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それぞれの心の内は・・・?

side:デューク


 ミィル姉の体にしっかりと腕を巻きつけて手を組んだ状態で、できるだけ体から力を抜いて、子守唄を聞く。

 この習慣は、もう幼い頃からだ。そう…ずっと傍にいたい、守りたい。そう思った時から。

 幼い頃は、眠れないと言って、子守唄をせがんだ。傍にいて欲しくて。

 体が大きくなるにつれ、何かの折にこうやって体を抱きしめては、眠いと言って、できるだけこの状態を保つ事にした。

 この思いは…まだ、告げられない。弟だと、思われているうちは。


 ミィル姉と俺は、血は繋がっていない。俺も、ミィル姉も、赤ん坊の頃に教会に預けられた、いわゆる捨て子だ。施設育ち、って言うのかな。

 だから、施設の子達とは兄弟、姉妹のように育った。中には少し大きくなってから預けられるような子もいるから、まぁ馴染めなかったりと、性格はいろいろだけど。

 最初のうちは、ただ年の近いお姉さんとして慕っていた。だけど…二人で施設のお使いに出た時に、魔物が街に侵入した事があった。警報の鐘が鳴らされて、守りたいと思った時に、この思いに気がついた。

 その時は、魔物が出た場所からは遠かったため、魔物に遭遇する事も無く、施設の近くだった事もあって、帰ることができた。もちろん怪我もなかった。

 あの時はミィル姉の手を引いて、一生懸命走ったな。後で、いくつか荷物を落とした事に気がついて、ショックだったが。緊急事態ということで咎められなかったから、余計罪悪感がしたな。


 ともかく、それからいろいろとがんばった。守りたいと思っても、力が無ければだめだと、剣や体術…まあ武術全般を習ったり、本を読んで魔法を覚えたり。

 イメージ力も、本だけではなくいろんな人に話しを聞いたりした。幸い、教会の施設で育ったから、いろいろな人が出入りがある。そんな人たちの話相手になったりしたのだ。


 大人になると、施設から出て自立しなければならない。そろそろそんな年頃になるという頃、ミィル姉が、世界中を旅しながら移動レストランを開きたいと言った時、離れたくないから強引にくっついて行く事に決めた。少し早いけど、俺もそれくらいの年頃になるわけだし。

 だからミィル姉に、旅をするなら俺を護衛として使ってくれと頼んだ。ミィル姉は街から街に移動する時は、ギルドに頼もうとしていたみたいだけど、俺の力量はわかっているからか、あっさりとOKが出た。その返事に、俺は一緒に二人っきりで旅が出来ると、喜んだ。


 ―――けど、いくら施設で姉弟同然に育った同士とは言え、男と女が二人っきりになる。その事を、ミィル姉は全く意識していない。そう気がついた時、少なからずショックだった。俺は弟としてしか見られていないのだと思い知らされたのだから。


 それでも、傍にいたい。それに、傍にいればそのうち意識してくれるかもしれない。なにより、知らない間に他の男に取られてました、なんてことが防げる。ミィル姉の伴侶には、俺が一番だと思ってるけど…ミィル姉がこの人だと心に決めた人がいるなら、応援…する、覚悟はある。ただし、その男がロクデナシだったら、容赦はしないけど。



side:ミィル


 子守唄を口ずさみながら思い出す。

 デュークが小さい時、夜眠れないからと私に泣きついてきた時から、ずっとこの調子。姉さんなんて呼ばれてるけど、多分同い年か、少し私が年上なくらいらしいと、シスターは言っていたし、泣きつかれるほど包容力があるとも思えず、お互いに頼りない存在だったはずなんだけどな。

 大きくなると―――確か十歳位だったとおもうけど、夜に泣くことはなくなった。けれど、何かの折に触れてこの状態になる。膝枕をせがまれるのは、まだ序の口で、今みたいに背後から抱きこまれたり、正面からだったり、ひどいとベッドに押し倒されて抱しめられる事も。


 嫌じゃないし、もう小さな時からだから今更なんだけど…青年となったデュークにこうされると、少しどきどきする。

 小さな時はかわいかったけど、私より背丈が大きくなって、体がしっかりと鍛えられて引き締まって来た事と、元々整った顔と、その髪の色なんかが相まって、相当な美丈夫になったから。

 施設のお手伝いとして、買い物にいっしょに行けば、ご婦人はもちろんの事、年頃の女性に声を掛けられることもしばしばある。

 私が世界中を旅するのだと言い出した時に、いっしょに行くといわれた時にはうれしかった。この場所に、好きな子がいないのだと分かったから。

 まぁ、デュークが狩ってきた魔物を調理したことがきっかけで、世界中の魔物を調理して食べつくしたいと思ったのも事実で、その為には腕の立つ人が一人位欲しかったのも、ある。ギルドに頼もうかと思ってたけど、デュークなら知った仲だし、強さも戦い方も知ってるし、都合がいいと思ったのも事実で。


 ともかく、それを実現させるために、馬車が必要だった。他にも食料とか器具とかいろいろと。だから、街で勉強がてら、軍資金を稼ぐ手段として、教会によく来るカフェ経営のおばさんに頼み込んで、働かせてもらうとこにした。

 デュークは、私と一緒に旅をするならできたほうがいいだろうって、ウエイターとしていっしょに働いた。デュークなら、ウエイターをするより、ギルドに登録して、魔物退治したほうが稼ぎがいいみたいだけど。

 だけど、デューク効果か、連日カフェは女性客で大賑わいだった。

 そのおかげで、売上がアップしたとかで、給料も少し色をつけてくれた。当初の計算では一年位は準備に時間が掛かるだろうと考えていたのに、十か月で出発できるまでになった。デュークの装備も、軽くていいものを用意できたようだし。それにデュークのお金で馬車内の備品なんかもまかなってもらっちゃったし。おかげで快適な生活ができている。


 とにもかくにも、ウエイターがいた方が調理に集中できるし、都合がいいんだけど…なんだかデューク効果なのか、味で集客できているのかが分からなくなりそうなのが、ここ最近の不安の種。

 集客しないことには味を知ってもらえないから、これはこれでいいのかもしれないけど。


 それより、いつになったら起きるのかな? この子はっ! 歌ももういいよね。もう寝てるだろうし。

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