19話 バイト
今日俺は休日を満喫するために町に出ている。……実際は壊れてしまった時計を一人で買いに来ただけなのだが……。
しかし断じて俺が虚しい人間というわけではない。ただみんなが忙しいだけなのだ。そうみんなが忙しいのだ。大切なことなので(ry
と、まぁ誰にしているかわからない言い訳は此処までにしておいて、本来の目的を進行しよう。
そんな事を考えながら俺はあるデパートの家電売場、その中の目覚まし時計のコーナに向かう。
こだわりがあるわけでもないし適当な物でいいだろう、そう考えながら俺は気に入ったデザインのものを手に取りレジに向かう。
「いらっしゃいませー。……って、あれ? 直樹くん?」
スッカラカンだったレジに入った俺に話しかけてきたのはなんと綾さんだった。
「……何でそんなに驚いた顔してるの?」
そんな不機嫌に質問する程、今の俺の顔は驚いてるのか……。何故、俺がこんなに驚いているかというと校外でアルバイトをするのには”アルバイト許可証”なるものが必要なのだ。
つまり俺が何を言いたいかというと、校内で殆どの場合風紀委員に追われているこの人物がアルバイト許可証を持っているはずがないということだ。
「……よし、俺が一緒に行ってやるから謝りに行こう」
諭すように綾さんに対して、そう話しかける。
「違うよ!? 学校に嘘ついて勝手にバイトしてるとかじゃないよ!?」
全力で否定してくるところが怪しいがそんなつく必要の無い嘘、言うことはないだろう。
とりあえずは買うために持ってきた目覚まし時計をレジに通して店を後にする。
特筆して話すこともなかったし、いつまでも話していてもバイトの邪魔になるだけだしな。
というか一人で来たことも原因ではあるかもしれないが、どうしても男一人でショッピングというのは暇になる。
まぁ、やることはやったし帰りますか……。
「あれ? 直樹くん?」
帰ろうと思い学園の方に歩き出した俺を引き止めたの声の主は田川さんだった。その後ろには米谷さんもいる。
ここは服屋なのだが、米谷さんと田川さんが二人で服屋に来ているというのは意外だ。
「なにか失礼なことを考えていなかったか? 直樹君」
いつものように木刀は持っていないが、その殺気はものすごい勢いで俺を襲う。
正直、手加減をされる何時ものルールでも俺は米谷さんには勝てない気がする。……勝つ必要も無いかもしれないが。
そんなこんなで田川さん達に連れ行かれ、そのままついでに自分の服を買った俺は昼頃、三人で学園まで戻ってきていた。
グラウンドの方向からバットに当たったボールの音がするのは野球部のいないうちでは、陸たちが練習をしているのだろう。
「俺は今から野球の練習をしに行こうと思うけど、田川さんたちはどうする?」
「私達も行こうと思ってるよ」
外で適当に買ってきたサンドウィッチを食べながら田川さん達に話しかけると、二人とも練習に出るらしい。陸たちといい、俺達といい野球をやっているだけあって休日でも暇な人間の集まりなのだろうか?
とりあえず昼飯を食べながらグラウンドの方へ向かう。
グラウンドで練習していたのは陸と和弥そして上野だった。
みんなして俺の誘いを断ったというのに練習をしているのか……。友情ってこういうものだっけ?
あまり納得はいかないが、とりあえずみんなの中に混じって練習をする。
結局自由参加だというのに全員で集まって練習をする俺たち。やっぱりただの暇人の集まりなんだろうなと思いながらも日が沈み始めるまで練習をした俺達だった。