何もかも魔法頼みじゃ愛しい彼女は振り向きません
休憩毎顔を見せるカインと入れ違いに、アークが教室を出る。
アルミナ嬢を気にする素振りもない。
同じ組だと言うのに、話しかけることも。目で追うこともしない。
一体、どうしてなのか?
目で追わずにいられるなど――可能なのか?
是非、方法を教授願いたい……。
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教室に戻ると、静かな違和感に確信を持った。
先程のアークの報告に。
「アルミナ嬢への悪評が出回っている」
「!」
やはり、動きが。
「リリアル嬢に取り入って、貴様を籠絡させた」
ーーだそうだ。
時系列とか矛盾が多くても。噂があれば、人は"もしかして"と想像してしまう。アークもそれを利用していたし。
「貴様のその顔。その跡も信憑性を促した」
な、何……だと?
「アルミナ嬢がリリアル嬢への貴様の未練を疑ってーー」
……痴情の縺れ、そう言うことだそうだ。
級友達のアルミナ嬢を見る目が冷たくなる。
私の左の頬を見て。
(これは、不味い……)
リリアルが気にする風もなくアルミナ嬢と会話している。
普段通りの二人に周囲も少し様子見に入ったようで。一先ず衝突は避けられた。
この噂。
どう考えても悪いのは私なのに"王子"である私には敵意を向けられない。
そこを、巧妙に突いてくる。
新生徒会長、いやーー
"サリドマイド・トルーエン"
一筋縄では行かない、厄介な相手だ……。
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リリアルがアルミナ嬢を家まで馬車で送るらしい。
仲が良くて羨ましい限りだ。
まさかの徒歩で帰っていたらしいから、この仲良しさも今は救いだろう。
噂は良い方には向いてくれないだろうけど……。
側近達と対策を練る。
アルミナ嬢を見捨てる訳にはいかないから。
私が謝るべき相手はリリアルだけじゃない。
彼女の気持ちを踏みにじった。鈍感による思慮不足故など言い訳にもならないし。
ほとんど私情なのに二人は動いてくれるそうだった。
カインはともかくアークもだ。
「借りは作らないが。貸しはいくら作っても良いしな」と言っていたけどアルミナ嬢がらみだからでは?
これを言うのはやっぱり"お前が(貴様が)言うな"となりそうなので、心の中だけで留めておくことにしよう。
それよりも次に相手が動く時。それまでに用意しておかないと。
いきなり本番では上手くいく自信は無いからね――





