生まれ変われるなら
初めて書くものなので拙いものだと思いますが
読んでいただけると嬉しいです。
ピピ…ピピ…
「ん…あれ、やば…寝ちゃってた」
電話の音で目を覚ますと私はスマホの画面を見る。
画面には〘担当さん〙と表示されていた。
「えっ4時間たってる!?締切!!あっ」
慌てて出ようとした私は手が滑り電話を切ってしまった。
溜息をつきながらかけ直すと
「はい。」
「あっえーともしもし…」
「はい。」
「すみません…慌てて出ようとして間違えて切ってしまって…」
「そうですか。」
「……」
明らかに不機嫌であろう声色の担当が淡々と返事を返してくる。
私はイラストレーターをしている。
絵を描くのが好きでそのまま仕事にする事ができて幸せいっぱいだったのが3年前。
今は小説を元に漫画を書いて欲しいという話が出たので私は喜んでひきうけ、他人の作品に肉付けしている日々である。
しかし、自分の好きな絵が描けず、漫画の売上も悪い。
その結果絵柄のせいにもされ、今更別の仕事をしようとも思えず…
読者にも友達にも笑われる始末。
家族にも理解して貰えず家をとび出て一人暮らし。
売れていないからか担当さんもとても冷たい。
仕事だからこそ一緒にやってはいるが、実は私はこの担当が苦手で、多分相手もそう思っていると思う。
だから少しのことでも空気が悪くなったり喧嘩をしたりしていた。
とりあえず話を切り出さないと
「あの、ご要件は…?」
「言わないと分かりませんか?」
「あっいえ、締切ですよね…?」
「そうですね。締切はいつでしたっけ?」
「…19時です…」
「今何時ですか?」
「20時です…」
「終わっていますか?締切の時間に何回もかけたのですが?」
私は担当の質問を質問で返すような話し方が嫌いだった。
追い詰めるような話し方も嫌い。
でも今回は私が締切を守らなかったから言われても仕方ないと思う。
今回だけ、今回だけは。
「…本当にすみませんでした。最近寝不足で…あと1時間あれば仕上げられるので申し訳ございませんがお時間いただけないでしょうか?」
「寝不足とか言い訳はいいですから。あなたのせいで私まで残業ですよ。早く仕上げて送ってくださいね」
わかりました。と返事を返す前に一方的に電話を切られてしまった。
もちろん腹は立つがそれより今は原稿を仕上げなければ。
…あぁ、イライラする。虚しい。私は何のために…
「あー…終わった…」
あれから結局40分ほどで原稿を仕上げ、担当に提出。
またグチグチと言われたが頭に入ってこないし適当にはいはいと答えて謝ってから話を切り上げ通話を切る。
そのまま倒れ込む形でベットに沈んだ。
何も楽しくない。
こんなはずじゃなかった。
大好きなアニメや漫画に憧れ、沢山絵を書いてきてやっと仕事にまで出来たのに…全然楽しくない。売れないからお金もない。
ゲームやアニメの世界なら…私は絶対上手く暮らせるのに。
能力とか手に入れちゃってクエストとかやってお金に困らずに…
世界とか救っちゃったり?できるんじゃない?
ゲームとか割とめちゃくちゃやる方だし、ゲーム内知識とか豊富だし
このまま今アニメで流行りの異世界とか行けたらなぁ。とか。
あー楽しい。妄想の中なら私は自由でヒーローで
なんでも出来るし何処へでもいけるんだろうなぁ
嫌いな人とも話すことないし、むしろ…あ、これはやめとこう。
「異世界やゲームの世界に行かなくても…来世に期待とかしちゃう?」
私は徐に起き上がり、トーンを切るようのカッターを手に取る。
対して殺傷能力はないが、きっと動脈さえ切れれば。
どうせ今の仕事だってそろそろ切られる。
そんなの私が1番理解してる。と思う。そしたらお金も入らない。
生きていけない。
このまま連載が終わったらきっと私は忘れられていくだろう。
それならこのまま嫌いな担当に
馬鹿にした読者や友達に、私を信じてくれなかった家族に
私を一生忘れられないような最期を
私はカッターを首に当て、思い切り引いた。
周りの原稿用紙が白から赤に変わっていく。
手の力が入らずカッターが手からするりと落ちた気がしたが
落ちた音を聞く前に自分の体が倒れ込んだ。
「(何これ痛い!!やばい!!痛い!!)」
室温がどんどん下がっていく。いや、自分が冷たくなっていってる?
寒い。寒い寒い。
やめておけばよかった。痛いのは嫌だ。寒い。
なんでこんなことしちゃったんだろう。
もう少し私は頑張れなかったのか…?
違う、諦めて頑張ろうとしなかったんだ。
ちょっとした気の迷いから大変な事をしてしまった。
「(助けて!助けて…!怖い…!!!)」
声は出なかった。そりゃそうだ首切ったんだもん。
思ったより切れるんだなカッターって
私、自分でやった事なのに誰かに助けてもらおうとしてる。
なんて滑稽だろう。
寒いのに自分から出ていく赤い液体は温く感じる。
本当にこれで死ぬんだろうか…こんなに長く痛みを感じないといけないなんて…もっと違う方法探せばよかった。
いや違う、ちゃんと生きてもっと頑張ればよかった。
もっと見てもらってもっと人気になってもっともっともっと…!!!
「(馬鹿だな私…)」
もう後悔しか無かった。
もし、またやり直せるなら異世界なんて言わないから
ゲームの世界なんて言わないから…もっと頑張るから
もう一度やり直したい
視界が一瞬で真っ暗になり、私は死んだ。
『後悔してますか!?!?』
声が聞こえる。喜んでいるようなはしゃいでいるような…
私は死んだんだよね?
『死にましたよ?後悔してるんでしょう!?そうでしょう!?』
してるよ。してるとも。
でも人が死んでるのにそんなテンション高々に言わなくても良くない?
てかここどこ?真っ暗。浮いてるみたい。
『後悔してますねぇ〜でしょうねぇ!
あんな馬鹿みたいな死に方したら!』
あ、ムカ。いやわかってるよ分かってる。
確かに馬鹿みたいな死に方でしたねはい分かります。
ケラケラと笑う声の主にイライラする私。
なんなんだこいつは。
『いやぁ分かってたらあんな死に方しませんよねぇ!
一時的な感情で首をざっくり!馬鹿ですねぇ!!』
「うるっさいなぁ!!」
流石にイラついた私は声の主に怒鳴った。
その瞬間周りが色付く。ここは…
「え?ここどこ?」
『おはようございます!やっと起きましたか。』
見渡すと真っ白な床に白い壁。沢山の映像が浮遊している。
一つ一つが違う映像を映し出しているようだ。よく見えないけど。
そしてその映像たちの前にニコニコしている女性が1人。
『ここは人が天国と呼ぶ場所。あるいは地獄、あるいは異世界、あるいはー…思いつきませんがそんなところです。』
ぽかんと口を開けてぼーっとする私にニコニコしながら話し続ける女性。
天国…?地獄…?……異世界!?!?
「異世界!?異世界って言いました!?」
私は女性に勢いよく近づいた。…と、思った。
頭に激しい痛みが走る。何が起こった?
『例え話ですよ。全く。脅かさないでくださいよ。
初めて会う者に対して礼儀もないんですね?』
ニコニコ笑う彼女の手にはアニメの女神とかが持ってるような杖が握られていた。
あ、なるほど。殴られたのか。
異世界という言葉に思わず飛びかかってしまった…
「すみませんね…いきなり人を杖で殴る人の方が礼儀がないと思うんですが」
『私はいいんです。人では無いので』
頭を擦りながら立ち上がる私に
相変わらず彼女はニコニコしている。
『あれ、驚かないんですね?私は人ではないことに』
「いや、そりゃそうでしょ…」
彼女は頭にハテナを浮かべたが、状況からして逆に人間であるわけがない。
こんな馬鹿げた空間に1人でいるし、死んだはずの私と話してるし…
よく見たらこの空間は扉もない。
『理解が早くて助かります!落ち着いたならお話を進めましょうか!!』
彼女は手をパン!と叩いて嬉しそうに話し始める。
『はじめまして!私は人が一般的に神と例えている存在です。
女神とでも呼んでくださいな!様は付けてくださいね?』
「はぁ…」
自分を女神と言う彼女は思っていたのとだいぶ違う感じがする。
頭に天使の輪っかがあったりするわけでも翼がある訳でもない。
神聖な服を纏ってるわけでもない。
強いて人と違う所を言うなら彼女の髪は床に着くほど長く
綺麗な水色がかった銀髪であった。
瞳も人間とは思えないくらい赤色の綺麗なグラデーション。
そして何よりとても可愛い。自分より全然若く見える。
中…いや、小学生?の子供だった。
その上彼女は大きなシャツみたいなワンピースを着ていて裸足。
犯罪の香りがするような見た目だった…
彼女はぺたぺた足を鳴らしながら私の元へ歩み寄る。
『さて、貴方は後悔しました。自分で自分を殺しながらなんとも自分勝手ながら生きたいと。間違いありませんね?』
「…はい。」
彼女の言葉に心臓を握られてるような痛みが走る。言葉が痛い。
彼女はニコニコしながら続ける。
『次は頑張るとも言ってましたね?』
「え?」
話が見えない。何を言いたいんだろう?
「生まれ変わることができるんですか?
私、生きてる中でいい事とかしてないですけど…」
よく善行を積むと生まれ変われるとか、悪いことすると地獄に落ちるとか聞くけど…私もしかして何かいい事してた?
地獄に落ちるほど悪いことはしてないはずだけど…
『勘違いしないでくださいな。貴方は誰かの為に頑張ったりとかしてないでしょう?ぜーんぶ自分の為だけの行動ばかりでしたよ…。
見ててこっちが恥ずかしくなるような醜い生き方でしたねぇ』
「うぅ」
言ってることが正しいから言い返すことが出来ない。情けない。
てかこの人毒舌すぎない?心が痛い。
『でも、今そんなゴミのような貴方でも…いや、あなたたちのような人が必要となってきています。私の後ろ、沢山のモニターがあるでしょう?
これは一つ一つが別の世界です。つまりあなたの大好きな異世界ってやつですよ』
「え!?!?」
彼女の杖が一つ一つモニターを指す。
よく見ると、それは私が居た世界にとても似ていたり、戦争していたり、生物が居ない大自然だったり、憧れていた異種族の暮らす世界だったりした。私は胸を大きく鳴らす。
『貴方たちは選ばれました。
この世界のどれかに行き、その世界の問題を解決する事。
それが貴方達に頼みたい…いえ、使命です。
本来は私達が解決することなのですが、この量を捌くには手が足りなくなってしまったのです』
めちゃくちゃ大歓迎!と思ったのだが
私はモニター全てをゆっくり見回す。
落ち着いてよく見てみると戦争は言わずもがな。
自然が黒く染っていたり、生き物が苦しんでいたり…
わくわくするような映像ではなかった。
あと、気になることが
「あの…」
『女神様』
「えっと女神、様?聞きたいことが」
『はいなんでしょう?』
彼女は満足そうにニコニコしている。
「先程から私以外にも居るみたいな話し方をしてるけど…」
『はい、いますよ?沢山』
「私以外にも…あの、その人達は…私はどうして選ばれたんですか?」
彼女は目を1度ぱちくりとするとニッコリとまた笑い一息で
『誰の為にもならず勝手に自分を殺しておきながらも死にたくないと後悔し次は頑張るからと自分勝手な事を言うような人達をそれなら再利用して他の世界のために使ってやろうって事ですよ』
『つまり…簡単に言うと自殺して後悔をした人たちですね。』
彼女はニコニコしながらも怒っているような雰囲気だった。
思わず少し後ずさる。
『まぁでもせっかくですから世界を選ばせてあげましょう!
ただし、1度選んだら変えられません。ゆっくり…次は後悔のないようにお願いしますね?』
「えっいいんですか!?」
思いもよらない言葉に思わず口がにやける。
問題を抱えてる世界とはいえ憧れ続けた異世界。そりゃもちろん
「ここがいいです!」
『ほぉーん…ここですか…』
私が指さしたのはいかにも異世界って感じの風景が映ったモニター。
見たことも無い生き物がいて見たことも無い植物が生えていて…
私は見逃さなかった!さっきちらっとエルフみたいな人が映った事を!
『ここは問題が問題を生じさせてるような終わりない世界ですね!!
大変なとこ選びましたねー感心感心!ちなみに次死んだらおしまいですからね?』
「え」
『では、いってらっしゃーい!どーん!いい人生を!!』
「ええええええっ!?!?!?」
彼女に押されたかと思うとモニターに飲み込まれ彼女の声が遠くなっていく。
上も下も分からない浮遊感が続く。吐きそう。
そして微かに聞こえる彼女の声。
『言い忘れていましたが私達の手伝いとの事で一つだけ貴方の得意な事をその世界で役にたつよう強くしてあります!
後は貴方次第!!!ではよろしくー!!!』
そして彼女の声は聞こえなくなった。
いかがでしたでしょうか?
できたらここはこうした方がいいよ、ここが良かったよなど言っていただけると嬉しいです。
スローペースですが頑張るので、
よろしくお願いします。