オイハギ
「ウチらはオイハギになんかあわないよね」
妹はそう言って、不安げに私を見た。
「だいじょうぶよ」
私はそう答えたが、自信はなかった。
それが伝わったのか、妹は俯いてしまう。
街道は時間のせいか、私たち以外に誰の姿も見えない。
怖くなって、引き返そうと思っても、私たちは前に進むしかない。
「身ぐるみ剥がされて、裸にされてしまうのよ」
妹が震える声で言った。
「だいじょうぶよ」
「中身を抜かれたって話も聞いたわ」
「だいじょうぶよ」
「真っ白な裸だけにされて、転がされてしまうんだわ」
その時、いきなり地面が動いた。
私たちは宙に浮いた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」
私はそう繰り返し言い、妹と寄り添っていることしかできない。
大きな衝撃の後、揺れが落ち着き、目を開ける。
すぐ近くの高台に、白い裸がいくつも転がっていることに気がついた。
見せしめらしい。
オイハギの仕業だ。
私たち姉妹はオイハギに捕まってしまったのだ。
アァ……、短ィ人生ダッタナァ……。
「あんた、ネタだけ食べるんじゃなくて、シャリも食べなさいよ」
「いやよ。糖質制限ダイエット中なんだから」
「それなら、回転寿司に行きたいなんて言うんじゃないわよ」
「食べたかったんだもん」
「そういう食べ方をオイハギって言うんだからね」
「へぇ〜」
「寿司が泣いてるわ」