何もかも魔法頼みじゃ愛しい彼女は振り向きません
"教室内の空気が目に見えるように悪くなって
衝突が近いことを覚る
側近達と頷き会って確認した
元凶が、来る――"
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「――」
三年生校舎の屋上でアルミナ嬢が溜め息をつく。
その背後に近づく影。
「アルミナ」
――サリドマイドだ。
"来たよ"とまるで待ち合わせでもしていたように笑いかける姿に、
「――、っ」
真っ青になるアルミナ嬢。
「ねえ、ボクの助けが必要でしょ? 助けてあげるよ。ボクだけは"味方"だから」
声も出ない様子のアルミナ嬢に、一方的な会話が続く。
「まずは、どうしようか? 誰を消してほしい?」
――いっそ学園ごととか? 愉しそうに、笑いながら話す。
「それとも……一緒に逃げてみる?」
二人なら何も心配いらないからね? と。
「わ、私はっ、逃げません! あなたの助けなんか、いらない!」
アルミナ嬢がそう言うと、サリドマイドの顔が歪む。
「アルミナ――」
アルミナ嬢の首に手が延びる、が。掠めて落ちる。
「男性として、恥ずかしくないのですか?」
アルミナ嬢を抱き寄せて。間に入るのは、リリアルだ。
(危険だから傍にいさせたくなかったのに)
急いでサリドマイドの周囲を取り囲むが、ものともせず突き進もうとする。まるで見えていないみたいに。
しかし、複数の男相手に動けなくなるとーー
「邪魔――――」
詠唱が続いて。
「!」
足元に、土? が纏わりつく。
頑強に固められたそれは、土と言うより岩のようで身動きが取れない。
(迂闊だった)
"サリドマイドは土属性"とは知っていたのに。
夢の中の記憶では魔法を使う描写が無かったから。
それに屋上では土が無いから。不可能だと決めつけていた……火も水も雷さえ、召喚だと言うのに――!
サリドマイドが、リリアルの肩を掴んで、アルミナ嬢から引き剥がす――
(リリアルに乱暴、だと?!)
馬鹿力には自信があるから。渾身の力を振り絞りーー拳で、割る。
リリアルの傍に走り寄るが、一足遅かったようで。
「パアァァァァン!」
乾いた、音。
(この音は)
構えた右手にふっと息を吹き掛けるアルミナ嬢。
崩れ落ちるのはサリドマイド。
その左の頬にはしっかりと掌の、跡が。
リリアル、君・・・・・・
アルミナ嬢に何を教えてるのーー?!





