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何もかも願った先には謝罪の言葉も見つかりません

 "いつの日も変わらない

 空気のように側にある

 私の護衛は

 少し鈍くて

 会話が下手で"


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「生徒会役員()選挙?」


 顧問から言い渡されたのは、役員選挙の掲示物作り。

 その内容を確認していたら、総選挙の文字が。

 ……会長も選び直しなのか。


 サリドマイドが停学、いや。休学して一月近い。

 屋上でカイン像に敷かれた後遺症か。

 記憶の一部を失った彼は、未だ学園に出て来ない。

 彼の幼馴染みの配慮で、屋上の件は"彼の独擅場の事故"として――

 結果、()()()()と処理されていた。


「クロムナード、君も生徒会の手伝いから解放されたいだろう?」

 顧問が気遣ってくれるけど。私としては、サリドマイドに全て負わせて何もしないで居たくは無いから。

 生徒会の手伝いは罪滅ぼしの意味もあるんだけど。


 代々先任の指名制だった生徒会長も"この際選び直そう"そう言う事だった――


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「クロム殿下」

 出来上がった掲示物を貼りに、他の学年校舎へ向かう途中。

 アルミナ嬢に声を掛けられ、校舎裏。


「リリアル様を不安にさせないであげて下さい」と。

 噴水広場での一件の後、リリアルは震えていたのだと教えられて。


「あんな風に身を危険に晒して。見守る側がどんなに恐いか解りますか?」

 静かに憤るアルミナ嬢に、二の句も告げず押し黙る。

「婚約者として"王族の方の矜持に添いたいのに"と悩んでいます」


 ちゃんと、心も。護ってあげて下さい。気丈に見えても、リリアル様だって普通の女の子なんですから――

 そう言い残してアルミナ嬢が立ち去って行った。


 (リリアルが、恐がっている?)

 確かに命のやり取りは恐ろしいものだ。

 優しい彼女を悩ませてしまったのか……。

 きっと真面目だから……そう"すべき"だと考え込んでしまうのだろう。


「リリアルの身も心も護ることに、厭う気持ちは微塵も無いが」


 しかし"不安にさせるな"と言われても、どうすれば良いのか……?

 "私を信じて欲しい"などと言える間柄には成れてはいない。


「形ばかりの"嫌われ婚約者"には、些か難易度が高いのでは――?」


 掲示物を小脇に。額に手を当てて困り果てる私の隣に、

「……」

 無言のカイン。


 相談役には適さない相手だと解ってはいるけど、励ましの言葉の一言くらいあっても良いと思う……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「王子殿下――此方(こちら)へ」

 各学年の校舎等へ、カインと共に掲示にまわっていたら。サリドマイドの幼馴染みーー 

 "フェネトール・グレイン子爵子息"

 が手伝いを申し出てくれたので、護衛を解いてカインと二手に別れる。


 アークが居ない分捗らなくて困っていたから、とても助かる。

 掲示板多すぎだろう……。

(一学年の校舎内だけで二桁とか。本当に全てに掲示する必要があるのだろうか?)


 アークは噴水広場の犯人捜しに奔走中。絶対に見つからない相手を捜す、ふり。

 鉄扇を投げたのは他ならぬアーク本人だし、逃げた犯人役はフェネトール。

 鉄扇は銅像の再利用(勿論銘は潰してある)だしね。

 いつまで続けるのか、ほとぼりが覚めるまでとは……覚めるのか?



「フェネトール、君には世話になってばかりだ」

 掲示物を貼り終えて、手伝いの感謝を伝える。


「いえ、私など……何の役にも、立てませんから……」

 謙遜し過ぎな恐縮ぶりに"もっと堂々として良いのに"と心で呟く。


 グレイン氏は元は侯爵。"見合った成果を出せていない"と持っていた二つの爵位の内一つ(侯爵位)を返上し、今は子爵を名乗っている。

 (謙虚なのは、父親譲りか)


「サリドマイドとの一件でも、噴水広場での事でも、君の機転で助けられた。謙遜する必要はない」

 少し強めに言ってみる。

「……分不相応な、お言葉で……」

 より萎縮させてしまう結果になる。


(何とか自信をつけさせたいと思うのは、ただの自己満足だろうか……)


 ――完遂だ。と言ってカインが戻って来たので、とにかくお礼を伝えて"解散"となった。


「フェネトールの謙遜過多は筋金入りだ……」

「……」

 半歩下がって歩く、隣の反応は無い。

「サリドマイドが休学中なのに、会長まで選び直す総選挙とはどうなのだろう?」

「…………」

 やはり無い。


 何処までも我が道を行くカインに薄目を向けつつ、三年の校舎に戻る。

 中に入る間際。ふと休憩場から視線を感じて振り返ると、

 目が合ったのは。


「リリアル?」

 馬車に乗り込んだ直後、窓の中から此方を見ていて。

 視線が合った事に気付いた彼女の口許が"で、ん、か"

 ――そう動いた気がする。

(間違いなく、私を、見ていた)


 リリアルが、私を……目で、追って――?

(ただ何か用があっただけかもしれないけど。それでも……)

 走り去る馬車を見送りながら、気にしてくれた事への喜びを噛み締めているとーー


「そう高難度では無い」

 カインが急に話し出して驚く。


(何が? 何について話していたんだった?――いつの返事?!)



 本当に。いつも突拍子ない私の護衛は、こんな調子で振り回してくれる。

 まったく。身体より、寧ろ"情緒の方を"護って貰いたいものだとは高望み過ぎ・・・?

 かな・・・・・・(溜息)







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― 新着の感想 ―
[良い点]  王子さま大変ですね(*^^*)王子さまが焦ってる様子が手に取るように分かり面白いです。ただ、もう少しリリアルの気持ちが知りたいなと感じました。|д゜)チラッ  独特のタッチで描かれた世界…
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