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side イルヴェルト

新たなキャラ登場です。こんがらがらないよう気をつけなくては!間違っていたら連絡下さいね!

ーー時は少し遡り



イルヴェルトは現在苛立っていた。

折角婚約破棄をしたアリアナを自分の婚約者とし、無事婚約の儀も終わったところだった。

そしてこれからは王妃教育をこなすアリアナを見守りつつ、今まで取っていた距離を埋めるべくラブラブイチャイチャする予定だったのだ。


ところがアリアナはラブラブイチャイチャどころかどこか壁を作り、自分のことも幼い頃呼んでいた愛称ではなく殿下、とよそよそしく呼んでくるのだ。イル、と呼んで欲しいのに。昔のように敬語だって二人の時は必要ないのに。

そんなことを考えていると自然溜息も出るというもの。



そう。イルヴェルトは決してアリアナを疎んでるわけでも後悔しているわけでもない。二人の距離が縮まらないことにイルヴェルトは思い悩んでいたのだ。

要はすれ違っているだけなのだが、自分でも自覚せずに出てくる溜息にアリアナが傷ついているなんてことは全く気づいていない。


更に、距離を縮めようにも隣国よりキサナ王女がやって来た。

この王女、見た目はふわふわとした可愛らしいお姫様だが幼い頃に会ったイルヴェルトに一目惚れして父王に頼んで度々遊びにくる。遊びにくるだけなら放っておけばいいが、一応王女、そして彼女自身が相当厄介なのだ。

執務中もおかまいなしにお茶を飲みにやってくる。ベタベタと腕を組んで触ってくる。

更に、イルヴェルトにお茶を入れただけの侍女でさえ陰で自分の侍女に苛めさせたり、時には自分の用事に呼びつけた挙句、わざと足を引っ掛けたり失敗をするよう仕向けて辞めさせるのだ。

勿論周囲の人間も知っているので、王女が帰るまで休暇にし帰ったら仕事に戻すなどきちんと対応をしている。


しかし、ここでアリアナの存在がバレるとマズい。見た目と違い相当な腹黒なため、アリアナに何をするかわからないのだ。こんなことで彼女を傷つけるのは絶対に避けたいのだ。

そこで渋々王妃教育を休みにし、王城への立ち入りもしばらくしないよう伝えてもらった。



ここでイルヴェルトもアリアナの父も間違ったのは、アリアナが婚約破棄でどれだけ傷ついたかを見誤ったことだ。自信を失い、また婚約破棄されるのではないかという不安をどれだけ抱えているのかということを。更にここのところのイルヴェルトの溜息もまさか二人の距離に悩んでいるだなんて思いもせず、それさえマイナス要因として捉えているとは思っていなかったことも間違いの一つだ。

そしてその間違い故にどちらも理由をきちんと説明しなかったという、最大の過ちを犯してしまったのだ。



そんなこんなでアリアナに全く会えずアリアナ不足に陥っているイルヴェルトは苛立ちが隠せなくなってきていた。

将来王として立つ身として感情を表に出さないよう育てられて来ていた。その為冷静沈着、ポーカーフェイスが通常運行なのだ。

それがここに来て隠せなくなって来ていた。


「あの女狐、とっとと国に帰ればいいのに!」


悪態もつきたくなるというもの。


「殿下、心の声がダダ漏れです。せめて心の中で言ってください」


ツッコミを入れるのは従者であり乳兄弟でもあるギルだ。


「うるさい。

それよりまだあの女は帰らないのか?とっとと追い返せ」


「いやいや殿下、それは無理ですよ?まだ1週間ですからね?あの王女様、最低でも1ヶ月はいますよ。

それよりアリアナ様にフォロー入れなくていいんですかね?流石に王妃教育始まってすぐにお休みにし、更に鉢合わせしないよう来ないよう伝えてるんでしょ?アリアナ様じゃなくても不安になったりするんじゃないですか?」


この従者、乳兄弟でもあるせいかまったくもって遠慮がない。人前ではきちんとした態度で接するものの2人になると言いたい放題だ。

しかし、


「折角王城から離している今、アリアナに連絡を取るわけにはいかない。何のはずみであの女狐の耳に入るかわからんからな。

それより、今日は執務室に入れるなよ?仕事が捗らなくて流石にまずい」



そう、アリアナ不足もあるがあの王女のせいでまったく仕事にならないのだ。おかげで書類も溜まる一方。流石に夜は部屋にやって来ないので、その時間を利用して少しでも進めているがそのせいで寝不足だ。

これでイライラするなと言う方が無理だろう。



ーコンコン


そんな話をしている最中、明らかにあの女狐だ。


イルヴェルトは苛立つし、ギルは八つ当たりをされてうんざりだし、このまま居留守でもなんて2人で顔を見合わせた時


カチャッ


あり得ないことにドアが開いた。



仮にもここは王太子の執務室。国の重要機密も取り扱うことがある。普段は鍵をかけているが、中にいる時はそこまでしない。しかし、鍵がしてなくてもしてあっても普通は許可なく勝手に開けないものだ。



戸の隙間から顔を覗かせたのは件の女狐、ではなく王女。


「あ、イルヴェルト様ぁ、もう、いらっしゃったのならお返事してくださいませ」


頰を膨らませ拗ねてる様子は愛らしい。愛らしいが、中身はいかんせん腹黒。そんな仕草や表情に騙される2人ではない。



「これはこれはキサナ王女殿下、いかがなさいましたか?」


にこやかに対応するのは猫っかぶりのギル。

彼は王太子殿下の従者なだけありなかなかの曲者なのだ。


「あら、従者風情が話しかけないでちょうだい。


それよりイルヴェルト様ぁ」


ギルを見下したような目つきでチラッと見るとすぐにその表情は消し、いかにも可憐な乙女を気取る。これでバレてないと思うのだからおめでたい。


「キサナ王女」


「まぁ、キサナ、とお呼びください。わたくしとイルヴェルト様の仲ではありませんか」


そんなの絶対ごめんだと思いつつ、そのセリフはスルーする。

2人ともスルースキルだけはどんどん上達するのだ。



「ここは執務室です。許可なく勝手に入られては困ります」


流石にこれを許すのはまずいと厳しく注意する。が、


「まあまあ、先程も申しましたがわたくしとイルヴェルト様の仲ではありませんか」


ニコニコと近寄って来て腕に手を絡めようとする。それをうまくかわし更に表情を険しくして伝える。ここで甘い対応するつもりは全くないのだ。



「キサナ王女、この部屋は勝手に入らないでください。それを守れないようでしたら、私は今後あなたにこの部屋に来ることを全面的に禁止するしかありません。ここはあなたの国ではないのです。このようなことをするとあらぬ疑いをかけられても文句は言えないのですよ」


「そんな、そんなつもりは全くありませんわ。わたくしはただイルヴェルト様にお会いしたくて」


ウルウルと涙を溜めて上目遣いで見て来るが全く心を動かされない。これがアリアナなら、とあらぬ方向に思考が行きかけたところで


ゴホンッ


どうやらギルに思考を読まれたらしい。


気を取り直して


「私も別にあなたを疑っているわけではありません。しかし、ここはあなたの国ではないのです。最低限のルールは守らなくては困るのですよ」


一切上目遣いにも涙にも絆されないイルヴェルトは冷静に応えた。


「わ、わかりました。申し訳ございません」


ショボンとする姿は知らない人間が見ると庇護欲をくすぐられるだろうがこの2人は気にしない。


「では申し訳ないが、今日は急ぎの案件があるので」


「えっ」


まさか追い出されるとは思いもしなかったキサナ王女はショボンとするふりすら忘れて顔を上げた。しかしイルヴェルトは冷静に見返して来るだけ。

仕方なく今日は引き返すしかなかったのだった。





「本当にあれで王女なのか?いくらなんでも他国の執務室に許可なく入って来るなんてあり得ないだろ。さすが女狐だな」


キサナ王女が立ち去った後、ドアを見てバカにしたように呟く王太子。


「ですね。


少し警備を厳しくしますか?」


「ああ、そうしてくれ。扉の前に2人置いてくれ。今後はノックも取り次ぎも警備にさせる」


この国では国王の執務室は別だが余程のことがない限り王太子の執務室の前に警備を置かない。それはギルもイルヴェルトも剣術は体術も相当なものだからだ。

パーティなどで他国からの客人が多いと流石に警備を置くがそれ以外では特に置かないのだ。また、影と呼ぶ者たちがあちらこちらにいる。彼らのことは国王と国王の息子たち、そしてそれぞれの従者のみが知っているのだ。なので、基本は留守をしていても鍵をかけるだけで警備までは置かない。


しかし、このようなことがあっては置かないわけにいかない。さてさて、困ったことになったなと更に苛立ちが募るのだった。

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