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夏、僕ら、青春。  作者: あきよう
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04話 上野


 残りの授業も全て終わり放課後になる。部活に入っている人間は部活に行き、入っていない人間は自分のしたいことをしている時間だ。

 いつもなら俺、陸、彩都、和弥の四人で何かをしているのだが、今日は陸と二人だけだ。

 彩都はあの休み時間の後何かを思いついたのかずっと部室にこもったままらしい。和弥も今日は珍しく買い物などをするらしく俺達にはついて来なかった。

 ついてきたとしてもこれは俺達のことで、自分がいても意味が無いと思ったのだろう。

 俺達は今2―Dに向かっている。

 理由は陸の友人である上野元春うえのもとはるをチームに誘うためだ。

 陸の話だと上野はいつも放課後は教室にいるらしい。

 2―Dに着くと陸は普通に教室に入っていく。一応他のクラスのため入るのをやめようかと思ったが、陸が俺を手招きしているので仕方なく俺も入ることにする。

 上野の席は陸の席と同じ場所のようだ。

「上野、俺達と野球やらないか?」

「なんでまた野球を?」

 普通の人ならこの反応をするだろう。

「何でって、そりゃあ青春だからだろ? それ以外に理由がいるのか?」

 周りの女子からキャーというような黄色い声が聞こえるが今、陸が言ってることはあまりにもしょうもないことだ。

「いや、その理由で決着が着くのはお前ぐらいだろ……」

 そういった後に上野は俺に哀れみの顔を向けてくる。なんでだろう、目から涙が……。

 でもたしかに上野の言うとおりだ。それに今回に関しては俺しか陸の意見に賛成した人間はいない。

「それじゃあゲームで決めないか?」

「ゲーム?」

 今、陸がゲームと言っているのは多分あれの事を指しているのだろう。

「ああゲームだ。基本、ルールは簡単俺とお前が戦うそれだけだ。だがそれでは俺のほうが経験や格闘センスなどで確実に有利だろ? だから特別に考えた俺らのルールで戦う。それでいいだろ?」

「ああ、あの時言っていたルールか」

 その言い方から察するに上野は前、彩都と和弥が戦っていたときに食堂にいたのだろう。

「何だ、知ってたのか」

「食堂であんだけ騒いでたんだ。知らない人間のほうが珍しいと思うぞ?」

「それじゃあ説明は無用だな。行くぜ、レディー・ファイト!」

 陸の開始の合図と共にゴングが鳴り響く。

 開始早々上野はポケットに手を入れスリングショット――つまりパチンコを取り出す。

 弾となるビー玉をセットし十分に引き金を引き、放つ。

 その弾は綺麗にまっすぐ飛んでいくが逆にそれがあだとなったのか陸は体を半身反らして最小限の動きでそれを避ける。

「当たらないぜ、そんな攻撃」

「らしくないな、つめが甘いぜ? お前が一番解っているはずだろ。狙いに関しては俺は何手先までも呼んでいるって」

 避けられたビー玉はまるでそう避けられることを予想していたかのように教室の壁に反射して陸の方に向かって跳ね返ってくる。

「あぶねぇ」

 先程のように余裕を持ってとはいかないが、バク宙をするようにうまい具合でその弾を避ける。

 上野の狙いも上手いがそれ以上に陸の身体能力は高い。

 上野は三連発で弾を撃ち出してくる。

 その弾を今度は後退して陸は避ける。

 そしてビー玉は反射して後ろに飛ぶ。ここまではさっきと同じだが、ここからがさっきと違う。

 陸はビー玉が反射してくる前に、前に出る。

 陸は左手を地面につき左手だけで体全体を支え蹴りを繰り出す。

 手を付くのも、認められているため陸の攻撃で、陸自身が負けというわけではない。

 上野は両手でその蹴りを防ぐが、その考えが間違いだったのか防御しきれずに上野は体制を少し後ろに反らしてしまう。

 陸はそこに回し蹴りを入れその勝負に決着けりをつけようとしたが、その判断が逆に間違いであった。

 後ろから跳ね返ってきたビー玉が、陸の背中に三発当たって陸は体制を崩してしまう。

 上野はそこに陸の顔面に膝蹴りを溝に入れ、陸の体が宙を舞ったときにパチンコを引き絞りビー玉を陸の顔面に対して炸裂させる。

 陸に対してのダメージは大きいものだろうが、顔面にビー玉を当てられて体制が後ろにずれたため、手と足以外を地面につかずになんとか体制を支えることができた。

 肩を撃たれたのか陸は肩をかばっているようなことをしているが、陸の戦闘スタイルは基本は足技を使うので攻撃には関係は出ないが、やはりバランスなどが崩れてしまっていてこの様子ではいつもの動きは存分にはできないだろう。

 上野は崩れたバランスを取り戻すために教室の反対側に向かって走りだす。

 陸はその間を使ってポケットからひとつの武器を取り出す。

 それは簡易型のスタンガンのようなもので、彩都が陸のために作った特注品だ。小型ではあるがその威力は普通の大きさのスタンガンとあまり変わりのない強力な武器だ。

 威力は従来の物と変わりはないが、電気の届く距離と効果時間はどうしても短くなってしまう。しかしここ一番では強力な一撃を誇る陸の、隠し玉だ。

 上野はその武器に気づいたのか、陸が簡単には近づけないようにパチンコの弾を乱射している。

 しかし今の陸に対してその攻撃は、威嚇にすら役だっていない。

 このルール上、陸はこの武器を相手に当てればほぼ確実に勝利が決まる。

 故に陸にとってはスタンガンを当てることが今、一番の優先事項なのだ。

 陸は飛んで来るビー玉を気にせず一気に決着を付けに行く。

 飛んでくるビー玉が陸の体に何発かあたるが、陸は体制を崩さず上野に対して殴るようにスタンガンを当てる。

 その一撃で上野の体の力が抜けたようで、上野は膝を付く。

「ゲームセットだ」


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