EP.しょうらいのゆめは
モンスターフラワーを倒した後の顛末を、少しだけ語るとしよう。
あの後、モンスターフラワーが枯れたため扉を開けれるようになり、外から従業員の人たちが入ってきて救急車を呼んでくれた。
モンスターフラワーは、飾っていた花に付着していたものだったことが判明してタキシード代や、ウエディングドレス代の弁償はまのがれて、むしろ謝礼金すら払われたほどだった。
その後、俺とリリィは病院へと運ばれることとなった。
そこで発覚したのが、リリィのあの能力の正体だ。
輸血パックを指して寝る俺に解説してくれたのは、前回、俺を見てくれた茶目っ気の聞いたあの医師である。
名前は確か、橋渡先生だったか。
橋渡先生は俺を見るなり、呆れたような苦笑いをしてきた。
「君も懲りないねぇ、なんで二ヶ月も連続で死にかけてるんだい? もう少し行動を考えた方がいいじゃないかい?」
「できれば俺もそうしたいんですけどね……まあ、俺のことはいいですよ。リリィのあの能力についてはどうなんですか?」
「結論から言うとね、検出されなかったんだよ」
「え、どういうことですか? でも確かにリリィの使ってたんですよ?」
「いや、君たちのことを嘘つき呼ばわりしてるわけじゃないさ。だから私の立てた憶測は、通過儀礼による一時的な力の解放だと思うんだよ」
そこでクレームの言葉を思い出した。
確かに通過儀礼を行なえば、力が解放されるとは言っていた。だが俺も調べたが、一度通過儀礼で解放された力は継続すると書いてあった。
「きっとリリィ君の力を解放するには、通過儀礼の内容が足りなかったんだろうね。だから一度空いた口も閉じてしまったんだよ」
それを聞いて、俺は安堵の溜息を付いた。
とうことは、俺はリリィと本番を迎えたわけではなかったのだ。
よかった、これでまた表を歩くことができそうだ。
「体も回復してきているし、念のため点滴を打ってもらってるから帰ってね」
そんな訳で、俺とリリィのその日の内に退院。
数日経った今では、お互いに元気となって、元の生活にへと戻っている。
のだが、ここに来て一つの問題が発生してしまったのだ。
「つるぎぃ、きーすきーす」
「しないしない」
あの一件以来、リリィがキスにハマってしまったらしく、 あれ以来、常に俺の隙を見てはキスをしようと迫ってきていた。
おかげで最近は睡眠不足に悩まされて大変困っている。はてさて、どうしたものか。
「きす、きもちいいよぉ? だからつるぎぃ、きすしよ?」
「駄目だっていってるだうが。あのときは成り行きだったかもしれないが、本当は好きな相手とするものなんだからな?」
「それならだいじょうぶ! だってりりぃは、つるぎたちのことがだいすきだから、いっしょういっしょにくらすの! それがりりぃのゆめだから!」
そう言って、満面の笑みで笑うリリィの表情は、今まで見てきたどんなリリィの顔よりも魅力的で可愛く、そして迷いがなかった。
リリィとの結婚式をして数日後、スマートフォンに着信が入った。
表示されていたのは「月夜」の名前であり、出てみて早々に、彼女はこんなことを言ってきた。
『先輩、私と一緒に一夏の冒険、しちゃいませんか?』
電話越しに笑う小悪魔が、そう俺に囁いた。




