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夏、僕ら、青春。  作者: あきよう
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07話 生徒会


 この日の朝は慌ただしく始まった。

「なんで時計が壊れてるんだよ!」

 こんなことを叫んでも意味が無いということを判っていながらも俺の口からは自然とそんな言葉が漏れていた。

 俺の時計だけならまだ判るが、全員の時計が壊れていたのだ。

 普通無いだろこんな奇跡……。

 しかしどんなことがあっても遅刻は遅刻。遅れれば、ごく当たり前に遅刻扱いになるだろう。

「早く学食行こうぜ」

「いや、今からだと学食によっている時間はないぞ」

 和弥の意見に陸の冷静な意見が反発する。

「……たしかにそうだな」

 そこに彩都も同調する。

「飯が食えない……だと……。俺は……なんのために登校してるんだぁぁぁ」

「いや、学校は勉強するところだからな」

 陸や彩都の意見に対しておかしい反応をしている和弥にツッコミを入れる。

 でも朝食が抜きになるというところには辛いところがある。

 確か、一限はテストだったような気がする。

 朝食をとると取らないでは頭の回転が違うということを聞いたことがあるような気がする。

 何にしても朝食はとりたかった……。

 そうは思っていても朝食と未来。天秤に掛けるとやはり未来のほうが重い。

 それはここに居る全員も解っていることだ。……ただ一人を除いて。

「何でだよ。みんな腹減ってないのか? トントンという包丁の規則的なリズム。そしてテーブルには温かい御飯と美味しそうな湯気を出す味噌汁が乗ってるんだぞ? お前らはこれを美味しそうだと思わないのか? お前らは日本人じゃないのか?」

 異様な気迫で迫りながら力説する和弥の話に俺の想像力が掻き立てられる。

 すごく美味そうだ。今日遅刻をしたとしても朝ごはんを食べる価値があるとさえ思う。

「今日の朝の主食はパンだ。味噌汁は着いて来ない上に、場所は食堂だ。包丁の音は感じられない上にパンは和風ではないぞ」

 陸の冷静な意見で俺の理性も正常に戻る。遅刻だけは洒落にならないからな……。

 まだ何か言いたそうにしている和弥をそのままにして、俺たちは教室へ急ぐ。

 よっぽどのことがない限り和弥も着いて来るだろう。

 全速力で教室まで走っていく。

 そういえば昨日はここで田川さんにあったんだよな……。

 一応そのあたりを軽く見てみるが田川さんの姿はない。

 まあ二日連続で遅刻するほうが珍しいか……。俺はその一人だけど……。

 チャイムぎりぎりで教室に入り、俺達はなんとか遅刻をまぬがれた。

 キーンコーンカーンコーン

 チャイムが鳴り地獄だったテストが終わる。

「なあ、テストはどうだった?」

 休み時間が始まり四人集まってすぐそのことを聞いてきたのは和弥だ。

 なんでいつも自分が勉強できないことを知ってて、和弥はテストの結果を聞いてくるのだろうか。

「……問題ない」

「まあまあだな」

 彩都も陸も勉強は出来る方だ。陸のまあ満足はほぼ完璧だし、彩都が問題ないと言うならば90点以上はとっているのだろう。

「俺もまあまあだよ。和弥は?」

「俺は過去は振り返らない男さ」

「じゃあなんで聞いてきたんだよ!」

 いつものことではあるが思わずツッコミを入れてしまう。

 毎回毎回、同じような流れなのになんでまたやるのだろうか? もしかして……楽しんでいる?

 ……それはないか。俺はそう一人で決めつける。

 和弥の言うことだ。そう意味はないのだろう。

「おい彩都、バトルしてくれねぇか?」

「……なんでだ?」

 いつもならば、聞くこともせずに攻撃を仕掛ける和弥が聞いてきたため彩都も理由を聞くらしい。

「何でってそりゃ、腹が減っても戦はできるだからだ!」

「和弥……それは、腹が減っては戦はできぬだと思うぞ」

「……馬鹿だな」

「んだとてめぇ~」

 その言葉が引き金となり和弥の怒りも頂点に達してくる。

 そしてその様子を見て周りの生徒も盛り上がり始める。やはり二人の喧嘩を見るのもこの学園の生徒の日常の一環となっているのだろう。

「暴力はやめていただけませんか」

 凛とした声が教室に響く。その途端さっきまで盛り上がっていた生徒は急に静かになった。

 俺達の目の前にいるその声の主は紫色の髪を腰まで伸ばした女子生徒だ。首にはなぜかコンパスのようなものをぶら下げている。

「私は鳳瑠衣子おおとりるいこと申します。去年全校生徒の前で挨拶はさせてもらっていますが、覚えてはいないですか?」

 確か去年、全校の前で挨拶をしていた生徒がいたような気がする。

 確か彼女は生徒会のメンバーだったはずだ。

「知らねぇな」

 さすが和弥。全校生徒の前で話していたのに覚えていないとは、さすが猫並みの記憶力の持ち主だ……。

「おい彩都! バトルだ!」

 そう言って和弥はもう一度彩都にバトルを挑む。

 相変わらず和弥は人の話を聞いちゃいない。まあ、俺も止める気はないのだが……。

「ですからそういう事は……」

「鳳くん言っても無駄だということは、君が一番良く解っているのではないのか?」

 そこにいたのは、黒髪でそれを肩まで伸ばしている女子生徒だ。

 その女子生徒は十分美人の部類に入るのだろう。

 だが、その女子生徒の異様な存在感に圧倒されてそう思うことさえもままならない。

 こう言うのを威圧感というのだろうと俺はどうでもいいことを考えていた。

「誰だ、テメェは」

 声を荒らげて、和弥が怒鳴るように尋ねる。

「私の名前は米谷亜矢香よねやあやかだ。年の初めに自己紹介はちゃんとしたつもりなのだが、人の名前はちゃんと覚えておくものだよ。そして人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗るのが礼儀じゃないのかな。十文字君」

 その女子生徒、米谷さんは馬鹿にしたように和弥に対して話しかける。

 そしてその言葉が和弥の怒りに火をつける。

「お前は……俺の怒りに火をつけたことを後悔しろ」

 二人とも戦闘態勢に入り、周りの生徒も盛り上がってくる。

「ちょっと待て!」

 さっきまで話しに入ってこなかった陸が話しに割って入る。

 陸がこの手の話を止めに来るのは珍しいな……。

「あんた、相当な実力者のようだな。この勝負俺に仕切らせてもらえないか?」

 さっきまでの俺の関心を返して欲しくなるような発言をしていた。

 まあ、この手の話を陸が止めるはずがないだろう。

 そんなふうに納得している俺もこの日常に、慣れてしまった一人なんだろうと思う。

 他の生徒のテンションもヒートアップしてきて、この盛り上がりは誰にも止められない上に、誰も止めないのだろう。

「二人には俺達のいつものルールで戦ってもらう。武器は手持ちにあるものなら何を使っても良し。ただし手持ちにあるもの以外を武器に使うのはなしだ。そしてどちらかが足と手以外を地面に着けたら終了だ。ただし米谷は女子だからバトル中一回のみ、他の道具を一個だけ補充するのを良しとする」

 女子向けにルールを少しだけ陸が改定する。陸はそういう事だけはまめだ。

「このルールでいいか?」

「問題ない」

 そう言って、米谷さんは教室の後ろに立てかけてある、竹刀を一本持つ。

「早くやろうぜ」

 和弥にいたってはもう待ちきれないらしい。

「レディー・ファイト」

 教室に陸の声が響き渡った――

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