何もかも終わった後では前世の記憶が役立ちません
――時間が、無い……
残された日にちに猶予はないのに
距離の詰め方が、解らない――
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朝から厄介な人に捕まって、今朝はリリアルを迎えに行けなかった。
意を決して二年の校舎に入ると、リリアルは三年の校舎に向かったと親切な二年生男子が教えてくれる。
――何でリリアルに用だと解るんだろう?
長居してアルミナ嬢に出会すのは得策ではないので笑顔を返し、そそくさと校舎を出る。
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「――リリアル!」
三年の校舎横の休憩場にリリアルがいる。
いつもなら馬車から降りる人の群れが溢れかえる場所でも、今日からは静かだ。三年の授業は昨日で終わったから。
後は、終学式を迎えるまで登園の義務はない。
振り返るリリアルの表情を見る前に、その向いの人物に気づく。
――目を疑った。
――何で? 一緒にいるんだ?
考えるより体が反応して、昨日とは逆に私が掴み掛かっていた。
「リリアルに、何をした!?」
「――っっ」
胸ぐらを掴みギリギリと締める。返答如何によっては、いや、既に手後れか?
籠める力に加減が出来ない。
「殿下! アクロレイン様は謝罪して下さっただけです!」
――謝罪?
一瞬力が緩んでアクロレインに突き飛ばされる。
「――こ、の、馬鹿力王子!」
馬鹿は脳内だけにしろ、と言う罵倒に更に憤る。
再び飛び掛かろうとしたらリリアルが間に立ってーー
「ばっっち―――ん!」
また、火花が・・・・・・
――頬打たれ過ぎじゃない? 王子だよね・・・・・・