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ペア  作者: 秋茄子
11/13

―『最強』の章―

「PK科?」

ネオンは首を傾げる。

「最強は自分たちだって言ってたわよ」

「へぇ…」

ネオンは笑う。

「だって、黒曜?」

「別にいいんじゃないですか?敵じゃないなら心強いじゃないですか」

黒曜は言い、ベリルを見る。

「ところでさっきから、ベリルは何を怒ってるんです?」

ベリルはさっきから話に入って来ない。

「お前には関係ない」

ベリルにそう突き放されて、黒曜は肩を竦めた。

「ネオンとベリルは騎士科に入ったときからずっとペア組んでるのに、ヒューマノイドのことなんて聞いたことなかったから拗ねてるのよ」

「っこのバカウィスタ!デタラメ言うなよ!」

ベリルが慌てたように言う。

「ちゃんと謝ったのに」

言って、ネオンはベリルの赤い頬を見る。

「うるさい!そんなこと怒ってないって言ってるだろ?」

言って、ベリルは立ち上がり、教室を出ようとする。

「どこ行くんですか?」黒曜が問うと、ベリルはイライラと返事する。

「訓練室!ネオンも来いよ!無断で二週間も休みやがって」

「それも謝ったじゃない」

ネオンは苦笑しながら立ち上がった。

「騎士が無断欠勤して、謝って済むと思うのか!?」

ベリルはさも偉そうに正論を言い、ネオンを睨む。

「はいはい」

「俺たちも行こうぜ」

ネオンが二回返事をして部屋を出るのを見て、テルルを促しアゲートが立ち上がる。白夜やセリーズ、シアルと一緒にお菓子を食べていたテルルは不満げに声を上げた。

「えー?なんで?」

「俺は核を入れ替えたばかりだからだよ、今日からみんなとの訓練に合流するのに、前と同じくらい動けないと困るだろ?」

「ネオンとベリルが気になるだけのくせに」

テルルが舌を出す。

「なぁに、それ?どういうこと?」

セリーズが食いついてきたので、アゲートはなんでもない、と言い張って、テルルを連れてネオンたちの後を追った。

「ネオンは大変だな」

朱夏が笑って、白夜の手元のクッキーを取った。抗議の声を上げる白夜に自分のビスケットを渡して、シアルが宥めた。

「コレうまい、手作り?」

クッキーを食べてしまった朱夏が言う。

「僕が作ったんだよ。味覚もあるんだ?」

シアルが首を傾げる。

「俺はこのくらいの甘さが好きな設定になってる」

朱夏が言って、もう一枚クッキーを取った。

「じゃあ設定変えたらなんでも食べれるんじゃない」

ウイスタリアが笑う。

「簡単に言わないでくださいよ。核に組み込まれたプログラムを簡単に変えたりできません」

「核をいじるってこと自体、すごく危険なことなんだ」

白夜が言い、ビスケットをもう一枚食べた。

「へぇ…あ、白夜、ビスケット気に入った?」

三枚目に手を伸ばす白夜に、シアルが微笑んだ。

「ね、私のマフィンも食べて」

「お、サンキュー」

セリーズに勧められ、朱夏が一つとる。

「僕もいいですか?」

「みんな、ほどほどにしないとお昼食べられなくなるわよ?」

黒曜までうれしそうに手を出すのを見て、ウイスタリアが笑う。

「はぁい」

セリーズが元気に返事しながら、クッキーを一枚食べた。



テルルがネオンの前で蹴りを寸止めする。

ネオンも腕を突き出したが足と腕では届かない。

「テルルの勝ちー」

アゲートが勝敗を告げる。

パンパンパン…

乾いた拍手が聞こえた。

「あんたがネオンだろ?最強のヒューマノイドなんて言っても大したことないんだ?」

嘲笑う声に、ネオンは眉を寄せる。

「何?」

「ネオンは強いわよ!今だって何回かやって、やっととれたんだから」

テルルが牙を剥く。

「何?こいつら…。ここは騎士科の訓練室だぜ?」

休憩していたベリルとアゲートが近付いて来る。

「悪いけどちょっと使わせてよ。よ。ボクたちの科はまだ新設だからさ、専用訓練室ないんだよ」

乱入者が微笑んだ。

「…もしかして、PK科?…えっと確かトトとココ?」

アゲートが首を傾げる。

「そ。どの科もさ、新設だと思って訓練室貸してくれないの。使ってないくせにさ」

「その横柄な態度で貸せって言ったんじゃないの?」

ネオンに言われて、トトは笑う。

「他の科のやつらにはちゃんと頼んだよ。あんたたちは特別」

「なんでだよ?」

ベリルが不機嫌に問う。

「ボクたちは、戦場において騎士科に、…ヒューマノイドに代わって戦いの中心となるために学校に入れられたの。それに、騎士科なんて、親がエリートって連中しかいない、ただの金持ち集団だろ?気に入らないよ」

「なんだと?」

ベリルが声を荒げて掴みかかろうとするのを、ネオンが止める。

「ベリル、ダメだよ!他の科の人とケンカなんてしたら」

ベリルがネオンを睨む。

「お前、バカにされて悔しくないわけ?」

「悔しいなんて感情ないだろ?そこの三体はヒューマノイドなんだから」

「なんだと?」

気色ばむベリルを抑える手を放して、ネオンはトトを見る。

「ヒューマノイドのこと、誰から聞いたの?」

トトはニヤリと笑った。

「…ドクター.御手洗…」

ネオンたちは目を見開く!

「御手洗の仲間!?」

「違うよ」

顔色を変えたネオンに、満足そうにトトは言う。

「あんたたちが寝てる間に、ボクたちが奴を始末してきたんだよ」

「しま、つ…?」

ネオンが首を傾げる。

「あんたたち、ヒューマノイドだけなら、いくら壊されてもいいけどさ、他の生徒まで危険に晒されちゃたまんないの!だからボクたちが命令受けて、始末したんだ」

トトは笑った。

「あの御手洗を?」

「ヒューマノイドが一体もない状態じゃ、御手洗なんてただの人だよ?一般人相手にちまちまやってるヒマも、ないでしょ?軍人さんには」

ココがトトの服の裾を引っ張る。

「おしゃべりしてる内に授業が始まっちゃう。ボクらの力は今度見せることにするよ」

トトは笑って言い、ココと一緒に訓練室を後にした。


二人が去った後の訓練室で、ベリルは首を傾げる。

「何ショック受けてんだよ?お前らは」

テルルがベリルを見る。

「私たちはいいの。御手洗は敵以外のなんでもないんだから…」

テルルはネオンにすがるようにその腕にすり寄った。

「でも、黒曜たちは複雑だよ。自分たちを作ったマスターだもん。どうせなら自分たちが…、って思ってたはずだ」

「黙ってりゃ、わかんねーよ。俺たちも早く教室戻ろうぜ」

アゲートが言って、教室の出口へ向かい、ベリルがネオンとテルルの背中を押す。

「アゲートの言う通りだよ。ほら、俺たちも行かなきゃ、遅れるぞ」

ネオンとテルルは頷き、出口へ向かった。



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