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Are you Japanse? ――Yes, I am a pen.

書き溜めしてから投稿した方が良かったなって思いました(小並感)

誤字または訂正、改善点などありましたら是非教えてください……

 

 ――それはまるでおとぎ話の中から抜き出したような、あるいは歴史に名を残す芸術家たちの作品のように異様で、美しく、ちくはぐな光景であった。


 一面に広がる雪景色の中、少女から少し離れた場所に跪く、彼女の背よりはるかに巨大な盾を持つ黒鉄の騎士と、それを呆然とした表情で見つめるこれまた鉄のような髪の色をした美しい少女……もしもこの光景を誰かが見ていて、そのまま絵に描けたならば、その名を歴史に刻み込めたのではないだろうか。


 彼女はしばらくこの黒鉄の騎士をぼんやりと眺めていた。そして、少しの間逡巡すると、何か大きな覚悟を決めた顔をしてごくり、とつばを飲み込んだ。


 一歩、二歩、そっと、そーっと、と、それはまるで人の手からエサを貰おうとする野良猫のようで、傍から見ると滑稽にさえ見える様子でその騎士にゆっくりと近付いた。


 一歩。


「……っ!」


 二歩、三歩。


「……っ!……っ!」


 四歩、五歩、六、七、八九十……


「すっ……」


 間。


「……ごおおおおおい! なんだこれ、なんだこれ!? 凄い! かっこいい! すごい!」


 ある程度近付いても何も反応が無いことを確認すると、慎重になるのも忘れ、恐る恐る、といった様子はどこへやら、少女――ネーナ・アルテミエヴァは歓喜の色を顔一面に広げ、一気に騎士の下まで駆け寄り、正面、側面、背後とあらゆる方向から騎士――正確には騎士が身に着けている鎧――をきゃーきゃー悲鳴を上げつつ物色し始めた。


「この重厚ながらも壮麗さを欠かないフォルム! フルプレートのどこか不気味で、かつ上品な雰囲気! くぅーっ! ……あぁっ! もうっ! すてきっ! 大好き!」


 そこで言葉を切り、一度騎士から離れると、『前』の自分では信じられないほどの速さで助走をつけ、ネーナは騎士の胸甲部分に思いっきり飛びついた。


「はふぅ……たまらんですたい……」


 騎士は微動だにしなかったものの、まるで鉄の塊同士を思い切りぶつけ合ったような、おおよそ人が立ててはいけない音を立てていたり、この寒空の下で鉄と素肌をくっ付けたら大惨事になるであろう、といったことを明後日の方へ忘却すると、ネーナは至福の表情を浮かべ、鎧に向かって頬が擦り切れるのではないか、という勢いで頬ずりをし始めた。


 台無しである。




 ……事の始まりはネーナが端末相手に四苦八苦していた頃まで遡る。




 少女は、自分のつるっつるの脳みそと、死ぬほどつまらない授業をしたハゲの新木への恨みを募らせつつ、どうにか端末の画面上に表示される謎の言語――ただの英語である――の解読に努めた。


 しかし、生まれ持った飽きっぽい正確と短気さが災いし、我慢の限界に達するまでにそう時間はかからなかった。


「ぐんぬぬぬぬぬ…………あぁ! もう! 分からん! やめだやめ! やめやめ!」

「……こういうのって普通言語設定とかそういうのがあるもんだろ普通……クソっ!」


 そんな独り言をぐちぐちと言うと、最後の「クソっ!」で雪のベッドに思い切り倒れ込み、あっちへゴロゴロこっちへゴロゴロと今までの鬱憤を晴らすかのように転がり続けた。


 ――その最中にで電源ボタンの隣にあったボタンを押したのには気が付かず。


 英語がなんだ、万国共通語がなんだ、グローバル化社会なんか知ったことかと転がりながら不毛な考えにふけっていると、少し気分が悪くなってくる頃に「それ」は突然聞こえてきた。


『Now using English language version. You would like to change your countries language version?』

「うひゃいっ!?」


 突如腕の端末から聞こえてきた機械的な女性の声に驚いて素っ頓狂な声を上げながら飛び起きると、再度端末から先ほどの声が聞こえてきた。


『Sorry, I didn't get your order. Please say it once more.』

(なんだ、こいつかぁ……じゃなくて! なあんで音声案内まで英語なのかなあ!? くっそ! 全く状況は変わってないじゃないか! どうすればこの状況を打破できる……? 考えろ! 考えるんだ俺! 唸れ灰色の脳細胞!)


 音声案内まで英語である、という当たり前のことに憤りつつも、さっき聞こえた音声がこちらに向かって何かを問いかけている、ということはさすがの彼女もなんとなく理解できた。しかし、リスニングができるほどの英語力など持ち合わせていない彼女は、その自慢の灰色?の脳細胞を酷使しつつたっぷり30秒ほど逡巡すると、ゆっくりと口を開き、自分の経験で勝率4割を誇る秘技を繰り出した。


「お、おぉういえぇす……」


 秘技、『イエスマン』戦法である。コンビニのバイトで外国人を相手にするときや授業中に当てられたとき等にも応用の利く、大変汎用性の高い戦法である。


『Certainly! Please wait.』


 と、腕の端末が返すと、画面上の文字が次々にあの憎たらしいアルファベットからもはや愛おしいとまで言える日本語へ次々に切り替わって行くのが見て取れた。

 取りあえずは何もできずに死ぬことは無さそうだ、と彼女が安堵していると


『言語設定を完了しました。引き続いて当機の説明、加えて操作方法の解説を行いますがよろしいでしょうか?』


 さっきの音声と同じ声――今は日本語だが――が問いかけて来た。

 気が抜けたところに突然声をかけられたので少し驚きつつも、


「あ……うん、まあ、そう、だな、うん、……よろしく頼むよ」

『かしこまりました。これより当機、KM社製多用途型内包魔力回収運用装置「Memento」、通称「メム」及び、同じくKM社製人型人格複製実験装置兼大源魔力運用機試作6号「Nena」の説明に入らさせて頂きます。』




…………はい?

正直英語から日本語に変えるのにほぼ丸々一話使うのはどうかと思う。

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