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I am Nena. He is Wall. ……Sorry, We are not pen.

累計ユニーク300人突破しました!ありがとうございます!

こんな見切り発車の作品をこんなに読んでもらえるとは思っていなかったので驚きました。これもう失踪できるか分かんねえな……(白目)


 ――――『Nena』と『Memento』のリンクを確立中……完了。


 ――――『Eliza』と『Memento』の同期中……完了。ElizaのデータをMementoの辞書機能に反映します。


 ――――Nenaの内包魔力偽装装置を起動中……完了。『世界意志』は「Nena」を生物として認識しました。


 ――――大源魔力吸収変換装置を起動中……原因不明のエラー。表層部分を用いたマナの自動吸収に問題が発生、摂食行為によって不足分を補うよう再設定……完了。


 ――――Nenaの拡張機能『Army of Magic』の整合性を確認中……完了。これに伴いMementoのArmy of Magic管理画面の操作方法をNenaへインプットします。


 ――――Memento、Nenaの全ての機能のチェック作業を完了しました。再起動します……







(おはようございます、『ネーナ』様)


 そんな、頭の中に直接響く声で『俺』の意識は浮かび上がった。


「んん……? ああ、メムか、おはよう……ん? 声変わりした?」


 そんな俺のどこかずれた質問に対してもメムは、

(いいえ、ネーナ様。恐らくはスピーカーからではなく直接意識へデータを送信しているため聞こえ方が少々異なるだけかと)

 と、『さっき』と変わりない無機質な声で淡々と答えた。


「意識に直接……? ああ、これが『さっき』言ってた制限されていた機能ってやつか……あれ、『さっき』って……?」


 そんな、どこか喉の奥に引っかかった小骨のような小さな違和感を覚え、首を捻っていると、メムが


(一先ず、無事最終定着プロトコルが無事に完了したか確認をさせて頂きます……「あなたの、『今』の名前は何でしょうか?」)


 と、『今』をやたらと強調しつつ、妙な質問をした。

 そんな妙な質問に対して俺は、


「……? 一体何を言ってるんだ?」

(……失礼しました、それでは再度確認プロトコルを……)


「メム、こんな眉目秀麗才色兼備完全無欠最強素敵無敵少女の名前を忘れたって? 大丈夫か? 頭でも打ったか?……頭無かったな、お前……まあいいや、いいか? よく聞け、俺は今も昔も生まれてからずーっと『ネーナ』だ! ……ていうか俺とリンクしているお前が知らない訳が無いだろ?」





 間。





(……少々、余計な部分がありましたが、無事、最終定着プロトコルが完了したことを確認しました……お帰りなさいませ、ネーナ様)


 その答えを聞き満足したネーナは、一息つくと、少し冷静になった頭で先ほどの自分の口上を思い返し……少し……というかかなり恥ずかしい事を勢いで口走ったのでは? と気が付いた。

 ぐおおお、と内心で転げ回りつつどうにかこの動揺をごまかすため、それと起きてからずっと感じていた妙な違和感について聞くために口を開いた。


「んんっ、うん、まぁ……ただいま…………で、いいのか? ……挨拶ついでに一つ質問なんだが、俺が起きる前に何かあったのか? なーんか少し記憶に違和感があるんだが……」

(回答します……先ほど一度ネーナ様は起動なされたのですが、機能の一部に破損データが発見されたため一度再起動を行いこれを修復しました。おそらくはその時に会話した記憶が残っているものかと。そのようなことよりも、何か不明な点はございますか?)

「うん? ……あぁ、そっか! そうだな、そうだった……」


 その言葉を受けて、少々何かが引っかかる感覚を覚えたものの、ずっと感じてきた妙な違和感は無くなったので、取りあえずこの森の中で一人ぼっちの状況を打破するため、メムに質問することにした


「じゃあ、そうだな……俺はまずは何をしたらいいと思う?」


(私と致しましては、一先ず身を守るため、ネーナ様の拡張機能である「Army of Magic」――以降AoMと呼称します――の現在唯一生産可能な魔導核兵、『ウォール』の制作を提案します。)


「すまん、まずその魔導核兵? ってなんだ?」


(魔導核兵というのは、私メムと、ネーナ様のAoM、それと私に貯蔵された内包魔力を消費する事によって制作が可能となる自律兵器でございます。

 また、今回提案致しました『ウォール』はAoMで制作できる魔導核兵の中でも最も消費魔力が低く、量にして標準的な犬一頭分の内包魔力と等しいです。装甲も『壁』の名の表すように非常に頑丈で、その厚さは20ミリを誇り、装備する盾は高さ2メートル、幅1.5メートル、厚さは150ミリに至ります。脆弱になりがちな間接部分は小型魔導障壁を用いてカバーしていますので、装甲部分と変わらない強度となめらかな動作を両立できます……しかし、重装甲の分機動力は非常に落ち、移動速度は最速でも標準成人男性の駆け足程度の速度しか出ません、武装も盾とその拳のみであるため、他の兵科と比べると火力に少々難があります。しかし、この付近に生息する生物ならば十分戦力たりえる、と私は考えます)


 つらつらとまるで濁流のような説明に辟易としつつも、その新しい身体でも足りない頭で必死に考え、どうにかその説明を理解しようとし、次のような結論に至った。


「……あー、つまり、だ。要約するとそのウォールってやつの特徴は安い、遅い、堅い……ってことでいいのか?」


 とどこかで耳にしたような身も蓋もない表現にメムはまたはぁ、とため息をつくと、


(……大まかにはその通りでございます)


 と不服そうな声でそう言った。


「OK、分かった……じゃあ、始めるか! メム! コマンドモード!」

(かしこまりました。コマンド入力モードを起動します。オーダーを)


 メムがそう言うやいなや、ネーナの視界にはメムの端末の画面が一面に広がった。


「うわっ! びっくりした……ええと、これを入力したらいいんだよな……よしっ、座標指定……は適当でいいや、それと制作指定コードは"Wall"! 数は1! 変換元?……よく分からんけど……空気でいいか、後は……ええい面倒臭い! 後の全てをメムに委任する!」


 ずらりと並んだ設定項目に最初は気合十分で臨んだネーナであったが、一つ、二つと埋めるごとにその目からは輝きが失われ、最終的にはメムに残ったすべての設定を投げた。


(……かしこまりました……残りの項目の設定完了……出現まで3、2、…………出ます)


 呆れた声のメムの合図と共に、ネーナの正面の空中で紫電が走った。

 その突如現れた電流は意志を持つかのように一か所に集まり、光の珠になったかと思うと、バチバチと音を鳴らしながら人の形を模っていった。手、足、頭と完全に人の形が出来上がると、その光は急に失われ、ズン……という腹の底に響くような地響きと共に、高さおよそ2.5メートルの人の形……魔導核兵『ウォール』が地面に降り立った。かかった時間は、およそ10秒ほどであろうか。

 ウォールはしばらくこちらを見つめると、ガン、だかガシャ、といった金属同士のぶつかり合う音を立てながらゆっくりとその巨体の膝を折った。

 こちらに向かって跪き首を垂れる、それはまるで王に仕える騎士のような、そんな構えを取った。


(お見事でございますネーナ様……ネーナ様?)


 こんな現実離れした光景が繰り広げられているのにも関わらず、全く反応の無いネーナをメムが訝しんでいると、ネーナは一歩、二歩と歩き出し、かと思うと急に走り始め……



 ――――時は現在に至る。

ここでようやく三話冒頭に至ります。

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