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夏、僕ら、青春。  作者: あきよう
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02話 野球



 今日は少し寝坊してしまい食堂に入るのがいつもより遅れる。

 というより昨日あれほど暴れていたみんなが俺よりも来るのが早いということには疑問を感じる。

 俺は急いで朝御飯を持ってきて席に着く。

 今日の朝御飯は、ご飯に味噌汁と玉子焼きというなんとも日本の朝食というようなご飯だった。

「悪い、遅れた」

「いや、べつにいいさ」

 陸がそう答える。

 昨日あれほど騒いでいたというのに、みんなの顔からは眠気や疲れが全然見られなかった。

「……直樹」

 席に座った直後、名前を呼ばれる。

 声をかけられて方向を見ると彩都が注射を俺に一本渡してきた。

 この注射に入っている薬は精神を安定させる薬らしい。

 病院に行けばもらえるというのに、彩都はこれを毎日作ってくれる。

 だから俺はその関係で病院に行ったことはない。

 なんで俺がこんな薬が必要かというとそれは……俺が二重人格者だからだ。

 俺は昔、家では何かと扱いが酷かった。

 もともと俺の親は俺が幼い頃に離婚し父親しかいなかった。

 その父親は最低の人間だった。俺の母親がなんで離婚したかということがよくわかる。

 暴力は振るわれるし、酷い事を言われるのもあたり前のことだった。

 その時から時々、記憶が飛ぶことがあったが俺はそのことを大して気にしていなかった。

 そしてある時俺は誘拐された。

 もちろん身代金が目的だったのだろう。

 俺は家庭のこともあり、友人と呼べる人間は少なかった。その時は公園に一人でいたのだ。

 そして俺の家は貧乏であった上、父親はそんなことに金を使うわけがない。むしろ自分で俺を殺さなくていいのだからありがたいと思っていたのかもしれない。

 そんなこともありその事件は世間的には公表されなかった。

 俺のそこでの生活は家とは変わらなかった。

 そしてある時俺は……。ここからは俺の思い出したくない過去の記憶だ。

 その時だ……俺が二重人格者だと知ったのは。

 その生まれた人格が秋陽直弥あきようなおやだ。

 直樹はそのような事件から生まれた人格のため命を玩具と同じようにしか見ていない危険な人格だ。

 だから直弥が出てこないように、もしもの時のために俺はこの注射をしている。

 この注射は彩都の特製らしく彩都以外には作れない上に医者からもらった薬よりよく効く。

 俺が自分に注射を射っている時に陸が俺たち三人に話しかけてきた。

「なあ、野球をしないか?」

 陸は唐突に俺達に聞いてきた。

「「……」」

 あまりに唐突すぎて二人は言葉を失っているようだ。

 やはりこのようなときは俺が聞くしか無いのか……。

 それがこの中で俺が行き着いたポジションだ。

「陸が急になにかやりたいことを言うのには、もう慣れたけど……今度はなんで野球?」

 こんなことに慣れても全く意味が無いんだけどな……。そんなことを思いながら俺は聞く。

「直樹は何を言ってるんだ? 高校といえば青春。青春といえば夏。夏と言えば野球だろ?」

 陸は爽やかに笑いながら俺にそう答える。今の陸ならこの学園全員の女子を落とせるのだろう。そう思えるほど実に爽やかで清々しい。

「漫画かゲームの影響だな」

 和弥は呆れたようにツッコミを入れる。

 ふざけたような話だがこれは全部、本当の話だ。

 漫画などを読んでこんなことをしてみたい、こんなことができたらいいなと思うのはよくあることだろう。

 だが殆どの人がそれを実行にうつすことはないはずだ。

 でも陸は本当にそのことをやってしまう。これまでにもバンドやボーリングなど色々なことをやってきた。

 でもこれまでと今回ではひとつだけ例外がある。

 これまでは俺達四人で楽しめたことをやってきた。でも今回の野球は九人でやるスポーツだ。俺達ではあと五人足りない。

「なあ、陸なんで今回は野球なんだ?」

 和弥もそれを疑問に思ったのかそのことを聞く。

「何言ってるんだ和弥。さっき理由入っただろ? 俺達が青春真っ盛りで今が夏だからだ」

 逆に何を行っているんだお前はとでも言いたそうな顔で言ってくる。

 色々とツッコミを入れたいセリフだったが今聞くべきことはそのことではない。

 このままではそのことを聞けないだろうな……。

 そう思い今度は俺が聞くことにする。

「今までは四人で出来ることだったのになんで今回はわざわざ九人でやる野球なんだ?」

 陸は一旦目線を外してからもう一度俺の方を向き、口を開く。

「俺は昨日ふと思ったんだ……」

「な、何をだよ」

 陸の真剣な顔つきから和弥が身構えるようにして聞く。

「俺たち……友達少ないだろ」

 シ―――――――ン

 俺達はその言葉を聞いたとたん石のように微動だと動かなくなった。

 殆ど話に入ってこなかったはずの彩都でさえも固まっている。

 どれほどの時間がたったかあまり解らないが、殆どの生徒がまだ残っていることから時間はそれほど経っていないのだろう。

 彩都は何事もなかったかのように朝食を食べ始めているが、和弥にいたってはまだ固まっている。

「このままじゃいけないだろ? 青春まっただ中のはずの俺たちがなんで男だけの四人でつるんでいるんだ。俺達はなんだ? ホモ野郎の集まりか?」

 陸がよく解らないところで声を荒くする。

 野球をやっても男子ばっかりだと思うんだけどな……。

 まあ今はそんなことにツッコミをいれている暇はない。

 陸の言うことは案外間違っていることではないと思う。

 間違っていることを言ってないから俺達は毎回毎回、陸に着いて言ってるのだろう。

 だが今回にいたっては、いつもとは違った。

「……僕には自分の目標がある」

 そう一言告げて、彩都は一人で食堂を出ていってしまう。

「今回は俺も降りさせてもらうぜ。お前たちとなら解るが、知らない奴と力を合わせる意味が分からないからな」

 和弥もそう言って食堂を出ていってしまった。

「おいふたりとも……」

 もう少しちゃんと話を聞こうぜ。そう話を続けようとしたところで陸が止めてくる。

「いいんだ直樹。二人もいつかは、入ってくれるさ。今日の放課後はメンバー集めをするからな」

 そう言い残して陸も一人で食堂を出ていってしまった。

 ちなみに三人とも後片付けはしてない……。

 俺は自分の分も含め四人分の後片付けをすることになった。



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