シロの過去
十二話目です。
ごめんなさい、いつもより少し話が短いです。
宿から出ると、此所に居ない筈の人物がいた。
「……クロ?」
何故いるのか、何で居るのか。解らない事だらけだったが、深呼吸して心の同様を無理矢理押さえ付ける。
「ごめん、ごめん。今から行く所だったから、先に行っててよ。……あっ、悪い荷物間違って置いて来たから、取りに行くよ」
急いで、宿に戻り部屋に鍵を欠けようとするが。
「…させない」
一瞬早く、クロが部屋に入ってきた。そして、真っ直ぐにぬいぐるみに向かう。そして紙を取った後
「……話して。この部屋で言った事」
「…何でその事、知ってるの?」
「チュウ?」
部屋のベットの隙間からネズキチが出てくる。
「…全部見てたし、聞いてた。だから話して」
俺は、無言でネズキチを睨む。ネズキチは、睨んだとたんにクロの後ろへ隠れた。
俺は、大きく溜め息を吐いた後もう一度同じ事を喋った。
クロは、黙って聞いた後。
「私が、貴方と一緒にいるのは。シロを成仏させる為」
気が付けば、俺は叫んでいた。
「なら、何で!…何で成仏させる為なら。俺をアンデットにしたんだよ!」
「あの日、サイクロプスの群れに襲われた時に死霊使いとしての力を使ったけど。途中で魔力が暴走して、気が付いたら離れた所に居た貴方を蘇らせていた。……この子もおんなじ」
クロは、ネズキチの頭を撫でる。ネズキチは、気持ち良かったのか「チュイ」と一声鳴くと、目を閉じる。
「俺が、アンデットに成ったのは解った。でもだ、なら何でバラバラにしたりネズキチを探したりしてたんだ?」
「貴方達が、普通じゃ無いから。普通なら、蘇らせた死霊使いの言う事を聞く。でも、貴方達は聞かなかった。だから、封印仕様としてた」
「封印仕様としてたんなら、どうして封印から成仏にしたんだよ。何が違うんだよ?」
「貴方達が、アンデットにある筈の殺戮衝動が無いから。だから、封印して消滅させるより。未練を消して成仏させる方に変えた。…後、私を助けてくれたから」
俺は何も言えず。ただ、黙って立っている他なかった。
「シロの質問に答えたから、私から質問する。チャント答えて」
クロが、唐突に言い出す。俺が、断る前にクロに質問された。
「何で、シロは人を好きになる資格が無いの?」
俺が、どう誤魔化そうと考えていると。クロが、真っ直ぐに俺の眼を見詰める。俺は、眼を一度反らしたが、すぐにクロの眼をみて話す。
「あの時、山賊を殺した時さ。何処か懐かしさを感じたんだよ。…可笑しいだろ初めて、人を殺して懐かしさを感じるなんて。その後暫くしてから、少し思い出したんだよ。理由は、思い出せなかったけど、俺はこの手で何人も人を殺していた事を。そんな、人殺しが、人を好きになる資格なんて無いだろ?」
クロに同意を求める様に言う。ただクロは、凛とした態度で答えた。
「別に私は、そう思わない」
「そう思わないって、此方の世界なら当たり前かも知れないけど。俺が居た世界では…」
「もう、シロが居た世界じゃない。それに、私をあんなに一生懸命助けたシロが、理由無く人を殺すわけない」
シロが、少し大声で言った。俺はどうするか迷った後もう一つの事も言う。
「それに、シロが言ったよな[殺戮衝動が無いって、だから成仏させるって]残念だけど。それ、ゴメン有るわ。
山賊を殺した時は、解らなかったけど心の中で人を、いや、生き物を殺す事を楽しんでる自分がいた。それに、無性に何かを殺したい時もある。
今だって、少しでも天秤が違う方に傾けばクロを襲って殺すかも知れないぜ」
俺が、そう言うと。クロは、笑い始めた。
「なっ?…そこ笑う、所じゃ無いだろ。殺すって言ったんだよ」
俺が慌てて何か言うと、余計にクロが笑う。俺は、諦めてクロが笑い終わるのを待った。
それから暫くクロは、笑い続けた後。ブレスレットを取る。そして、真剣な顔で言う。
「シロがどんな理由で何人あっちの世界の人間を殺したのか、私は解らない。その事でシロが責任を感じるなら、殺した人の数此方の世界の人を、救えば良い。
それに、人を殺して楽しいと思うのは、アンデットなら仕方無い事。でも、シロは自分から生き物を理由無く殺す事は、旅の最中無かった。
ただ、最後の私を殺すかも知れないは笑えた。シロ嘘下手」
そこまで、言うと。またクロは笑い出す。
(嘘だってばれてるし)
クロを殺す気は、一度だって起きたことは無い。ついでに言うと殺戮衝動もあんまり感じない。戦闘中感じる事もあるが、殆ど戦闘が、終われば無くなっている。
俺は、大きく溜め息を吐いた後クロに謝る。
「ゴメン、俺嘘ついた。クロを殺す気は一度だって無い。それに、殺戮衝動も戦闘が終われば、無くなっている」
「うん、知ってた」
「知ってたって…敗けだ敗け。クロにはかないません…でも、あっちの世界で人を殺したのは、ほんとの事だ。だから、クロに言われた通り。此方の世界の人を…いや、クロを守り続けるよ」
「守れなかったら、封印して消滅させる」
「成仏じゃなかったけ?」
「シロを、成仏させるの難しそうだから辞めた。簡単な方で行く」
「いや、簡単な方って…まあ、守りきれば良いだけか」
(俺が、あっちの世界で何で人を殺したのか解らないけど。それに、罪が消える訳では無いけど。この体が動き続ける限りクロを、俺が好きになった人を守ろう)
俺は、クロを守り抜く事を誓いつつ、自分の事を考えていると。
「そう言えば、シロって私の事好き何だね」
「なっ!今それを言いますか、クロさん!」
クロは、笑顔に為ると。
「私の何処が好きなの?」
「ノーコメント、ノーコメントです。それより冒険者ギルドに行きましょ」
俺が、慌ててドアを開け逃げようとすると。
「ネズキチお前…助けてやったのに裏切ったな!」
ドアノブが外されていた。振り替えるとドアノブを持ったクロと。クロに撫でられて、気持ち良さそうにしているネズキチがいた。
観念した俺はどう答えようか悩む。改めて考えてみると、気付けば好きになっており、どう答えて良いか解らなかった。なので
「全部好きだ、だから俺と付き合って下さい。御願いします」
告白する事にした。クロは、考えてるのか暫く沈黙があった後
「アンデットは嫌い」
俺は、見事に降られました。
「りょ、了解です……冒険者ギルドに行きますか」
「うん」
クロがブレスレットを嵌めた後、ドアノブを戻し部屋を出る。冒険者ギルドにつく直前に、ぬいぐるみを忘れた事に俺が、気付くと。
「とって来て」
クロに言われて、取りに行く。ネズキチは、日課の散歩に言ってるらしく。俺が、持ってきた方が速いらしい。
(ネズキチが散歩って、あの体張れたらどうすんだろ?)
そんな事を考えていたら宿に着いた。
急いで部屋に行き鍵を開けて入ると、ベットにネズキチが寝ていた。
「あれ?ネズキチいるけど。クロが間違った?」
ネズキチを見ながら、ぬいぐるみが入った袋を取る。
「ん?何か落ちた」
袋をを持ち上げた際に一枚の紙が落ちた。俺は、それを拾って読む。紙には小さくクロの字で。
「アンデットは、嫌い…でも、シロは嫌いじゃない……頑張ってみて」
俺は、嬉しさの余りダッシュで冒険者ギルドに向かって走った。
「シロ、貴方は私の過去を知っても好きでいてくれる?【死の魔女】と言われた私を」
シロの声は小さく、すぐに他の音に飲まれた。
誤字、脱字、こうした方が良いよ等、色々なご意見、ご感想お待ちしております。