表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

Keep distance

きっちり一週間ぶりです

センセンシャル

「えーっと……これってどうしたらいいのかな……」

(さあ?)


 目の前で気絶してしまった女性――年は20程であろうか――を鉄の騎士……機動型魔導核兵『ナイト』の視界を通して見下ろしたネーナは、そんなことをひとりごちた。




 ――時はメムが馬車に気付いた頃まで遡る




「……ずずっ…………うん、よし! んんっ、じゃあその……『ナイト』? とかいうのについて説明してくれ……ん゛んっ……くれますか?」


 ようやく泣き止んだネーナは、先ほどメムの言った『ナイト』について普通に聞こうとし、さっきまでのメムのあの様子を思い出し慌てて言い直した。


(先ほどは申し訳ありませんでしたネーナ様……ですので敬語はお止め下さい……ええ、ええ、もうあんなことしませんから……ええ、安心してください、本当です……では、気を取り直して……)


 メムは何度も「もう怒ってない?」やら「本当に?」等何度も問いかけてくる少し幼児退行を起こしかけてしまっているネーナを宥めつつ、そこで一度んんっ、と咳払いを――機械が必要なのか?――すると、説明を始めた。


「えー、では、なるべく手短に……機動型魔導核兵『ナイト』はその開発にかかるオドの量は4ハルト、1体につき3ハルトかかります。『ウォール』からの変更点は、ある程度装甲を削り、槍を持たせ、『軍馬』に騎乗させたユニットになっております。突撃力、機動力には優れますが、『ナイト』の騎乗している『軍馬』……これも『ナイト』の一部でして、こちらの制御にかなりのリソースを割かれるため基本的な命令しか受け付けることが出来ません……で、現在のオド貯蓄量は『ナイト』開発分を差し引くと9.5ハルト……現在最大で3体の制作が可能です)

「……うん、さっきよりはだいぶ分かりやすくなりま……なったんじゃないか?」

(ありがとうございます……)


 ようやく少しずつさっきの調子を取り戻してきたネーナにメムは少しほっとし、そう答えた。


「で、単純な命令しか受け付けないって言うけども、どこまでならこいつでも分かる?」

(えっと、その、敵のおおよその位置をこちらで指定しての突撃命令、対象への追従、巡回と索敵くらいなら……)

「……それってさ、位置しか分かって無いのなら馬車ごと襲ったりしない?」

(……まあ、そうなりますね……)


 間。


「ダメじゃん」

(いえ、ネーナ様自身が魔導核兵へ搭乗すればある程度は……)


 少し早口にメムがそう言うと、「搭乗」の言葉が聞こえた途端にネーナのじとりとした目がカッと開き、早口にまくし立てる。


「『搭乗』!? 乗れるの!? これに!?」

(え、ええ……全ての魔導核兵はネーナ様なら登場が可能です……しかし……)

「じゃあやるぞ! 今やるぞ! すぐやるぞ! ほら! 早く!」

(……ええ、まあ、分かりました…………ネーナ様が思うようなのとは違うと思いますよ……)

「何か言った!?」

(…………いえ、何も……)


 この後、実際に乗り込んだネーナが操縦桿などでなく実際に手足を動かして操作するタイプなのにがっかりしたり、乗馬経験などないため『軍馬』から何度も落ちそうになったり、その様子を見て不安になったメムが離れた場所にナイトを製作し追従させるよう提案したりなど一悶着あったものの




 ***




 今、私の目の前であれでもないこれでもないと鎧の騎士――さっきのとは違いずんぐりしている――を背後に従え、服を見繕っている少女は何者なのだろうか。


 まず、この極寒の連邦領近くの森の中で突如巨大な騎士が現れて盗賊を蹴散らし、その騎士の中から明らかに身の丈の合わない裸の少女が出てくる、という時点で異常も異常だとは思う。


 その上この少女は後ろに控える騎士達を指すと、これらは自分が操っている物だという。これが本当だとするならば帝国の鷲級に匹敵するほどの、それどころか凌駕するほどの実力を備えているらしい。

 帝国お抱えの12人の鷲級魔術師の一人『彫刻』、クリスタ・ボイスにまで不可能と言わしめたゴーレムに対しての動的な命令の付与を何でもないかのように、しかもややこしい術式や馬鹿みたいに高いスクロールを使わずに行っているというのだ。これでも一度は魔術師を夢見た身、ゴーレムを操るためにも躁土術の類もそれなりに練習をした、したが、丸一年かけて掌サイズの小さなデッサン人形がやっとだったのに。しかもそれも意識を少しでも逸らせば元の土くれに戻るような不安定なものだったのに。


 しかし、それら全てを差し置いても一際異常だと言えるのはその容姿だ。

 本人まで人形なのではないか、と疑う程に動かない表情、新雪を思わせるような白い肌、研ぎ澄まされた剣を思わせるような銀色の髪、赤く、大きく美しい瞳……なんというのだろうか、この少女が持つ美しさ、というのは少女特有の未完成の美しさなどではなく、まるで神がかくあるべし、と定め作られたかのような完成された美しさなのだ。

 実際私も女でありながら少し危うい所だった……危ういってなんだ。私はノーマルだ。


 私はどうしてもこの不思議な少女と話してみたくなり、ようやく服を選び終わったらしい――頭から足まで真っ白なローブだ――この少女に少し声をかけてみることにした。


「ねぇ、ちょっといいかな?」

「……何?」


 後悔。


 首だけを回し、彼女のその瞳が初めてしっかりと私を捉えた途端に得体のしれない怖気が全身を襲う。指先は震え、視線は泳ぎ、唇はわななき、それはまるで視線だけで全身の骨という骨が全て氷柱に差し替わり、血の一滴まで凍りついたかのようだった。

 その威圧感に思わず意識を遠のかせそうになりつつ、こちらも一応は一端の商人、根性で何とか次の言葉を紡ぐ。


「あ、いや、その、違くて、いや、違わないんだけどさ、あの」

「……?」

「その……そ、ういえばあ、あなたのお……お名前聞いてなかったなー? って……」

「……ああ、そういえば言ってませんでしたっけ……」


 平坦な声でそう言うと、そこで彼女はこちらに向き直る。その瞳には先ほどまでの威圧感は無く、ただただ仄暗く、無機質な光を湛えていた。


「お……私の名前はネーナ、そう……ただのネーナ」


 少女はそう名乗ると、じっと人形のような目でこちらを見つめてくる。その視線にだんだん冷気が帯びてくる頃、こちらも名乗るよう促しているのだと気付き、慌てて


「わっ私はアリサ! アリサ・アレヒナ! ……と申しますっ!」

「……敬語じゃなくていい…………その……少し、頼みたい事がある」


 と思わず敬語混じりになりながら答えた。

 少女……ネーナはそれを直すように言い、そんなことを言うとこちらに歩み寄り少し視線を逸らす。


「えっと……頼み事って?」

「…………私を……その……ま……」

「ま?」

「ま……街まで……その…………」

「な、何?」


 そこまで言うと、彼女は突然俯いて黙り込んでしまう。

 しばらくするとなぜかプルプルと小刻みに震え出す。不穏な空気を感じた私は、どうにか話の続きを引き出そうと俯いたままの彼女にむかって声をかけてみることにしてみる。


「……もしもーし?」

「……」

「……その……街がなんとかって……」

「…………あぁぁぁさっきからうるさいんだよこの野郎がああぁぁぁ!」

「ひぃっ!?」

「さっきからグチグチグチグチうるさいんだよぉメム! リスクが云々とか今はいいだろ!? 俺は! 今! アリサと話してるんだ! 分かるだろ!? なぁ! ああ!?」


 さっきまでの様子から一変、突然ネーナが大声で見えない何者かに向かって怒鳴り始める。そのメム、という人物? に向かって、やれお前はなんでそんなに頭が固いのかやら頭に■■でも詰まってるのかやら聞くに堪えない罵詈雑言を少女の声で大音量で撒き散らかす。その間も明らかに怒っている声を発する彼女の表情がピクリともしないのが不気味で仕方が無かった。


「なぁ!? 聞いてるのか!? 聞いてるんだろメム!? ……おぉ!?」


 しばらくそんな滝のような罵倒を繰り広げていると、鎧の騎士がひょいとネーナを担ぎ上げる。当人の慌てようから見るに彼女が指示したことでは無いようだ。


「おい! またか!? またお前かメム!? クソっ! 降ろせ! せっかくのチャンスがああああぁぁぁぁぁ……」


 ネーナを担いだ鎧の騎士はそんなネーナの悲痛な叫びなど聞こえていないかのようにその歩みを止めることなく、ただ呆然と私がそれを見つめる中ズンズンとネーナの罵声をBGMに森の奥へと消えていった。

 雪がしんしんと降り始めた森の道のど真ん中に一人と二頭でぽつねんと残され、しばらく呆けていると


「…………なんだったんだろ、今の……」


 と、ぽつりと呟く。

 たぶん、私はこの少女とはそう遠くない未来にまた会うことになるのだろう。何故かは分からないが確信を持ってそう感じた。そして同時に、自分のすぐ後ろまで厄介事の足音が、それも確実に人生を大きく変える程に巨大な厄介事の足音がずしんずしんと地響きを立てながら迫ってくるのも感じた。

多分また一週間くらいあけると思うんですけど(屑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ