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転生魔族の逆襲章  作者: 千万
3/6

意識覚醒と野望


 外は朝になったばかりで、鳥が鳴き始めていて、朝日が出てきていた。

 ワトシアは、目が覚め、気づいたら安価であることが見てわかる自分の硬い布団の上で寝ていた。

 天井が見えるが自分の家の天井だ。

 今更ではあるが、ワトシアの住んでいる家は9畳くらいの少し広めの一室のみ。

 その一室に囲炉裏があるのみ。他にも食べ物保存用の樽とかもあるが、あまり物はない。

 貧乏なのだ。


 目が覚めてから、あれいつ寝たんだ?と思っていたが、よく思い出してみると確か親父と森で狩りをしていたらゴブリンに襲われて、致命傷を負ったはずだが。


 そんなことを思い耽ていたが、何もわからなかった。

 試しに傷のあったはずの背中を手でどうなったか確認してみたが、痛みもないし、触ってみた感じ傷跡もないようだった。

 まさか夢なのか、と考えを巡らせながら周囲を確認してみると、ワトシアの布団の近くで座りながらうたた寝をしているシルアがいた。

 そして、自分の額にぬるくなった湿っているタオル。

 そこでワトシアはやっぱり自分は森に行って意識を失って、誰かにここまで運ばれてお袋に看病されていたことがわかる。

 しかし、親父はどうなったのだろう。

 看病して疲れているだろうお袋には少し悪いが、自分の無事を知らせ、親父について聞こうか。

 ワトシアは起き上がってお袋の肩を揺する。


「お袋。おい起きてくれ」


 そして眠たそうに目を開いて、ワトソンの顔を認識する。

 数秒目が合う。

 なんだ、寝起きでまだ状況が掴めてないのか。


「お袋。俺はどうやら死に損なって、無事なようだぞ。そんなことより…」

「ワトシア!!」


 お袋はいきなり抱きついてくる。

 ちょっと驚きはしたが、当然か。

 一人息子が死にそうになって帰ってきたんだからな。

 やはりとても心配をかけたようだ。


「おいお袋。俺は無事だからもう心配はいらねぇぞ。生命力だけは強くてって次元じゃないような気がするけど、俺は生命力だけが取り柄だからな」

「っ!本当に無事なのね。よかった!」


 そして、ゆっくりとお袋は抱擁を解く。


「痛いところはない?具合悪くない??」

「おう、なんともないな。心配かけたな」

「よかった。よかった。よかっ…た…!」


 お袋は目に涙を浮かべ、安心したような顔でワトシアを見つめる。

 落ち着くまで放っといた後、お袋の目を見て真剣な顔をする。


「親父はどうなったんだ?」


 すると、お袋は穏やかな顔をした。


「大丈夫よ。気を失っていただけみたい。あなたほどの重症では無いわ。ちょっと血を流しすぎているみたいだったけど、今はピンピンしているわよ」

「今親父はどこに?」

「助けてくれた村の守護人のトンガさんのところへ行ったわ。お礼言いに行かないとってね」

「村の守護人?」


 守護人についてお袋に聞くと、丁寧に教えてくれた。

 八年ほど前、つまりワトシアが生まれる三年ほど前に、たまたま立ち寄っていた旅人が村を襲ったブラックベアーという魔物の襲撃から守ってくれたらしい。

 そこで旅人は足を負傷してしまい、村での治療ではうまく治療が進まず、後遺症が残り、派手な戦闘はできない体となってしまった。

 そして、旅人はこの村で何日か過ごすうちに、村をすっかりと気に入ってしまったらしく、村の守護人として森のゴブリンなど弱小な魔物を狩りながら村を守り、生活しているという。


 そんな守護人が森に魔物狩りに出かけると、倒れていた親父とワトシアを見つけて、村まで送り届けてくれたらしい。

 

「本当にトンガさんには感謝しきれないわ。ワトシアもあとでお礼言いに行きなさいな。そういえば、トンガさんもあなたと話してみたいらしいし」


 そうだな。世話になった人のところに礼をしに行くのが礼儀ってものだ。



 しばらくしてから親父が帰ってきた。


「ワ、ワトシア!起きたんだな!さすが俺の息子だ!体だけは俺に似て丈夫でよかったな!生意気な口調は俺に似てねぇが」

「親父は普通に自慢の息子を心配できねぇのか?」

「まあ、心配してないことはなかったが、お前が死ぬビジョンが見えなくてな。俺が起きた時には気持ちよさそうな顔でスピースピーと寝ていたのも見ていたし。それにお前は自慢できる息子でもねぇし」

「ああそうかい。親父こそピンピンしているようでよかったな」

「昔から体だけは丈夫なんだ」

「バカは風邪を引かないっていうけど、その域まで来ると怪我もしねェようだな」

「あ?」

「半分冗談だよ。お互い無事でよかったな」

「半分って言葉は気になるが、そうだな。助けてもらったトンガさんのところにお前も礼言いに行けよ。弱々しい体でできていて、今日礼言いに行けないなら後日でも良いからな」


 もう親父の言い方にこだわっていたら話が終わらないから気にしないことにしよう。

 

「暇だし今日行くよ」

「意地張っている訳じゃねェだろうな」

「むしろ森行く前よりも気分が良いくらいだ」

「そんな軽口叩けるなら大丈夫そうだな。行って来い」








 昼過ぎ、ワトシアはトンガという守護人の元に来ていた。

 トンガの家のドアをノックすると、トンガは来るのがわかっていたかのような口調で入れと言う。

 お邪魔しますとトンガの家に入ると、トンガの家はワトシアの家よりも狭く、部屋の真ん中に囲炉裏があるだけの、とても質素な部屋だった。


 トンガは刻まれたかのような皺だらけの顔をしており、頰には爪で傷つけられたかのような三本の傷跡が縦にあった。短髪の白髪で白い髭を口の周りを覆っている。そして全身が鍛えられており、一目でとても強いのだろうと思わせるほどの完成された体をしていた。しかし、瞳には健気な子供を見守るかのような優しさに満ち溢れた瞳をしており、決して怖い印象は抱かなかった。


 囲炉裏の一辺に座っていたトンガはワトシアを横に座るように勧める。

 ワトシアはトンガの横に腰を下ろす。

 

「この度は、助けていただきありがとうございます」

「気にするな。それよりも体に異常はないのか?」

「ああ、はい。ピンピンしております」

「そうか、なら良いんだが…」


 そして考え込むような顔をして視線を若干落とす。

 スッと顔を上げ、ワトシアに視線を向けると何か言いたそうな顔をしている。

 何かを言うか迷っているようだ。 

 そんな顔をされると、こっちが気になって仕方ない。


「えっと、何か言いたい事とかあるんですか?」

「ああ、ちょっと伝えるべきが迷っていたんだが…」


 そんなの見てわかるわ!

 ワトシアは催促をする。

 

「こっちが気になって仕方ないので教えてもらっても良いですか?このままだと夜も眠れません」

「うーむ、お前なんで意識失っていたか覚えてるか?」

「はい、ゴブリンに矢で刺されたからですよね?」

「そうだ、お前は気づいているか知らんがあれはどう見ても致命傷だった。本来なら助からん」

「それは俺も気になっていました。実はどうやって傷を治したのか。誰が治してくれたのか、いろいろ疑問があったんですよ」

「俺が見つけた時はお前さんの父親は助かるだろうと思ったが、お前は見た感じ致命傷であった。死んで当然の傷だったのだ。しかし、お前の脈動は強かった。まるで致命傷ではないかのようにな」

「それって…」

「それを確認した俺は、ある可能性に至り、お前の背中に刺さっている矢を抜いたのだ。すると、治癒魔法を使ったのかのように数秒もかからずに傷が塞がったのだ。おそらく破損していた臓器ごとな」


 まさか、そんなことがあったとは。

 ていうか。


「で、なんで俺は助かったんですか?その可能性とは?」

「その可能性とは『スキル』のことだ。おそらくお前は再生や回復の効果のあるスキルを保持していると考えられる。可能性とは言ったが、ほぼ確信していた。致命傷で助かるなんてそれ以外にあり得ないからな」

「スキル?スキルってなんですか?」

「スキルとはそいつに備わった特殊能力のようなもんだな。魔法とも少し違う。まあ、スキルにはお前さんのような回復系であったり攻撃系であったりいろいろあるが、スキル保持者なんて人口の1割もいねぇ。しかし致命傷すら治すスキルなんて聞いたことないんだよな」

「魔法なんてものもあるんですね。あれですよね?火出したり水出したり」

「聞いたことはあるようだな。そんな感じだ。魔力を使うことにはなるけどな。ちなみにスキル使用にも魔力は使う」

「なるほどな」


 魔力とか魔法ってのはRPGゲームとかでよくみる感じのやつだろう。

 とりあえず、魔力とやらを使って致命傷を治せたってことか。

 そんなスキル持っていたなんてラッキーだったな。

 前世と違ってそこそこついているようだ。

 逆に考えると、そのスキルとやらがなかったらまた死んでいたのか。

 しかも再生系のスキルが。

 だいぶ運あったな、そう考えると。


「ちなみにそのスキルとやらにデメリットなんてものはないんですか?」

「スキルによって違うからな。そういうのは調べてみないとわからない。それかだんだん使っているうちにわかっていくか」

「じゃあどうやって調べれば良いんです?」

「この村じゃ何も調べられん。せめて近くの街にでもいかねぇとな」


 じゃあ、今知るすべはないのか。

 というか、だんだん使っていうちにわかるってデメリットがあったら割と危険ではないのないだろうか。

 これから先、このスキルを試す場面などもあまりないだろうし、試しに怪我してみようなどとも思わない。

 せっかく違う世界とはいえ、また新たな人生を歩み始めたのに実験で心臓潰して死んだなんて冗談じゃない。

 

 何が何でも生き残ってやる。

 せめて寿命までは。


「まあ、お前はまだ五歳だ。何も今焦っても仕方ねぇ。そのスキルを活かすも活かさないもお前次第だ。しかし、この村でそのスキルを活かさずに人生全うするのも惜しい気がするがな」


 確かにそれは惜しい。

 それに前世よりも楽しい人生を全うしたいという気持ちも強い。


 どこの世界でも大切なのは金に違いない。

 五歳児の現時点から努力さえすれば、前世よりも確実に良い暮らしができるだろうし、魔法とかスキルというものを除けば、この世界は地球の何百年も前の生活基準であるためにできることは多そうだ。


 おそらく闇金なんかも発展していないだろうしな。

 法に触れているかも疑問だ。


 なんだか先の展望が見えた気がする。


「トンガさん、街に行きたいときはどうすれば良いですか?」

「その時は俺に言え。手助けしてやるからよ。俺も元旅人だ。多少の手助けはできる」

「その時はお願いします」


 ワトシアは軽く頭を下げる。

 

「そんなかしこまるなよ。この村にはお世話になってるし気に入ってんだ。その村の子供を世話するのも一村人の役目だろうよ」


 ワトシアもこの村は悪くないと思っているし、むしろ好ましく思っている。

 だが、情けなく死にたくないし、せっかくこの世界に来たのだから世界を見て回りたい。

 いずれはこの村を出よう。

 そして今度こそ、幸せな人生を歩んでやる。


 そしてワトシアはトンガさんに再度助けてもらった礼を言って、トンガの家を後にする。


 暗くなり始めた家までの短い帰路で考えを巡らせる。

 前世じゃできる訳のなかったことをして、堂々と死にたい。

 そのためには今できることも多いはずだ。


 それになにか目標も欲しいが何にしようか。















 そうだな…世界制服なんてものもいいかもな。




 ワトシアの三日月のような笑みを浮かべた。

気ままに執筆しているので投稿は不定期です。

ご了承ください。

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