはだらんと腕が落ちてもう上がることはなかったけど、先生は『これからのリハビリのがんばりで今のように腕だけでなく左半身が生き返る時間が長くなるのよ。だから、一緒にがんばりましょう』
それ聞いてぼく、涙が溢れだしてきました。人目も憚らずに声を出して泣きました。まだリハビリ始めて数回ぐらいやのにぜんぜんその先生信用してへんで、むしろそんな痛いだけで無駄なことやめて欲しい、そう思ってた自分が情けなくなって涙しか出えへんようになった。それからやねん。リハビリの療法士さんの仕事てどういうもんなんやて興味が湧いてきて、自分でも調べながらその先生と一緒に一生懸命取り組んだんです。それから1ヶ月後には、自分の足でちゃんと歩いて、病院の玄関を出て退院できました。その後は、リハビリ専門の病院に通ってさらに取り組んで、数ヶ月後に会社に復帰しました。もしあの時、あの先生がぼくに魔法を見せてくれなかったら、ぼくの復帰はもっと先だったと思います。ですから先生、ぼく先生のこと信用してるんで、なんでもします。」
先生はぼくの話に驚いてたみたいで「そっか、魔法か....」見たところまだ20代の先生がちょっと遠くを見て何かを考えてる姿を見て、ぼく思いました。話してよかったなって。
おやすみなさい。
患者を助けて行こうとする未来ある若い療法士さんに、何かしらお役に立てたかもしれないと、こころ密かに喜んでいます