隠れ里 零章━中━
あぁ、なんで私って生きてんだろう…
「お母さん…ごめんね。」
そう言って私はビルの屋上から飛び降り━…え?
「危なぁぁぁ…くない!」
人が飛んで来た?
長い髪が視界を遮る中、その人は現れた。
お迎えかな?ははは、早すぎるよ。
零零壱
「んっ…」
ここは?
「おや?目が覚めましたか?」
あっ、さっきの人。ここは、天国?
「天国じゃありませんし、あなたは生きてますよ。」
「え?なんで思ったこと分かったの?」
「私はなんでも知ってますから。お腹すいたでしょう?ご飯持ってきますから。と、その前にお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「えっと…凸守、凸守遥奈です。」
「遥奈さんですね、記憶しました。では私はご飯を。」
そう言うと男の人は襖を開けて廊下に出て行った。あっ、ここ和室か、道理でいい香りが。
「私…生きちゃったんだ…」
はぁ、とため息をついた。
数分後、男の人がお粥を持って戻って来た。
「熱いので気をつけて食べてください。」
さっきは寝起きでボヤけていたけど、凄い髪の色…緑なんてナンセンスだなぁ。
「あちっ…」
美味しい、温まる。ふと、涙が零れる。
「うっ…うあああ!!」
後悔、悲しみ、自分への怒り、色々な感情が溢れ出て止まらなかった。
零零参
泣き止んだ後、感情を残したまま男の人(名前は出雲翠って言うみたい。)に尋ねられた。
「遥奈さんはどうして自殺を?」
「あなたはなんでも知ってるんじゃないの?」
少し怒りに任せて言ってしまった。
「皮肉ですか?まぁ、なんでもは知ってますけど、詳しい事は直接聞かないと知りませんよ、なんにもは、知りません。」
言い過ぎたかな…少し反省した。
「友達に…裏切られて…虐められて…」
「それで自殺を、周りの人間には…」
少し言葉を詰まらせていた。
「…言ったけど、助けてくれなかった。と言うことですか。」
「うん。」
「それで、これからどうするんです?」
「どうって…帰る場所もないのに…」
あそこには、あの家には帰りたくない。
「選択肢は三つ、一つは元の場所に帰る。」
それだけは…
「二つは完全に新しい人間として、周りとの縁を’壊して’人間界に帰る。」
縁を壊す?切るんじゃなく?そもそも新しい人間としてって何?
「え?それってどういう事?」
「簡単な事ですよ、元の家族も友達もあなたの事は完全に忘れて、あなたは別の家族や友達と暮らしていく。」
「壊すって言うのは?」
「能力ですよ。あなたに見せるには早いですけどね。」
「能力?私を助けた時みたいなやつ?」
驚くより先に疑問が浮かんだ。
「大まかに言えばそうです。」
「へー。」
「驚かないんですか?」
「まぁ、飛び降りた後ですしお寿司。」
我ながらつまらないギャグである。
「それで、最後の選択肢って。」
「ここに残る。」
あー、やっぱりそうなっちゃうか…
いやいや、分かってたよ?最後の選択肢がここに残るってのは、だけどさ?多少なりとも躊躇するよ、赤の他人に助けられて、その上ってのもあるけど、現実に戻らなかったら、次のいじめの標的の子が可哀想じゃん?
「それなら心配には及びません。」
他人の心が丸見えのようだ、ハッキリ言って不気味。
「でも心配には及ばないって、どうするの?」
「いじめっ子の心を壊します。」
えっ…
零零参
後日談、というか今回のオチ
私、凸守遥奈は、人間界に戻った。
もちろんあの家には帰りたくないので、完全に元の家族とも友人とも縁を(一方的に)切り、見知らぬ土地に住まう事にした。
翠さんの言っていた、’心を壊す’って言うのはいわゆる改心させるってことらしい。
「殺してなきゃいいけど…」
そう独り言をして、カーテンを開く。
さぁ、新しい生活の始まりだ。
OKK
今回はパターン二 リターンです。
前回の迷い道はパターン一 ステイです。
基本的にエンドはこの二つですね。
さて!次回は待ちに待った(?)出雲翠が主人公の小説です!ご期待下さい!