洞窟からの旅立ち
八話目です
「今日で、此所ともお別れ」
朝飯を、食べていたクロが唐突に言う。あの後、朝帰りした俺は、絶賛罰を受けている。別に朝帰りしたからでは無い。クロの私物を勝手に使った事への罰である。
「あの~クロさん。此所ともお別れってどっか行くんですか?」
俺は、縛られたまま質問する。因に罰は、体を無理矢理曲げ、足の裏を頭に付けた状態で縛られる、車輪 (今のところ名付けた)である。
「街に行く」
「あれ、たまに行ってなかったけ?」
「違う街」
「此所ともお別れって事は、かなり遠いのか?」
「一ヶ月」
「へー、一ヶ月ね……一ヶ月!!」
最初、一ヶ月と言われた意味が解らずに答えた後。それが日数だと気付き慌てる。
「一ヶ月って…食料もつのか?」
昨日狩った四つ眼の猪は、鍋が無かったので焼いて食べた後。残った部分は、塩漬けにしてある。それと、いつの間にか、俺を囲んでいた猿みたいな生き物も、食べられる部位を塩漬けにしている。
(あの、腕に鋭い針が何本も生えた猿達。かなり強かったな。そして旨かった)
クロの目を盗んで食べた、猿擬きの肉は程よい噛み後耐えがあり。戸手も美味しかった。そんな、事を考えていたら、朝食を食べ終わったのか。クロが質問には、答えずそそくさと荷造りを始める。
荷物は、食料や薪、武器や手入れ用品等。沢山あるが、昨日殺した男達の中で、髭面の男と最初にナイフを刺してきた男が無限収納袋と言う、魔法が懸かった袋を持っていたので、金目の物と使えそうな物と一緒に貰ってきた。
この無限収納袋は、その名の通り無限に物は、入らないが。現実的に考えてあり得ない位に物が入る。後、バックと言ってるが様々な種類があり。今使っているのは、巾着袋みたいな奴だった。
(これでも、重さ50㎏迄入るんだよな)
因に、この無限収納袋にいくら容れても重さと大きさは変わらない。
(魔法って夢だよな。俺も使えるかな)
魔法は、適性が無いと使えないらしい。色んな事を考えつつクロの事を見ていると、荷造りが終わったらしく洞窟の出口に向かって歩き出す。
「クロさん、一人。一人忘れてますよ」
俺が、叫ぶと此方を見た後。
「忘れてた」
そう言いながら戻ってくる。
「いや、忘れてたって…」
縛ってある所を斬りやすい様に、位置を変えていると。
「非常食」
と言って寝ていたネズキチを持ち上げ、自分のポケットに入れるとまた、出口に向かって歩いていく。
「クロさん、冗談きついよ……あれ、冗談だよね?」
クロは、どんどん出口に近付いていく。俺は、力の限り叫ぶ。
「ホントすいません、二度と勝手にクロさんの私物を使いません。後、荷物運びでも何でもしますから。俺も連れってて下さい」
釣り上げられた、魚の様に飛びはねてアピールする。何度目かの大ジャンプを決めた時、縛っていた紐が突然切れた。
「うわ!?」
突然紐が切れた反動で、勢い良く頭と脚を地面にぶつけ。もがいていたら、クロが元々持っていた。バックを投げてきた。
慌ててキャッチすると。
「それ、重いからあげる」
クロは、そう言いながら洞窟を出ていった。俺は、急いでずっしりと重いバックを背負うと、慌ててクロの後を追った。
「キシャァァーー」
威嚇音をあげながら、岩影から飛び出してきた鼠を棍棒で叩き潰す。
鼠っと言っても、大型犬サイズであり。異様に鋭い爪と牙を持っているあげく、脂肪が厚いせいで剣で斬っても深く斬れず、致命傷にならない。
辺りに、散乱する鼠の死体を見ながら。鼠達と戦う前、襲ってきたゴブリンから奪った棍棒を見る。棍棒は、至る所が凹みボロボロになっていた。
「うわー。まだ要るわ」
何匹殺しても一向に数が減らない鼠達を見て俺は、溜め息を吐いた。
「クロさん、棍棒もう一つお願いします」
縦穴の上に入る。クロに向かって叫ぶ。程無くして落ちてきたのは、棍棒では無く。適度な太さの丸太だった。
「あれ…棍棒無くなったのかな」
疑問に思いつつも 丸太を拾い、襲ってきた鼠達を殴りながら何でこうなったのか考えていた。
今まで居た洞窟を出て20日が、経っていた。
最初は、食料が足りるか心配だったが。食べ無くちゃ生けないのは、クロだけだったし。途中で襲ってくる魔物を倒して行けば、食料には、困らなかった。それ所か。
「増えてくなこれ」
倒しては、高値で売れる部位を剥ぎ取りしていたら。いつの間にか、一つ目の無限収納袋が、満杯になっていた。
言わずもだが、クロに借りてるバックは完全重量オーバー状態である。
二つ目の無限収納袋には、クロの私物と武器等が入っており。余り物を容れすぎるといざと云うときに、欲しいものが取りづらくなるので、容れられない。
「この辺で、一回休もうぜ」
俺が、荷物を置いて座るとシブシブといった感じで、クロも荷物を置いて休む。
20日間一緒にいて解ったことは、此方から休憩を言わないと。クロは、限界近く迄休まない事だった。なので、適当なタイミングで休みを入れる様に、此方から言う。最初こそ置いてかれたが、今では、チャント休む様になってくれた。
(距離は、遠いいけど)
休む様に、なってくたが。何時も5m位距離が空いている。
(まあ、アンデット嫌いって言ってたし、仕方ないか。でも何で嫌いなら、俺を蘇らせたんだろ)
何回か聞いたが、結局答えてもらえなかった疑問を考えつつ、バックを取ろうと振り替えると。
「あれ?…何?」
そこには、クロのバックを持ったゴブリンがいた。
「グギャー」
ゴブリンは一声鳴くと、バックを持ったまま走り出す。
「ちょっ。まてやぁぁぁーー!」
俺は、クロに一言言ってから。急いでゴブリンを追いかけた。
ゴブリンは、思ったより足が早かったが、追い付ける早さだった。
「よっしゃー。捕まえ?いったー!」
追い付き手を伸ばした時、行きなり矢が飛んできて腕に刺さった。痛さの余り、腕を引っ込る。誰が矢を射ったのか。回りを見るとまるで仲間のゴブリンを守るかの如く、10匹前後のゴブリンが襲ってきた。
「てめら…上等じゃないか。全員殺ってやるよ」
邪魔をする、ゴブリン達を殺しつつバックを持ったゴブリンを追いかける。
「追い詰めたぞ、この野郎」
襲いくるゴブリンを倒し、ゴブリンから奪った棍棒を投げて当て、ようやくバックを持ったゴブリンに追い付いた。
「ギギャガ」
ゴブリンは、隙を見て逃げようとしているのか。辺りをキョロキョロ見ている。ただ、ゴブリンの後ろには飛ぶ越えられないほど深い縦穴があり。前には、俺が入る。
ゴブリンは、覚悟を決めた様にバックを置き、腰に括り付けていた棍棒を構える。俺も、投げた棍棒を拾い構える。
両者の間に、緊迫した空気が流れた時。ピキリと言う音と共に足元が崩れ、縦穴に落っこちた。
「うそー」
落ちていく浮遊感の中、下を見ると。沢山の赤い目が此方を見ていた。
「ハア、ハア、ハア。……疲れた」
棍棒が無くなり。丸太が投げ込まれる様に、なってから3時間以上戦い続けようやく鼠達は、何処かに逃げていった。
その後、クロのバックを探し。縦穴を登るのにさらに2時間かかった。アンデットなので肉体的には、疲れなが。精神的にはヘトヘトだった。
クロは、そんな俺を無視して歩き続ける。
(怒ってるよな)
クロのバックは、落ちた衝撃でボロボロになっていた。今は、二つ目の無限収納袋に入っている。
クロは、無言のまま歩いていく。俺は、只黙って付いていく。
何れくらいそのまま歩いたか、唐突にクロが停まると。
「見えたよ」
何が?と思いつつもクロが入る所まで歩いて行くと、まだ先の方にだけど、街と街を囲む様に、そびえ立つ城壁が見えた。
興奮して走り出した俺は、クロの射った矢を受け転けた。
「今から、行っても間に合わない」
太陽は、かなり傾き。もうすぐよるになろうとしていた。
夜は、城壁の門を閉めるらしく今から、行っても間に合わないらしい。
その夜は、城壁近くまで行き野宿だった。
「へっくしゅ、寒」
バックを壊した罰として、夜間寝ずの番を命令された俺は、寒さで鼻を啜りながら。毛布にくるまって寝ているクロを少し遠くから眺めていた。
「スゲー」
城門を潜った俺は、スゲーを連発していた。何が凄いって、まず街並みだ。綺麗に磨かれた石造りの家や、巨大な木造の家等があるが。見事に調和しており一種の芸術的価値がありそうだった。
さらに、そこに住む人達も重い甲冑を着ていたり。逆に軽い胸当てだけの人がいたり。長いマントをつけていたり、まるでコスプレ大会だった。
そんな、人達が笑顔で喋っていたり、お酒を飲んだり。普通に生活している。
そんな、俺を尻目にクロはまっすぐ何処かに向かっていく。キョロキョロしながらクロに付いていく。
クロが、停まった先の建物を見て。俺は、思わず叫んでいた。
「冒険者ギルドだ」
そこには、巨大な木造の建物と。冒険者ギルドと書かれた看板が掲げられていた。
「五月蝿い、目立たないで」
俺は、男裝していたクロに怒られた。
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