何もかも終わった後では前世の記憶が役立ちません
――這い上がってこい――
愉しげにも聞こえる叔父上の声が、崖上から掛かる。
正式な沙汰が下りるまで、謹慎となった私達三人は今。なぜか崖に、ぶら下がっている……。
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王城の裏側、断崖絶壁。
下を見ると突き出た岩がトゲの様に伸び、辺り一面を埋め尽くしている。
――見るんじゃなかった。
叔父上による"子育ての一環"だ。
命綱一本で放り投げられて――壁に激突する寸前、風魔法で回避。
このやり方、魔法が上手い相手でないと骨の一本二本では済まない大怪我になる。
過去にはよく包帯まみれにさせられた。
(自分で治せと言われても、あの頃は苦手だったから……)
こればかりは、魔法役がベルクアードで良かった。
(でも……)
あまり連れ歩くと、まずいと思う。
顔がそんなに似ていなくても、性格がそっくりだし。
髪色も瞳の色も同じなんだから――
(暴露るよ?)
夢の中の記憶で。二人の関係を知る私は、気を揉んでしまう。
怖いので急いで綱を手繰り、登り切ると、一人到着していない事に気づく。
アクロレインが登って来ない?
仕方なく恐々と下を見ると、片腕で綱に掴まるアクロレインの姿。
ーー左腕、折れてないか……!?
ベルクアードを見やると「技量が足りず、申し訳御座いません」とか言ってる。絶対嘘だ。
リリアルの件か? 恨みをここで晴らしに来たか! 怖すぎるよーー執事!
(まぁ、自業自得だけど……)
命綱を再び巻き付けて、今度は自ら崖下に降りる。
アクロレインに手を貸そうとすると
――バシッ
右手で弾かれてしまった……。
「貴様の助けなど――不要!」
そう言うと黙々と片腕だけで登って行く。
上を見上げると、リンフォカインがアクロレインの綱を引き上げている――その手が有ったのか。
とにかく登り切ったら左腕治してあげよう。
――どんな風に嫌がるか、ちょっと楽しみなんだけど・・・・・・?





