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I've been a bad boy?

半年と少し経ったあたりです。

練習がてら一人称をやってみました。難しいですね。

「あのー、オヤジさん……今日の巡回のルートって森の手前までじゃなかったすか……?」

「ああ? ……"石ころ"地区担当の第三の連中が一昨日流行り病でダウンした上に、アルニア村の奴らから「森の様子がおかしい」だの「そこかしこから妙な音がする」だのずっと報告が続いているから、今日で俺ら第五が第三の分まで回る……って朝の集会で言ったのも覚えてないのか? ……あと、オヤジさんじゃなくて隊長って呼べっつったろ……」

「ぐへぇ……オヤ……デニス隊長殿、今日くらいこっそり早めに切り上げてもばれないんじゃないですかね……?」

「ああ、そうするといいさ……そしたら食堂の姉ちゃんにテメエの晩飯だけ外でカチコチになるまで置いとくよう頼んでやるよ」

「げ、それだけは勘弁してくださいよオヤジ殿ぉ!」

「だから隊長って呼べって言ってんだろ!」


 どっ、と笑う五人のクソ坊主たちの声を聴きながらもその足は一秒たりとも止める事無く歩き続ける。

 正直、こんなバカ話でもしていないと頭がおかしくなりそうな仕事だった。


 俺らがこの第二北部占領地警邏隊に配属されたのは……大体、今から一年と二、三月くらい前だったか。

 あのクソッタレの連邦の奴らが急速に帝国との国境周りに戦力を増してるとかなんとか言って、これまたクソッタレの軍部がそこかしこから優秀なやつらを引っこ抜いて占領地の警邏隊をスッカラカンにしちまった。

 で、そのスッカラカンの警邏隊の穴埋めに軍の奴ら冒険者組合に掛け合ってそこそこの給料で雇われた速成部隊……の内の一つが俺たち第二北部占領地警邏隊第五部隊……って訳だ。


 正直今ではかなり後悔している。冒険者をそれなりに長らくやってると、そこそこの金が安定して手に入る、っていうのに弱くなって仕方がなくなるっていうのは良くある話だ。だが、この仕事は確実に割に合わねえ。

 第一に、延々と決められたルートを見回るっつうアホみたいに退屈な上しんどいパトロール任務。第二に飯がクソまずい――これは食堂の姉ちゃんが美人だからまだいい――。最後に、何よりも許せないのが俺らが南部生まれと知っていて北部配属にしたクソ軍部だ。

 なんだってあのクソッタレどもはわざわざ南部で募集をかけといてこんな出したそばからションベンが凍るようなクソ寒い北部に送りやがったんだ? あいつらのせいで何度も南部生まれの隊の連中がダウンするし、その度にスケジュールを組み直して、日に何度も予定にない巡回に出て、それでも給料は変わらなくて…………


「………………オヤジさん、なあんか妙な雰囲気じゃないっすか?」


 と、まあ愚痴はこれぐらいにしておこう。……確かに、この辺りには妙な感覚を覚えた。

 いつも俺らが巡回するのはアダルエンナの森の外周部分で、"魔女の石ころ"とか呼ばれる岩から離れた場所だったんだが、そこでは夜になればそこらじゅうから虫やら鳥やら狼やらの鳴き声が耳にこびり付くほどに聞こえてきたもんだ。

 だが、この辺りはどうにもおかしい。動物の鳴き声は聞こえないこともないのだが、葉の擦れる音にかき消されるほどあまりに小さく、離れすぎている。これではまるで、動物たちが意図的にこの辺りを避けているような…………

 ……第三部隊の連中が毎日毎日「あの場所は何かがおかしい」「魔女の祟りだ、あそこには近寄るべきじゃなかった」だとかなんとか言っていたのはサボるため、だと思っていたんだが……こりゃあ、あながち丸っきり嘘、って訳でもなさそうだな……


 すると、どこからか今まで聞こえてきた音とは確実に異なる、ざりと地面を踏みしめる音とぱきりと枝が折れる音、それに加えて、あまり聞きなれないガシャガシャという金属音……確実に"俺達"以外の誰かが居る音が聞こえた。


「……おい、お前ら……聞いたか?」

「…………ああ、隊長……聞こえた……」

「……こっちもだ、聞き間違えじゃあない……」

「チッ……おいマルセル、数と位置は分かるか?」

「……ああ、数は恐らく一人。方向は……"石ころ"の方だ。……それと、余り信じたくはないが……足音の他に鉄の擦れる音がした……剣とも違う、あの音は多分……プレートアーマー?」


 ……プレートアーマー? ……しかも一人、このクソ寒い森の中で? ……何処から来た? どうやって? 何の為に? ……クソが、全く意味が分からねえぞ……ああ、面倒なことになりやがった……


「……クソッ、おい、お前ら! 俺たちは今からこの鎧のキチガイ野郎をとっ捕まえに行く! 帰りたい奴らは帰って結構! ついてくるって奴らは俺が上に掛け合って無理にでも休暇をねじ込んでおいてやる! どうだ!」


 しんと一瞬静寂が訪れる。かと思うと、次の瞬間


「もちろん行きます! 行かせてください!」

「オヤジさんも年なんだから素直に助けがいるって言えばいいのによ……もちろん俺も行きますよ! しかしまあ本当にこんな所に鎧着けたアホなんているのかねえ?」

「じゃあ賭けでもするか?」

「何を?」

「オヤジ殿の秘蔵の酒だよ、えらく上等なの隠してやがるんだぜ?」

「いいじゃねえか! 賛成だ! オヤジ! よろしく頼みますぜ!」


 と、好き勝手に盛り上がり、口々に軽口を叩き合う。

 ああクソが、まったくいい部下に恵まれたもんだな……


「OK、分かった……酒もまあ、何で知ってるのかは聞かんがお前らの為に開けてやろう…………だがなあ、何度でも言わせてもらおう……」


 ―おっ、来るぞ……いつものアレだ

 ―全員で合わせるか? 行くぞ? せーの……


「「「俺をオヤジと呼ぶのは止めろ!」」」


 ぴったりとハモり、一瞬顔を見合わせると、がはははは、と静かな森に男たちの下品な笑い声が轟いた。




 ***




 その後、俺たちはその正体不明の鎧を追い森の奥深くへと歩みを進めた。

 その道の最中には、カテゴリBに分類される魔獣、オル・ヴォルファの縄張りとされているエリアもあったが、そこも同じように虫一匹たりとも居る気配が感じられない。

 先までかすかに聞こえていた生物の声も聞こえなくなり、かすかに聞こえるのみだった金属音がそれに挿し替わるように、今や四方八方からガシャガシャと隠すことなく聞こえてきていた。


 さっきまで軽口を叩き合っていたこいつらもすっかり憔悴しきり、心なしか顔色が悪く見える。

 最初の内は、この音何なのか探るために追いかけたりもしたが、"そいつら"は俺たちあざ笑うかのように一定の距離を保ちながら離れていき、その姿を見ることは叶わなかった。

 しかし、"魔女の石ころ"へ近づけば近づくほどにその音が大きく、まるで威嚇でもするかのように聞こえてくることから、少なくとも"魔女の石ころ"に何かがある、と踏んだ俺たちはその歩みを止めることなく歩き続けた。


「隊長……俺ら、どこかで道を間違えましたかね……?」

「…………ああ? お前何言って……」


 一時間ほど歩き通し、部下たちの精神的疲労がピークに達しようかと言う頃、ようやく"魔女の石ころ"のある辺りまでたどり着いた。

 しかし、そこには俺らの見知った小さくも禍々しい雰囲気を放つ小さな岩は無く、あたかも元からそうであったかのように森が開け、見たことの無い明らかに人の手が加えられた崩れかけの人工物があちこちに散らばっていた。


 ……元々、森のど真ん中に突然に置かれていたその奇妙な岩は様々な曰くつきの物体だった。

 曰く、大昔に世界を支配していた邪悪な魔女が封じられていて、触れるとその封印が解かれるとか、

 曰く、魔女の隠した金銀財宝の在処がこの石の裏に示されているとか、

 曰く、その石に触れた人物は古の魔女の強大な力を手に入れられるとか。

 とまあ、つまるところ、もしこの石に触れられたら魔女絡みの何かとんでもないことが起こる……っていう良くあるありきたりな与太話だ。

 ……しかし、これはどういう事だ? まさか、この話のどれかは本当で、実際に何かしらの封印が解けた結果こんな物が現れたのだとしたら……しかし、そんなことがありえるのか?

 などと、しょうもない事を考えているとトントンと部下の一人に肩を叩かれる。


「マテューか……どうした?」

「……隊長、アレを……」


 そう言われてマテューの指さす先を見る。そこには、布に見紛うほどボロボロの真っ白な服を身に纏い、俯いている少女が崩れた柱のような物に腰かけている。パッと見ると、まるで暴漢に襲われたかのような風貌だったが、その表情は俯いているせいで窺い知ることはできない。


「子供……? こんな時間に、こんな場所にか? ……おおい、嬢ちゃん。こんな所で一体何を……」

「あの、ちょっと待って下さい…………オヤジさん、音が止んでいます……」


 一先ず声をかけてみようとすると、隊の中でも人一倍に耳のいいマルセルがそんなことを言う。

 そう言われて周囲に気を配ると、さっきからずっと森を埋め尽くしていた金属音は今やその一切が聞こえなくなり、偶然か否か風も止んで、無音が耳に痛かった。


「……全員、周囲を警戒。いつでも抜けるようにしておけ……"アレ"も人間かどうか分からん、俺が先に行って様子を窺ってくる……何かあれば、各自の判断で動くように。いいな?」

「了解です、オヤジさん……いい年なんだから無茶はしないで下さいよ?」

「……うるせぇ」


 そんな軽口を叩き合ったはいいものの、部下たちにバレないようそっと自分の手を見やると、そこには明らかに寒さ以外の物からくる震えがあった。

 魔獣の中には、長い年月を経てその形態を変えて魔族……カテゴリAへとその姿を変える物も存在するという。カテゴリAと言えば、国の中でもトップクラスの兵士が100人単位でかかっても歯牙にもかけないようなクラスの化け物だ。俺も今までに一度だけ、冒険者総出でやり合う機会があったが……まるで虫でも追い払うかのような手の動きだけで地は抉れ、人は木の葉のように飛び……手も足も出せずにやられたのは今でも鮮明に思い出せる。


 こんなに緊張するのはその時以来……いや、もしかするとそれ以上かもしれないな。などと考えつつ、そろり、そろりと刺激を与えないように近付く。

 後一歩で剣の間合いに入るか否かという距離まで近付いても、この少女擬きはピクリとも反応しない。

 もしや寝ているのでは? と更に距離を詰めようとすると、それは起こった。


 目にも止まらない速さで柱の陰から一人の鎧の男が飛び出し、音を置き去りにするような速さで手に持った剣を振るう。しかし、痛みは一向に来ない。

 ひとまず、急に現れたそいつに対抗するためにこちらも剣を抜こうと柄に手を伸ばす。しかし、その手が空を切ったことに驚き、手元を見やると自らの剣の柄"のみ"が無くなっており、再度鎧を見るとその手にはその無くなったはずの柄が握られていて、挑発でもするかのようにそれを弄んでいた。


「……ッ!? クソがッ! おい! 一旦引き揚げて態勢を……」


 こいつは一人じゃどうしようも無い、とにかく撤退するべきだ、と後ろに控えているはずの味方を見ると、こちらの対峙する鎧と寸分違わず同じ見た目をした鎧たちに一人残らず組み伏せられているのが見えた。


 そんな光景に唖然としていると背中に強い衝撃が走り、顔が雪に叩きつけられる。

 自分も鎧に組み伏せられたのだ、という事を理解する。と、


「……あれ? いつもの奴らと違う?」


 この場には相応しくない場違いな能天気な少女の声が頭の上から降ってくる。多分、さっきまで柱に座っていたヤツだろう。


「うーん……いや、だってこの辺に来る人間なんて大概…………あー、はいはい、俺が悪うござんしたぁ」

「で、どうするよ? とりあえず安全の為に縛ってから話聞いてみる? …………ああ、縄か……あんまり"アレ"は見られたくないし……とりあえずこいつら気絶させてから適当に作るかぁ」

「おーい、こいつら気絶させてから縛って纏めといてー。……ああ、加減は……まぁ、死なない程度であれば何でもいいよー。」



 ……おい、ちょっと待て、なんだか物騒なワードが聞こえてきたような気がするんだが!?

 そんな事を口に出すよりも早く、ガゴン、ガゴンという音が遠くで聞こえたかと思うと世界がひっくり返ったかのような衝撃を感じ、俺の意識は束の間の休暇へ出かけることになった。

デニスおじさん可哀相

次はネーナ側の視点です(予定)

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