サイクロプス討伐
十六話目です。
二日続けての深夜投稿すいません。
「駄目だ全然上手くなんない!」
襲って来たゴブリンを返り討ちにした後も、かなりの量のゴブリンとサイクロプスを倒したが、手に入れた魔宝石はたったの二つだった。
問題は、龍喰らいの威力を上手く調整出来ない事と。それ以上に無斬りのせいであった。
龍喰らいの方は無駄に威力が有るのは、知っているので。とどめを無斬りで差そうとすると、意気なり切れ味が落ちる。
そのせいで、どうしても龍喰らいを使うことに成り。結果的に魔宝石事、獲物を喰い千切らせてしまう。
「お前らは、何で俺を選んだんだよ?」
思わず聴くが、龍喰らいは血に酔っているのか機嫌が良さそうだった。無斬りは、全く反応しない。
「はー、こんなんじゃクロを守れないよな」
今頃クロが何をしているのか考えていると、草木を薙ぎ倒しながら何かが飛んできた。
「ミャオさん!!?」
飛んできたのは、血だらけのミャオだった。
「くそ、回復薬何処だ!」
急いで、クロに貰ったマジックバックからありったけの回復薬をミャオに懸ける。
懸けている間もミャオは、何も反応しない。すぐに呼吸を確認するが。
ミャオは、息をしていなかった。俺は、慌てながらも覚えている限りの方法で人工蘇生を行う。
「先ずは、鼻を抑えて…気道確保が先だっけ?……迷ってる暇なんて無いだろ」
順番があってるか解らなかったが、鼻を抑えて気道を確保し。口付けをし、ゆっくり胸が膨らむのを見ながら息を吹き込む。
心臓マッサージをするか悩むが、辞めておいた。何れくらい息を吹き込んだか、何度目かでミャオがむせた。
「ミャオさん!解りますかミャオさん!」
「…シ…ロ?……にげ……るにゃ…」
ミャオが、途切れ途切れに呟く。
俺が何か言う前に、木々を薙ぎ倒しながら何かが来た。
「何だよこいつ…赤い一つ目……サイクロプスなのか?」
目の前には、血を垂らした棍棒を持った。鎧兜姿のサイクロプスが、此方を赤い一つ目で見ている。
(こいつには、勝てない)
一目見だけで勝てないと解り、すぐに逃げようとするが。ミャオの怪我は、まだ治っておらず。動かすのは危険だった。
逃げる為には、此所でミャオを見捨てるしかなかった。俺は、覚悟を決め手に力を入れ白狐の面を被る。
「やってやるよ…猫耳メイドを、てめえ何かに殺させるかよ」
まるで、言葉が解ったかの様に赤目のサイクロプスが吠えた。
「ガアァァァァァァァ!」
叫び声だけで、逃げ出したくなったのを。無理矢理叫びながら斬り掛かった。
サイクロプスは、棍棒で龍喰らいの斬撃を防ぐ。棍棒は、ほんの少し削れただけだった。
「なっ!…嘘だろ?」
龍喰らいならもっと削ると思った俺は、驚き一瞬動きが鈍くなった。
直後サイクロプスが棍棒を横殴りに振う、寸前で後ろに跳び交わした筈が胸が裂け血が流れる。辺りを見ると棍棒が当たって無い筈の樹が抉れていた。
「魔法の武器かよ。それとも呪いの武器か?…どっちにしろ最悪だろ」
何時の間にか棍棒の廻りを、風が纏わるように渦を巻いていた。サイクロプスは、風を纏った棍棒を担ぐと一瞬にして距離を縮めてきた。そして、棍棒のまわいになると勢い良く振り降ろす。
俺は、棍棒をギリギリで交わし。風に斬られながらも無斬りを振るう。無斬りはサイクロプスの胸の鎧を切り裂くが、肉を斬り裂くには至らなかった。
「…ちっ!」
すぐに龍喰らいを振るい、無斬りで斬った場所を狙う。龍喰らいは、鎧を砕き肉を抉った。
「よし、どうだ!」
抉った傷口を見ると、ゆっくりだが肉が盛り上がり傷が治る。そして、鎧まで直り始める。
「嘘だろ?鎧もかよ」
立ち尽くしてしまった俺を、横凪ぎの棍棒が襲う。
「ガァッ!」
偶然構えていた龍喰らいに当たり、直撃こそま逃れたが樹に叩き付けられる。
「グハッ!…ハァ…ハァ……ッツゥ!…折れたなこれ」
樹に叩き付けられた衝撃で、肋骨の何本かが折れていた。
サイクロプスは、近付くと棍棒を振り降ろす。俺は、無斬りと龍喰らいの二つで受け止める。衝撃で折れた肋骨が肺に刺さり、激しい痛みと共に大量の血を吐き出した。
さらに、棍棒の風が容赦なく体を切り刻む。俺は、横に転がり風から逃げる。
サイクロプスは、転がる俺目掛け何度も棍棒を振るう。その度に俺は、ぼろ雑巾の様に成りながらも必死に交わし続ける。
「い……いい加減に…しやがれ」
俺は無斬りと龍喰らいを、サイクロプス目掛け投げる。サイクロプスは、両方ともを交わす。
サイクロプスが交わし、俺に向いた直後、手に持っていた鎖を引く。
持っていた鎖は、無斬りと龍喰らいを繋いでいたものだった。鎖を引かれた勢いで、無斬りと龍喰らいが同時に。サイクロプスを後ろから襲う。
「これで…どうだ?」
背後から襲って来た二つの凶器に気付き、棍棒で防ごうとするが。
一瞬早く首を両方から襲った、物凄い血が首から噴き出す。暫くしてサイクロプスが、動かないのを確認して俺は叫んだ。
「よっっっしゃ、勝ったぞー!……ブハ!?…………忘れてた…肋骨折れて肺に刺さってるんだった」
俺は、折れた肋骨がこれ以上刺さらないように、慎重に立ち上がり。
ミャオの元に向かう。だが、後ろで何かが動く気配がした。白狐の面を被っていなかったら、気付かないであろう小さな。でも確かな気配だった。
俺は、後ろを向きながら龍喰らいを振るう。ガツンと重い手応えと共に、龍喰らいが弾け飛ぶ。
「く……生きてるのかよ!」
弾け飛んだ龍喰らいを鎖を使い回収する。サイクロプスは、怒っているのか。赤い目がさらに赤くなり、今まで無かった怒りの様な感情が目に宿っていた。
「ガアァルガァァァ」
サイクロプスが雄叫びをあげながら、側にあった大木を抜くと投げ付けてきた。俺は交わそうとしたが、交わせばミャオに当たるのが解り龍喰らいを振るい破壊する。
直後左の死角から襲って来た、棍棒が直撃し俺は、吹き飛ばされた。
「……ここ……おれ……あれ?……」
意識が朦朧として何をしていたのか、ここが何処なのか解らなくなる。どうすればいいのか解らなかったが、起きやがろうとすると。左手に力が入らなかった、不思議に思い見てみると左手がグシャグシャに折れていた。
「折れてる?……!」
折れてる左手を見て、全てを思い出す。そして、襲って来た棍棒を右手龍喰らいで受けすぐに転がり逃げる。
「グウゥ…!?」
転がった所をサイクロプスに蹴られる。何度も地面を転がり磐に当たってようやく止まる。
(……動けないか)
体の限界らしく、動かそうとしても指一つ動かせなかった。
(俺頑張ったよな、もう休んで良いよな)
意識が暗くなり始める。サイクロプスは、何故か此方に来ず。ミャオの方に向かっていた。
(あれ?ミャオさん…何してんだよ?)
ミャオが、まだ傷付いた体のまま魔法を使っていった。魔法はサイクロプスに当たるが、棍棒の一振りで掻き消されていた。
(逃げろよ?……何で逃げ無いんだよ)
ミャオは、少しずつ森の奥の方にサイクロプスを誘導していた。
ただ、サイクロプスに追い付かれ手で殴られ。俺の側まで飛んできた。
「………うちが…守るにゃ…シロと一緒に…戦えば…勝てる……にゃ」
意識が無くなる前に、俺を見ながらミャオが小さく呟く。俺は、それを聞いて笑う。止めようとするが何故か笑いは止まらなかった。
暫く笑った後、無理矢理体を起こし。飛ばされた龍喰らいと無斬りを拾う、無斬りの方は持てないので口でくわえる。
無斬りが不満なのか震える。俺は、心の中で話しかけた。
(無斬りに、龍喰らい。今までごめん、俺勘違いしてたは、俺が扱うんじゃ無いよな。
お前たちがやりたい事を、やらなきゃいけない事を感じ取り。それに俺の意思を加えて振るう……御互いに信用して始めてお前らと一緒に戦えるんだよな。
ごめん俺、今まで一人で戦ってたわ。でも、今だけでもいい。一緒に戦ってくれ、俺も守りたい人が居るんだ。それにこいつに勝ちたいんだよ)
ミャオに言われて、気付いた。初めて無斬りを振るった時。俺は、無斬りに助けられていた事を。
俺が心の中で話かけ終わると、無斬りの震えは収まっていた。
(ここからが、ほんとの俺達の戦いだ)
俺は、ただ真っ直ぐにサイクロプスに近付く。体は立ち上がった時点で限界を越えており、いつ壊れても可笑しくない。
(全力の攻撃でこいつを殺す!)
サイクロプスも何かを感じたのか、立ち止まると棍棒を大きく振り上げ両手で持ち、今までの比に成らない速さで振り降ろす。
交わせないと判断した俺は、龍喰らいを振るう。
(俺の魔力を命を喰らっていい、だからそれを喰い千切れ)
心の中で叫ぶ。直後、何かが体から抜け龍喰らいの方に流れる。流れたモノを喰らったのか一度大きく脈打つと、刃が赤黒く染まる。
そして棍棒を粉々にすると、そのままの勢いでサイクロプスの鎧ごと両腕を喰い千切った。
サイクロプスは、両腕を喰い千切られ体制を崩す。体制を崩したサイクロプス目掛け。俺は、口に加えた無斬りを振るった。
サイクロプスは、最初こそ何も反応が無かったが。風が吹いた時、体が擦れ次に首が擦れて落ちた。
俺は、また復活しないように龍喰らいを振るい、粉々の肉片にした。
ミャオの元に行こうとすると、限界を越た反動で倒れる。
(まずい……意識が……)
俺は、そのまま眠る様に意識を失った。
「シロが帰って来ない」
ネズキチの尻尾を掴みながら、クロが呟く。空は夕暮れ色に染まっていた。
「探しに行ってきて」
クロがそう言うとネズキチの尻尾を放す。ネズキチは「チュイチュイ」と鳴くと、走って行った。
「もし一人でクエスト受けてたら、罰を与えなきゃ…なにが良いかな」
クロは、そう言うとネズキチからの情報を待った。
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