かなわぬ恋路
「君のことが好きだ。
どんな君でもいつまででも愛すことを誓うよ」
そう言って来る男は今まで何人もいた。
もっとも、その言葉を最後まで貫き通した男はいなかったが。
これは私の恋の物語。
私が愛した男の物語・・・
私はユーリ。
見た目は16歳くらいだと自負している。
自負している、というのは周りの私を見る目がわからないからである。
見た目はこんなだが、私はかれこれもう何百年と生きている。
母と父はもうとっくにいない。
それどころか生きている親戚がいるかどうかすら怪しい。
そう、私は不老不死。
老いることがなければ死ぬこともない。
だがなぜ私は老いないのか、なぜ死なないのか・・・
私にはわからない。
長い間生きてるせいなのか、はたまた何か理由があって思い出せないのか
とにかく私には私が不老不死の理由がわからない。
長く生きてきて、よかったと思うことはあまりなかった。
むしろ嫌な事のほうが多かった気がする。
見世物にされたりサーカスのような場所に売り飛ばされたりもした。
最近の記憶だと魔女だといわれ火であぶられたりもした。
その時は全身の火傷が何日も痛んだ。
もちろん何度も死のうと思った。
だが死ねない。
刃物を刺し、全身の血をほとんど失っても死なない。
機械に巻き込まれて全身がぐちゃぐちゃになっても死なない。
死ねたと思って意識を手放すが、次に起きた時には身体に少しダメージがあるだけで命に別状はない。
だが覚醒してからは地獄のような苦しみが待っている。
意識がないうちはなぜか回復が早く、すぐに治って行っているらしいが意識が戻ると回復は人並みに、苦痛も人並みになってしまうらしい。
ショック死するほどの痛みでも死なない。
痛みで気絶し、痛みで覚醒する。
酷い時はその繰り返しが何日も続いたことがあった。
死なないということはこういうことなのだなとわかってくれる人はいないだろう。
死なない怪物である私。
もちろん愛されたためしなど無い。
例外をいくつか除いて、だが。
今私と親密な関係にあるルカ。
彼も例外の一人である。
彼には私の本当の事を話していない。
だが彼ならば本当の私を知っても拒絶しないでくれるだろうという半ば願いのような確信がある。
いままで私の事を拒絶しないでいてくれた人達とどこか同じような雰囲気を感じるからだ。
私と一緒に時を過ごした人は私の事を最期まで見ていてくれる。
私よりも先に老い、私よりも先に死ぬ身体で、私の事を気遣い、私の事を見守ってくれる。
とうに涙など枯れたと思っていても、その人の最期には私の目からも涙が出る。
乏しくなってしまった私の感情の中から無理矢理引っ張り出されたかのように涙と悲しみに溺れる。