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何もかも魔法頼みじゃ愛しい彼女は振り向きません

 "大切なのに

 護りたいのに

 壊してしまう――

 正しい恋の仕方を

 誰か、教えて……"


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 頬を押さえたまま、目を見開いているサリドマイドに、アルミナ嬢が畳み掛ける。

「リリアル様に手出しするなら、私は貴方を絶対に許しません!」

 女性に乱暴しちゃいけないって、ご両親から教わらなかったんですか! ――と。


「アルミナ、ボクは……」

 どうして? と。ようやく何が起こったのか理解したサリドマイドが、初めて動揺を見せる。


「アルミナ……二人でいれば、何もいらない……」

 他の誰がどうなろうと、気にしなくて良いよ? と言う言葉にアルミナ嬢が反論する。


「私はそうは思えません! リリアル様だって……クロム殿下だって――」

「クロム、殿下?」

 アルミナ嬢が言い終わる前に、サリドマイドが口を挟む。


「アルミナ。君を一番想っているのはボクだ。君に相応しいのはボクだけ。絶対に……アルミナの相手は王子なんかじゃない!」


 ――そんな浮気者の王子なんてアルミナの運命じゃない! ――


 (サリドマイドの叫びが……響く……)

 彼の気持ちは……解る。

 私がリリアルを奪われて。それなのにリリアルが蔑ろにされたりしたらーー

 相手を、再起不能にしてしまうかもしれない。


 だからこそ思う。

「サリドマイド」

 アルミナ嬢の前に出て言う。

「君が憎いのは、私だろう?」

 好きにするといい。


 膝をついて逃げるつもりが無いことを示すと、

 ぎりり、と歯の軋む音が響いて。

「ガッ」

 まず一発殴られる。


「いい度胸だね? 王子様。望みを叶えてあげるのは嫌だけど、やっぱり目障りだから」

 ――消えて。

 その言葉のすぐあとには呪文詠唱が。

 "腕だけは死守しないと後の事が出来なくなるな"と。考えてる場合じゃ無かった。


 ――バッッ!――


 リリアルが、急に飛び出してきた――?!

(どうしてこんな危険な事を)

 抱き抱えて横倒しにするも、どこまで庇えるのか?

 リリアルの全身を包んでぎゅっと目を閉じて――


「……」

「……?」

 何故か、衝撃が来ない。


「ぐっぅ……」

 サリドマイドの苦しげな声がする。

(ーーどさっ?)


 リリアルを抱き起こして振り返ると、

 倒れ込む、サリドマイド。

 掴んでいた腕を離すと、バチバチと手の内に籠る雷柱(プラズマ)

 その手の持ち主は――


「アーク」

 無事だったのか!

(とか言っている場合じゃない、"駄目"だ……)


 学園内で――特に喧嘩(揉め事)で、魔法を使うのは勿論禁止。

 留年中の身の上で、更なる不祥事はこの上なく……不味い。


 どうするんだ、と気持ちを込めてアークを睨めつけると、

 "助けてやったのにその態度は何だ?"と視線で返されてーー

「帯電放流だ」

 しれっとそんな事を言っている。


 無詠唱だったとは言え、誰がこれを帯電放流――静電気だと思うんだ?

 (頭が痛くなってきた……)

 ーーところが。


「クレスの摩擦帯電ですね?」

 まさかのアルミナ嬢が食いついてきた! 彼女は天然だったらしい。


 二人で帯電出来る量や可能性、溜めて置く為の方法など楽しげに話している。

 似合いの二人だ。

 私がいなければ、きっと上手く行っていたのに……。


 うっ、とサリドマイドが唸る。

 まだ意識があったようだ。

 "その、男は……傍に、置くべ……きじゃ、ない……"

 途切れ途切れ言う姿は痛々しい位で。


 (全て私が壊してしまったのか……)

 どうすれば良いのか解らない。

 でも、何かせずにはいられなくて……。


 地面に両手をついた。

 膝を揃えて座り、額を地に付けて――


 謝り続けるしか出来なかった・・・・・・・・・


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