表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SUITE SWEETS TIME  作者: りつなり
5/10

05

 週末、セイと二人でシュークリームを食べに出掛けた。あれから学内で会うことはなかったけれど、行ってみたい店があると誘われ、俺も気になっていた店だったので二つ返事で了承したのだ。開店まで、一時間ほど並んだけれど、いつか感じた相性の良さは間違っておらず、自然に会話を楽しむことができた。普段、バイトの時間を除いて、美智以外の人間と話す機会のない俺にとっては、他人と、普通に話せるというだけでも、特筆すべきことだった。

「彼女は誘わなくていいのか?」

「彼女?」

「前は連れていただろう? 二回とも」

「ああ、あれは別に、彼女じゃない。一緒に出掛けたいとしつこいものだから、言い方は悪いが、利用させてもらっただけだ」

「ふーん」

「やはり、一人でこういう店に来るのは恥ずかしいんだ。だから、桃慈のことは本当に尊敬する」

「尊敬? そんな大したことしてないだろ。慣れればどうってことないさ」

「慣れるだろうか……」

「慣れる慣れる」

「でも、これからはこうして、桃慈が一緒に行ってくれるんだろう?」

「……まあ、気が向けば」

 セイは俺と同じで、あまり表情が豊かな方ではない。しかし今は、表面的にはわかりづらいものの、なんとなくだが、心底嬉しそうにしているだろうことが伝わってきた。なんだか少し気恥ずかしくて、そっけない言葉で返してしまったけれど、内心俺も、こんな風に接してくれる友人ができて、同じ趣味を持つ友人と、同じ喜びを分かち合うことができて、本当に、嬉しかった。


「今日はありがとう。あそこのシュークリームが食べれてよかった」

「こちらこそ。ちょっと遠いからなかなか行けていなかったし、ちょうどよかった」

「今度は、桃慈の行きたいところに行こう」

「俺の?」

「ああ、ひとつやふたつ、あるだろう?」

「そうだな……そういえば、チョコレートケーキが美味しいって評判の店があるんだ。ずっと行きたかったんだけど、店主がぎっくり腰で店を休んでしまってさ。でも最近、再開したって聞いたから、近いうちに行ってみたいと思ってたんだ」

「じゃあ、今度はそこにしよう」

「わかった」

 当たり前のように、俺と一緒にと言ってくれたセイ。出会ったばかりなのに、もうずっと前から知り合いだったようにすぐ打ち解けて、話が、何より、好きな物が合う。

 ふと、こんな人間が恋人であれば、今までも上手くいったのだろうか、などと頭に浮かんだけれど、その想像はすぐに自ら打ち消した。だって、彼はどう見てもノーマルだ。友人として接するなら、例え想像だとしても、そのような目で見ない方がいいに決まっている。それに、もしかすると、俺がゲイだと知られてしまえば、彼は離れて行ってしまうかもしれない。それが惜しいと思ってしまうほどに、俺はセイのことを、気に入っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ