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犯人逮捕!

「殿下、アランはアリアナ様を別邸に閉じ込め、自身は一度伯爵邸に戻ったようです。おそらく逃走用の資金や荷物を準備しているのではないかと」


それを聞いてイルヴェルトもアリアナの父である宰相も呆れた。

普通誘拐した人間を監視するものを置いておくとはいえ王都からさほど離れていない、しかも伯爵家の別邸に置いて堂々と屋敷に帰るか?と思ったものの短慮なアランのことだ。場所がバレていることも助けが来ることもないと信じきっているのだろう。






そして数人の護衛と宰相、ギルを連れて別邸に到着した。ギルはそっとアルヴェルトから離れ影からの報告を受ける。



「殿下、おそらくアリアナ様は二階の奥の部屋ではないかと。


どうします?入りますか?」


「いや、どうせもうしばらくしたらアランが戻ってくるだろう。アリアナを待たせたくはないが、ヘタに騒いでアランに逃げられたり言い逃れされても厄介だ。さすがにアリアナに手を出すことはないだろうからな。中に入ってしばらくしてから行くぞ。しかし、



お粗末すぎてどうしていいか逆にわからんな」


そうして念の為に影に合図を送ってアリアナの警護に着かせる。どれだけお粗末でも少しでもアリアナに危害が加わる可能性は消しておきたい。

実際のところ今アリアナを助けてもうまくアランを捕まえることはできるだろうが万が一があっては困る。それにしても穴だらけの計画にお粗末すぎる状況。これでうまくいくとどうして思えたのだろうか。









そして数刻後、堂々とアランが戻ってきた。その顔は以前の優しげな表情も穏やかな雰囲気もまるで見られない。これが本来の姿なのか、あの一連の騒ぎで捨て鉢になってしまったのか。



アランが扉に手をかけたところで


「アラン、少しいいかい?」


突然背後から低く落ち着いた声が聞こえた。それはここで聞くはずのない声だ。



「なっ!イルヴェルト殿下!?


ど、どうしてここに…」


「どうして?


そんなのは勿論、私の婚約者を迎えにきたに決まっているじゃないか」



ここに現れるとは思っていなかったイルヴェルトの姿にすっかり動揺するアラン。



「な、何をおっしゃっておられるのか全くわからないのですが?婚約者?アリアナのことですか?どうして彼女がここにいるだなんて思われたのですか?」


動揺したもののさすがにバレるわけがないととりあえず惚けることにした。しかし



「はあ…


なんでバレていないだなんて思えるんだ?

お前がキサナ王女と共謀してアリアナをここに連れてきたことはわかっている。



今すぐ案内しなけば容赦しないぞ」


途中まで呆れた物言いだったイルヴェルトだが突然まとう雰囲気を変えた。


イルヴェルトは怒っていた。

嘘を並べ立て騙したキサナ王女のことも誘拐したアランのことも、そして誰より全てを中途半端にしアリアナがキサナ王女の言葉を簡単に信じてしまうほど不安にさせてしまった自分自身のことを。



イルヴェルトはアリアナに会えない間色々考えていた。勿論仕事は忙しかったしキサナ王女のせいで仕事も溜まり寝不足だった。しかし会えない間それはもう暇さえあれば、いや暇がなくてもアリアナのことを、しばらくの間だが婚約者として共に過ごした日々のことを考えていたのだ。


そうして見えてきたのは他人行儀に殿下と呼ばれ悩んだ挙句ひたすらため息をついていた自分。アリアナの気持ちを全く慮ることもせず自分のことしか考えていなかった。その間アリアナがどんな気持ちでいたか、そして屋敷にいるように言ったものの理由も告げずどれだけ不安にさせていたのかを。

結局は婚約破棄を告げられたのも自業自得というものだ。

だからといってキサナ王女とアランのしたことを許すつもりは全くないが。




そしてあれだけアリアナに対して暴言を吐き誘拐までしたアランはイルヴェルトの殺気を感じ取りガタガタと身体が震え一歩も動けなくなっていた。実のところこんなに怒ったイルヴェルトを見たことがないのだ。

動けなくなったアランをギルが引きずるように連れて二階に上がった。そして鍵を奪って開けた先にはベットに腰掛け青白い顔で外を眺めるアリアナがいた。



「アリアナ」


扉が開いたのはわかっているだろうな全く反応しないアリアナにイルヴェルトはそっと近寄り声をかけた。



アリアナは開いたことには気付いていたがアランだと思っていたので顔を向けることさえしなかった。それなのに聞こえてきたのは数刻前に自分が婚約破棄の手紙を出した相手だったのだ。


驚いて大きく見開いた目のままゆっくりと振り向いた先には優しく、そしてどこか不安そうに微笑むイルヴェルトがいた。



「い、イルヴェルト、殿下?」


「アリアナ、迎えにきたよ」


声をかけても呆然と見つめることしかできないアリアナにへにょんと目尻を下げ



「アリアナ、君の気持ちをちゃんと理解してなくて、気付いてあげれなくてごめん。不安にさせてごめん」


「あ、な、なぜ?どうして殿下がここに?だってわたくし、わたくし、お手紙を…それに殿下にはキサナ王女が…」


「キサナ王女は関係ないよ。

アリアナ、2人で話そう。不安も心配なことも、不満だってあれば話そう。

俺たちきっと言葉が足りなかったよね?俺も君も。

ちゃんと話してまずは恋人になって、それから結婚しよう」


不安そうに揺れていた瞳には涙が溢れてきて徐々に溢れていくのだった。


イルヴェルトは近寄って涙を零すアリアナの身体にそっと腕を回した。



「アリアナ、俺は君のことを愛してる。キサナ王女なんて関係ないしなんとも思ってない。


婚約破棄なんてしたくないしするわけない。

アリアナ俺と結婚しよう」


ポロポロと涙は止まらない。


「本当に?本当に私で良いのですか?殿下ならもっと」


そこまでいった途端、イルヴェルトはガバッと肩に手を当てたまま身体を離した。


「それだよ!


アリアナ、実は1つ不満があるんだ。

なんで君は俺のことを殿下、と呼ぶんだ?昔みたいにイルって呼んで欲しい!」


「………へ?」


涙も止まるというものだ。


「会う度に殿下、と呼ばれ正直どうすればいいかわからなかったんだ。イル、って呼んで欲しいのに素直に言えなくてアリアナのことを不安にさせてた。ごめんな」



(あの溜息はわたくしが嫌になったのではなかったのね)


そう思ったら自然と笑顔になれた。


「ふふふっ、わたくしたちお互い言葉が足らなかったのね。


殿っ、イル!わたくしもイルが大好き、です」


途中まで元気だったのに最後恥ずかしくなって少し俯いて照れながら言うアリアナは破壊的に可愛いすぎるとイルヴェルトは心の中で悶絶していた。






そしてそんな2人に気を遣ってできる従者のギルはアランと、娘のそばに行きたい宰相閣下の首根っこを掴んで引きずる勢いで一階に降り、護衛連中にそそくさとアランを渡したのだった。



「良かったですね、殿下!」


やっと、やっとここまできました。最後1話で終わります

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