何もかも終わった後では前世の記憶が役立ちません
中央棟の入口で跪くリンフォカイン。
いつからその体勢で待っていたのか不思議だ。
違和感があるのは、見馴れない儀礼のせいもあるだろう。
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案内された貴賓室に、刑執行前の囚人の様な面持ちで入室する。
私は――ここで、断罪される。
中を見渡すと学園長他沢山の教員が集結し、狭くない筈の部屋が窮屈に見える。壁一面に、取り囲むように。
その光景が夢の中の"リリアル"の受刑宣告を思わせるーー
(そんな事にはさせない)
避けられないなら私を罰すればいい。
破滅は――私が受ける。
王弟殿下が入室すると壁が一斉に頭を垂れる。
「――、」
他の学年の授業が心配になる、全員集合ぶりに。驚き呆れていると、後ろから溜め息が漏れる。
「今日の私は只の父兄代理。畏まるな」
王弟殿下が、一言で教員達を散らしていく――不機嫌だ。
用意された椅子に座ると、本題だ、と告げられる
「お前たち、申し開きはあるか――?」
リンフォカイン、アクロレイン、そして私に。
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――全て事実を告げる。
虐げ続けた私の愚かな行為を。
リリアルには何一つ落ち度など無いと。
「ーーリリアル嬢には良くない噂があるようだが?」
"お前に近付く令嬢に嫌がらせをする、とか?"叔父上が言うのを否定しようと口を開きかけーー先を、越された。
「それは私が操作しました」
アクロレインが暴露する。
(言わなくて良いのに……)
私はクロムナード殿下に、嫉妬心から……リリアル嬢を通し復讐したかった――ってそこまで言う必要無いんだって!
「ほほう」
叔父上の、目が据わっている……。
「申し訳ない!」
いきなりリンフォカインが叫び出す――?!
「王子殿下の側近にありながら、同志と主の行いも正せず。一番の不届きはこの自分!」
「面目次第もーー」
斯くなる上は、と脳筋が懐から何かを取り出した。
しゃきん、て……?
(まずい……)
「ガスッ!」「ドスッ!」
アクロレインの回し蹴りと、私の手刀が――炸裂。
――誰か、この場を納める力を・・・・・・下さい・・・・・・・・・