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宴のはじまり~!

 さて、毛も毟られ、頭も落とされ、丸裸となったケッチャーだが、その姿になってしまうと、コッコとの違いがなくなる為、人垣の輪がどんどん近寄ってきて、そのうち好奇心旺盛な子供がやりたいと言い出す。

 こうなると、ミィルもデュークも、危なくない作業をやってもらう事にしたようで、内臓を引き抜いてもらったり、一口に切った物を串に刺す作業をやらせている。

 子供が笑いながら、気持ち悪いと言っては内臓を引き抜く様子を見ている大人も、手伝いに参加し始めた。とはいえ、やはり頻繁に魔物と対峙している自警団の人が主にだが。ただ、その中に、恐々と言った様子の、自警団員の奥さんとみられる女性もいる事から、多少はいい方向へと向かっているのだろうと思われる。


 そうして、小一時間ほどもすれば、野菜やスパイスで炒めた物、串焼きにした物、ただ焼いて、ソースに付けて食べる手羽先肉とモモ肉、から揚げなど、様々な種類の料理が出来上がった。

 ただ、残念な事に、丸鳥の中に調味料を混ぜたココの種を詰めて、丸焼きにするメニューもやりたかったようだが、ガッシュとコールーにより止められ、断念した一幕もあったが。いくらか恐怖心はなくなっているが、まだ早いだろうという理由の様だ。


 未だに鍋を振っているミィルだが、にこにこと満面の笑みだ。それは何故か? ケッチャーの肝が大量に手に入ったからである。小さい部位で、親指程の大きさしかない為に、量が余り取れないのだ。それが、今回は三十羽余りも取れた為、この笑顔である。

 この肝は、柔らかく、クリーミーだ。味も、肝だというのに癖が無く、味付けによって、化けるのだ。

 デュークは、ミィルのその顔を見られたからか、こちらも嬉しそうである。…好物がすでに出来上がっているという理由もあるだろうが。


「さてと、後はこれを入れて…よし、出来た!」


 十分に火が通り、すこし周りが解け始めた頃、緑と黄色のスパイスを入れれば完成のようで、皿に盛りつけている。周りに細くて硬さのあるパンを薄く切った物を並べれば、ディップとしても食べられる。

 ミィルが盛り付けをしている間に、デュークが後片付けをし、盛り付けが終われば、二人でテーブルへと持って行く。

 今この場所は、立食式となっている。レストランを開く際に使うテーブルを三つだけ出して料理を並べているのだ。僅かなテーブルを取り囲み、テーブルを移動する事で、他の料理が食べられるようになっている。取り皿やカトラリーは、各家庭で持ち寄ってもらったようで、様々な皿を皆持って、今か今かと待っている。


「お待たせしました。どうぞみなさんお召し上がりください」


 ミィルがそう声を掛けると、テーブルに人が押し寄せる。ミィルとデュークも、負けじと自分の好物の確保に乗り出し、その場は大賑わいだ。


 ある程度確保してしまえば、後はそれぞれの食べるスピードなどもあり、賑やかではあるけれど、落ち着いた雰囲気になる。ミィルも、デュークも、大好物を確保した事から、満足そうに食べている。そんな二人の所に、村長がやってきた。


「デュークさん、ミィルさん、まずはモルクス村へようこそ。ケッチャーを倒していただいてありがとう。三十羽程では、この村ではどうなっていた事か」

「村長、敬称は必要ないですよ。倒したというより、食材の確保をしたに過ぎませんから。召し上がっていただけましたか?」


 村長の手には、皿がなかった事から、デュークはそう問いかけたようだ。問われた村長は、ケッチャーの味が意外だったのか、驚いた顔をしている。


「あれは本当に、魔物の肉なのかね。あんなに美味しい物だとは思いもよらなかったな」

「お口にあったようで、よかったです。味に関しては、ミィル姉の腕にもよりますが」


 デュークはにこりと笑ってそう言うと、二人で並んで立っていたのだが、一歩さがった。そして、そっとミィルの背を押す。


「おお、ミィルさん、家の家内と義娘に料理を教えてくれたそうだな。それと、ケッチャーの調理法をもっと詳しく知りたいと言っていたよ」

「どうぞミィル、と。調理方法はおいおい、というか、その件に関してご相談があるのですが…今日は折角ですので、また後日に」

「そうだな。今日はちょっとした祭り状態だからな。もっと味を楽しませてもらうよ」

「えぇ。是非そうしてください」


 お互いに笑顔でそう言うと、村長は一家の元へと戻って行った。デュークとミィルは顔を見合わせると、示し合わせたかのように二人ともふらりと移動した。

 ミィルは奥様方が比較的近くにいる、料理のテーブルへ。デュークは、自警団の団体がいるガッシュとコールーの所へだ。


 ミィルがテーブルへ、食べ物を物色しに来た風を装い近づけば、早速声が掛かる。


「あら、ミィルさん。ちょっとこれ、不思議な味なんだけど、味付けはどうなっているの?」

「はい、これはスパイスとして、ナックの実という物を粉状にしたものが入っているんです。あ、すみません、お名前をお聞きしても?」

「やだ、ごめんなさい。私はキャシーよ。私たちはナシュから聞いてたけど、そうよね、自己紹介しなきゃね」


 ふくよかな、いかにも面倒を見るのが好きそうな、人当たりの良さそうな顔の女性である。歳は、中年位だろうか。そして、そのキャシーが中心となり、周りにいた奥様方の自己紹介が始まる。

 ミィルはにこにことその自己紹介を聞くと、次々と繰り出される質問に答えて行く。捌き方から、味付けまで、質問の種類は様々だ。けれど、一気に親交を深める事が出来たのは、今後に繋がるだろう。


 料理の質問が大体収まってくると、やはり、奥様方の気になるのは、デュークのようで。


「あの、デュークさんは弟さんだって聞いたけど…」

「はい、弟ですよ。二人で旅してるからか、夫婦か、恋人かと聞かれたりするんですよね」


 ふふ、と、ミィルは笑ってそう言ったのは、何度もあったからだ。ナシュにも聞かれた事でもある。

 ミィルがそう答えると、奥様方の表情はぱっと明るくなった。そして、きゃあきゃあと年甲斐もなく騒ぎ出した。


「話を聞くと、あの自警団のガッシュといい勝負したっていうじゃないか」

「しかも、ケッチャーを退治したのもそうだって!」

「甘いマスクなのに強い男って、いいわねぇ」


 デュークの事を思い出して、なにやらうっとりとしだす一同。やはりそこは永遠の乙女といった所か。


「あ、でも、あれだけ格好いいなら、許嫁がいたりするんじゃないかしら? どうなの? ミィルさん」

「いえ、特にいませんよ。本人はまだそんな気配もないですが…こればっかりは当人の気持ちしだいですから」

「あらっ! そうなの? じゃあ、もしこの村でいい子がいれば…」

「可能性はありますね」


 にっこりと笑ってミィルが答えれば、どこそこの子がいい年頃だ、やら、あの子可愛いからきっと気に入る、とか、まるで仲人のような状態である。

 料理の話よりも、こちらの方が盛り上がっていたのは、しょうがない事なのだろうか。



 一方、デュークはといえば。


「ガッシュさん、コールーさん」

「ああ、来たか。やっぱミィルの料理は旨いな」

「ありがとうございます。でも、コールーさんもやるじゃないですか」

「これでもミィルに扱かれたからねぇ。まだまだだけど」


 コールーも、ミィルの料理は美味しいと舌鼓を打っている程だ。デュークも、まだ食べていない種類の料理を取りながら、それとなく周りを窺う。すると、やはりちらちらとデュークの様子を窺っている自警団の面々が目に入ったようだ。


「自警団の方ですね? はじめまして、デュークです」

「あ、あぁ。よろしく。俺はバーグの父親のグランだ。息子が世話になったようで」

「そうだったんですか。確かに似ていますね。こちらこそお世話になりました」


 バーグの父親だと言ったグランは、四十から五十歳と言った頃だろうか。歳であるにも関わらず、自警団にいるからか、筋肉で引き締まった体をしている。体格といい、顔の造形といい、何処か似通っているように見える。

 デュークから話しかけられた事に驚いた様で、視線が彷徨っている。だが、戦いに身を置く者だからか、切り替えは早いようで、すぐさま質問をしてきた。


「あんた、あのケッチャーを一瞬で退治したって聞いたんだが…俺達でも可能なのか?」

「気の量と、気配を読めれば、後はイメージ力ですね。でも出来るかっていうと…どうなんでしょう?」

「無理だろ。コールーだって気配読みだぜ? けど出来ねぇんだ」


 ガッシュが口を挟んで来たが、デュークでなければ出来ないという訳じゃない。足りない個所を補えれば、または訓練すればいいのだ。だが、大抵の者は途中で諦めてしまうのだ。


「出来ない事はないと思うんですけど」

「まず、アンタの気配読みの精度が高すぎるんだよ。アタシが気配を読めてもそれは丸っこい点を感じる程度だ。アンタは、その物の形状・・が見えるんだろ? 無理だよ、無理。」

「最初は俺もそうでしたよ。でも実際に何度も対してるからか、分かるようになっただけで」

「……」


 デュークとコールーの会話を聞いていたグランだが、幾分気落ちしたような表情である。デュークは、どうしたものかと困惑していると…


「あの、デュークさん!」

「はい?」


 背後から声を掛けてきたのは、年頃の娘達だ。デュークは、『またか』と、思いこそすれ、それを表には出さずにいると、案の状というべきか、デュークの都合はお構いなしで、様々な質問攻めが始まる。


「お付き合いしている人はいるんですか?」

「いや、いないよ」

「じゃあ、好みのタイプは?」

「タイプ…ごめん、考えた事ないや」


 次々と繰り出される質問に、デュークは柔らかな笑顔で丁寧に答えていく。幼い頃から、デュークの心を占めるのは、ただ一人だとしても。

 デュークがきちんと質問に答えているのは、理由がある。ミィルは嫌がるが、デュークを獲得しようと、精一杯めかしこんでお店にやって来る為、これも集客になると分かっているからだ。

 そんな賑やかな状態に、ガッシュは苦笑を零して、手を振る。あっちに行けという意思表示であろう。デュークは目だけでそれに応えると、グランへ断り、座れそうな場所へと娘たちを誘った。


「あちらへ行きませんか? ここだと、落ち着かないですし」


 少し困ったような表情をしてそう言えば、娘達はその表情の変化にギャップを感じたのか、うっとりとしている。デュークは、己の表情一つで、いかようにも操れると分かっていてやっているのだ。…デュークに興味を持っていない女性であれば、効果はないが。

 そうして、あっさりと誘った場所へと移動を果たす。そこは、長い丸太を縦に切り、足を付けた、長椅子がある。流石にドレスではその様な椅子には座れないだろうが、娘達は日常、農作業をやる為の作業着を着ている為、問題ない。

 とはいえ、皆綺麗な作業着を着ている事から、流石に着替えて来た事が見て取れる。

 椅子は横に一列になっている為、娘達をそこへ座らせ、デュークは地面に胡坐をかくように座った。娘達に椅子を進められたが…


「君達の顔をしっかり見たいから」


 と、にっこり微笑んで言えば、娘達はたちまち真っ赤になって、沈黙してしまうのだった。


「…あ、あの、料理なさるんですよね? やっぱり料理上手な人が好みですか?」

「俺はまだまだ。でも練習すれば、上手になりますよ」

「そう、かな?」

「俺もミィル姉に手伝わされて、そこそこの物なら作れるようになったし、まずはお母さんに習うといいんじゃないかな」

「は、はい。そうします」


 これも、一つの手だ。ミィルは料理を教える為に、教室を開いたりする。デューク目当てで食べに来て、美味しい料理を食べると、どうしてもその味を真似たくなる。よって、教室に来る人数も増えるのだ。

 でも、やはり娘達が気になるのは、デューク本人のようで、何処から来たのかや、どんな場所に行ったか、ガッシュとはどんな間柄なのかなどの質問が繰り広げられる。


 こうして、宴は二人にとって、顔見せの役割もあり、魔物を食べられる物という認識を植えつけられ、今後に繋がるであろう、良い場となったのだった。

最近ちょっと、辻褄合わなくなってると思う箇所がちらほら。

でもキニシナイっ!というか、気にする暇が無い!!!orz

読んで頂いてる皆様にはご迷惑おかけします(;;)

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