side キサナ王女
もう。なんでわたしが追い出されないといけないのよ!
足音も荒くあてがわれている部屋に足早に向かうのは女狐、ではなくキサナ王女。
先程イルヴェルトの執務室に突撃し一緒にティータイムを楽しもうとウキウキしていたのだか、まさか注意をされた上で警告までされるとは計算外だった。
キサナ王女の頭の中では可愛いらしく顔を出したキサナ王女を満面の笑みで迎え、イルヴェルトの方から庭園を散歩しようと誘ってくれ、更に四阿で仲良くティータイムを楽しむ筈だったのだ。
なんてお花畑の脳みそなのか!と誰か突っ込んであげてほしい。
それがまさか勝手に開けるなと言われるなんて思いもしなかった。
自国では父である国王も兄である王太子も彼女に甘く突然訪ねても笑顔で迎え入れてくれる。自分は誰からも愛され可愛がられるために生まれてきたのだ!可愛いは正義なのだ!といつも思っている。なのに、こんな屈辱はない。ただでさえなかなか振り向いてもらえないのだ。
今回の訪問はそもそもイルヴェルトの婚約の噂を聞きつけたからだ。しかし訪ねて来てみれば婚約者の姿などなく、これまで訪問した時となんら変わりない様子。
しかし、イルヴェルトももう20歳だ。いつ結婚話が浮上するかわからない。これまでも父から婚約の話を持ちかけてもらったが全くといっていいほど良い返事をもらえないのだ。それでも何も言えないのは自国の方が立場が弱いから。
自分も16になったし本気で落とさないとイルヴェルトと結婚できないと焦って来ていた。
部屋に戻っても特にすることはなくイライラするばかりなので護衛をつけて街に出てみることにした。
まさかそこで衝撃を受けるとは思わずに。