表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/28

何もかも終わった後では前世の記憶が役立ちません

 "美しい容姿も振舞いも

 勿論彼女の魅力だけど

 こんなにも惹かれるのは

 何故だろう

 纏う空気が――愛しい"


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 入園式前日になって漸く面会が受け入れられ、公爵家へ向かう。

 ――オクタール公爵、リリアルの父上に。


 婚約は破棄されるだろうと思っていたけど、どうしても諦めたくなくて。公爵に謝罪と懇願に。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 物凄く怒られた。

 冷たくもう関係ないとか、又は仰々しく建て前を並べて断るのだろうと思っていたのが……更に申し訳なくなるくらい。

 顔を真っ赤にして"(わし)の目の黒い内はーー赦さん!"

 ……と言う公爵に疑問を感じたのは、言い回しにか、リリアルと同じ瞳の色(琥珀色)にか。


 とにかく、温かい人で良かった。()の中の"リリアル"はあんまり家族と上手くいっていない様に思えたから、安心してしまったーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ()の中で()が想い人にしていた"土下座"をしようとしたら青ざめて会話にならなくなってしまったので、また後日改めて来ることにした。


 ――土下座は危険行為なのか。


 ポロン、とピアノの音が聴こえる。

(ああ、彼女の音だ)

 心が落ち着く優しい音色に聞き入って、つい、部屋の前まで来てしまう。


(会わない方がいい)

 ーー婚約破棄した相手になど会いたくないと思うから。

 扉の前で葛藤すると、曲の途中で音が途切れた。


(?)

 思わず室内を窺うと、リリアルが右手を見詰めて困り顔だ。

(もしかして)

 自分の左の頬に触れる――もう殆ど赤みはないけど指の痕が微かに残っている筈だ。


(彼女の右手も?)

 傷めてしまっているのかもしれない。考えていると。

(視線が、絡む?)

 気付かれてしまった……。


「――殿下」

 リリアルが急いで立ち上がる。此方に向かって走ろうとして、危ない――


 ぽすん、と私の胸に彼女の頭。なんとか支えることが出来て、良かった。


 申し訳ありません、と謝るリリアルの頬が赤く色付いて――私にも移る。


「すまない」

 もう何度目になるか判らない謝罪の言葉を伝えて立ち上がる。手を取ろうとして、先程の光景を思い出す。


「少し、我慢していて貰えるだろうか?」

 そう言って彼女の右手をそっと包む。もう無詠唱で怪我くらいは治せる。これもリリアルのお陰だと思う。

 平手打ちで目を覚ましてくれた、彼女の。


 ふと、彼女の口から告げられる。

 婚約破棄の件ですが――、と。


 いよいよ、"三行半"だと覚悟する。


(わたくし)からは、致しません」


 ーーえ?ーー


 どうしてと聞くと、

「それは、破棄して欲しいと言うことですか?」

 そう言われて、首がとれそうなほど横に振った。


 良かった、と言うリリアルが一瞬笑ったように見えて。覗き込んでしまうと、彼女が立ち上がろうとするのが同時で。


 ――触れてしまった――


「べっち―――――ん!」


 三度目の平手打ちでも、やっぱり痛い・・・・・・


 リリアルへの想いの対処法など()の中にも在りはしない。

 "()の記憶"は、役立たないね・・・・・・・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ