何もかも魔法頼みじゃ愛しい彼女は振り向きません
ーー刑確定ーー
「留年」
学園からの通知が告げられる。
園内での"騒動"と最終祭欠席。それと、王弟殿下の前での喧嘩――アクロレインと私がリンフォカインを止めたことは"喧嘩"となったらしい。
リンフォカインが懐から出したものは馬用の鞭。
園内に刃物の持ち込みは勿論禁止で破れば即退学。
……柄が外れて短刀になるとか。そんなことはない。
騎士団の機密とか知る筈ないので。
それはさておき。
王子が留年とか、大丈夫なんだろうか……。
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「大丈夫では無いな」
本当にそう思ってる? と聞きたくなるような口振りで言うカインを横目に中央棟を出る。
――入園式の挨拶の後。
留年の弊害で、実質生徒会会長の返上がされていなかった為に。新入生達の前で挨拶をする、なんて……。
こんなことなら――いや。そうと知れていたとしても、治さなかった。
平手打ちの痕を。
これは"贖罪"だから。
リリアルを蔑ろにした自分への戒めに。
決して、他に忘れたくないことがある訳では無い。
……だ、断じて、ない。
ざわついた。
卒園した筈の王子が、しかも左の頬を腫らして。
真っ赤な掌の痕までくっきりつけて、壇上に登って来るんだから。
みんな、私の話の内容など少しも耳に入らない様子で。それには困ってしまったけど。
「クロム、貴様……」
三年の校舎に向かう途中で、不機嫌極まりない声が掛かる。
「何? アーク」
即座に振り向いて笑顔で応えると、
「このっ……性悪王子っ」
青筋を立てて憤る宰相子息。
(――左腕を治してあげたら借りは作りたくないって言うから、幼馴染み呼びを提案したんだけど)
物凄く嫌そうで――からかいたくなってしまう。
でも、自分もそう呼んでくるって事は満更でも無いんだな……と思ったけど言わないでおく。流石に殴られそうだから。
用向きか? と言うカインに「そうだ」と返してアークが言うにはーー
男爵令嬢アルミナ嬢と、同じ組分けになってしまった様だ……。
私とリリアル、アークが同じ組。
カインは離れてしまった。
(護衛も兼ねているカインは、休憩の度に傍に来るとは思うけど)
二年も通うことになるとは思っていなかった、三年の校舎に入ると一つ年下の同級生達とすれ違う。
――みんな驚いてる。当たり前、か。
アルミナ嬢よりも今はリリアルだ。話を聞いてくれるだろうか?
今朝、公爵家へ迎えに行くと"もう来ないで欲しい"と言う旨をベルクアードを介して告げられた。
謝罪の機会さえ、与えて貰えない。
――なんで?
教室へ足を踏み入れると、信じられない光景に目を疑った。
リリアルの傍に……男爵令嬢アルミナ嬢が……いる。
しかも、親しげに会話までして――
ど、どうして……?
(まさか。女の友情に私が、邪魔?)
やり直しの一年。
一日目から――不穏なんだけど・・・・・・





