何もかも終わった後では前世の記憶が役立ちません
<蹄鳴と車輪の音が響く>
<身を屈め頭を下げる三人の横に馬車が停まる>
中から出てきた人は、
「リュイ」
私を、そう呼んだ。
――クロムナード・リュイ・ハリス――
リュイと呼ぶのは身内だけ。
――王弟殿下――監察官(リリアルの処罰確定役)――が、来てしまった……。
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リリアルが、ずっと震えてる。
顔色も悪い。平手打ちを後悔しているだけには――見えない。
大丈夫かと声を掛けても聞こえていない。
やっぱり、とか、ごめんなさいお父様、とか破滅は免れないのね――、て?!
「ーー良い顔になったな、リュイ」
板についた嘲笑が言う。
リリアルの発言が気になり過ぎるけど、早く場所を変えないと――何で護衛、いないんだよ……。
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リリアルは、ベルクアードが連れていった。
叔父上が降りてきた後にベルクアードがいて驚いた。
いつもは憎らしい執事の顔も、今日は少し頼もしく見える。連れ帰ってあげて欲しい。
本来罪に問われるほどの事をしていないのだから、リリアルの免罪は明らか。
いかに叔父上が罪を問おうとしても、悪いのは結局のところ――私だから。
覚悟を決めて叔父上と向き合う。
ーーリリアルにはもう会えないだろうな……。