増す不安
あの後、勉強を終わらせて家に帰って来た。
でもここのところの殿下の態度が気になり、家に帰ってもボーっとしていたようだ。
「お嬢様、どうかなされたのですか?」
侍女のユーリがミルクティを目の前に置きながら心配そうに声をかけて来た。
ユーリはわたくしが幼い時からずっと仕えてくれている信頼している侍女、というよりもう姉のような存在。普段は表情に出さないよう教えられているわたくしも、ユーリの前だとついつい素が出てしまうみたい。
「…いえ、何でもないわ。
ユーリ、ありがとう」
「いいえ。
何かありましたら、何でもおっしゃってくださいね。お嬢様はただでさえ、我慢なされる方ですから」
そんなに我慢しているとは思っていないんだれど、ユーリから見たら我慢しているように見えるみたいね。
「あ、言付けを預かっていたんでした!
明日の勉強はお休みされるそうです。たまには屋敷の方でゆっくりするよう連絡があったそうですよ。
相変わらず殿下はお嬢様にお優しいのですね」
ユーリはニコニコと伝えてくれたけど、わたくしはどんどん憂鬱になってしまう。
ーまだ始めて1週間しか経ってないというのにもうお休み?それともやっぱり………
まだ勉強は始まったばかり。一応アランとの結婚に向けて伯爵夫人として色々学んで来たけど、やっぱり王妃としての教育はそれ以上に厳しい。ユリアナ様に幼い頃色々話を聞いていたから今のところどうにかなってはいるものの油断は禁物。
それなのにお休みだなんて…
ますます不安はつのるばかり。でもそのことを相談する相手もおらず、アリアナは溜め込んでいっていた。
その夜、家族で食事をとっていた時だ。
「あぁ、アリアナ。明日はお休みだと連絡があったみたいだけど、暫くは王妃教育は休みにするとその後連絡があったんだ。王城にも行く必要はないから屋敷でお母様とのんびりするといい。
たまには買い物に行くのも良いかもしれないな」
ニコニコと伝えてくる父とは逆に、アリアナはショックを受けていた。
ーお休みは今日だけではなかったの?だって、まだ始めたばかりなのに。
「あの、お父様?まだ始まって1週間しかたっておりません。まだまだ教わることも多いですし本当に暫くお休みなのでしょうか?」
「どうやらアリアナは随分優秀らしいな。さすがアリアナだ。勿論通常ではあり得ないことなんだが今日キサナ王女が訪問され、王城も暫く忙しいらしいんだ。バタバタするところでは落ち着いて教育も受けれないだろうし、ユリアナも色々することがあって時間が取れないらしい」
そういう理由なら仕方ないのかもしれない。多少安堵したもののやはり不安はぬぐいきれなかった。
そんなアリアナには気付かず両親は楽しそうに会話をしている。
「まぁ、それでは久し振りにメリーのとこにでも行ってみようかしら?」
「ああ、たまにはゆっくりお喋りしながらお茶を楽しむといいよ」
メリーとは母の友人で同じ公爵家でもある。メリーの娘のココットはまだ幼く、アリアナはココットに絵本を読んでやったり、折り紙を作ってあげるのも好きなのだ。
いつもならメリーのところに行くのは楽しみなのだが、今はちっとも楽しめそうにない。
「お父様、暫くとはどのくらいなのでしょうか?」
不安な気持ちを隠し明るく尋ねてみた。
「んー、どのくらいか今はまだわからないらしい。始める時にはまた連絡が来ることになっている。
アリアナは学園でもずっと忙しくしていたし、屋敷でも勉強をしていただろう?やっと卒業したかと思ったらすぐに王妃教育も始まったしな。
この機会にしっかり休むといいよ」
「はい」
ニッコリ返事をするその心はどんよりと曇っていた。