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剣と華  作者: 風吹流霞
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3.騎士と盗賊

新キャラ登場。後々、メインキャラになるキャラです。

広大な土地であるラグラージは、治安維持のため、各地方に一部隊という形で騎士団が置かれている。

ローザンヌ地方には第十三部隊が駐在していた。

現在の第十三部隊の主な任務は、ローザンヌ地方に出没する盗賊の捕縛とアジト捜索、壊滅であるが、


「これがなかなかみつからねぇんだよなぁ・・・」


明るい茶髪を掻きながら、十三部隊の隊長は呟いた。

隊長であるディーノ・オライムはれっきとした貴族である。

だが、末弟のため、領地を継ぐという選択肢はこれっぽちも残っていなかった。

末弟に残された選択肢は二つ、婿に入るか、身一つで生計を立てるか。

彼は迷わず後者を選択した。そうして、彼は騎士になった。彼に振り当てられたのは第十三部隊隊長。

隊長という身分は名誉だが、辺境といわざるを得ないローザンヌの隊長なぞ、事実上の左遷。

オライム家は当時、権力をものにしていたディスト家と対立していたから、想像はついていた事だ。

しかし、元々、貴族達の権力闘争に嫌気が差していたディーノはこれ幸いと、王都を後にした。

第十三部隊は、問題児の集団だった。前任の隊長も手を焼いていたらしい。

鍛えてみれば、個人の能力は高いので、こういうイレギュラーな部隊があってもいいと考え直したわけだ。

実際、戦争だとか山賊退治にはこういうイレギュラーな部隊が活躍しやすい。


辺境の騎士団の任務といえば、山賊盗賊退治だからなぁ・・・


と彼は開き直ったのだ。開き直った上で、団員達と腹を割って付き合うようになった。

そのせいか知らないが、団員達の間では自分を上官と思えないような言動も多い。

団員と言うより、仲間という感覚で、ディーノはそういう感覚が嫌いではなかった。


「ディーノ様、こんにちは~」


村娘達が挨拶しつつ、通り過ぎていく。「ああ」と彼は笑顔で応じる。

きゃーきゃーと娘達が黄色い声を上げた。


「団長、ずるいですよ!」


むっとしながら近付いてくるのは団員のマリーノだ。

「ここの村、女の子全員、団長派なんですから!」

「何だ、その派って・・・!」

「団長、男前ですからねー、ここの女の子、俺らなんか見向きもしません」

ディーノは困ったように頬を掻いた。

この容姿は、王都にいた時、社交界で貴族のご婦人方には受けがよかった。

婿入りの話もぽつぽつあったらしいが、彼はそれをきっぱりと断った。後悔はしていない。

「状況は?」とディーノの問いに、「全然でさ」とマリーノは肩をすくめる。

「ああいう輩は隠れるのがうまいですからね」

けっとマリーノは吐き捨てた。

この村は最近、盗賊被害が多くなっているため、この村の付近にアジトがあるのではないかと推測し、特別に警護している。

盗賊が増えてきているのはやはり、食糧不足にあるかもしれない。

去年が天候不良で、作物の生育が遅れ、収穫も落ち込んだ。

食糧難で盗賊に身を落とす者たちが続出している。頭が痛い問題だった。


開放されたケヴィンは全速力が村に戻った。村に騎士団が駐屯していることを思い出したからだ。

彼を迎えたエレーナと子供達は、彼の形相に驚く。


「リイナちゃんが盗賊にさらわれた・・・」


「どうして・・・」と家族そろって顔色が変わった。ケヴィンが事情を説明すると、

「リイナちゃんは甘い・・・」

妻は悔しそうに呟いた。卑怯な盗賊がリイナの取引に応じるわけがないのに・・・。

例え、甘いといわれようが、懲りずに彼女はそれを実行するだろう。リイナはそういう子である。

人を疑うことを知らない純真さを持つ少女なのだ。

「とりあえず、騎士団のほうに・・・」

ケヴィンも異論はないが、騎士団でもみつけていない盗賊団のアジトだ。望みは薄いかもしれない。

それでも希望を失ってはいけない。


「騒がしいな、何かあったのか?」


あーでもないこーでもないと妻と相談していると、明るい茶髪、碧眼の好青年の姿が見えた。

年齢は20代前半、引き締まった表情の青年は美形ではないが男前と呼ぶにふさわしい。

彼こそが村に駐屯している騎士団の隊長ディーノである。

「ディーノ様、ちょうどよいところに!」とエレーナが顔を輝かせた。

「リイナちゃんが浚われてしまったんです、盗賊に!」

「その、リイナという女の子はあなた達の子供・・・ではないな・・・」

ディーノは視線を一度、子供達に向けた。ケヴィンの子供は息子だけで、娘はいないと伝えてある。

「リイナちゃんは・・・」と一瞬迷ったが、

「私達の子供ではないですし、村の子供でもありません」

彼は正直に答えた。ディーノは驚きで目を見開く。村を出て、少女ひとり生活ができるのであろうか。

村の外には山賊、盗賊と危険が満ちている。

「リイナちゃんはとってもいい子です!!」

エレーナは力説する。その気持ちは痛いほど解るが、ディーノがそれを信じて騎士団を動かすかどうかは定かではない。少女一人に、騎士団が動くのかどうか。ましてや、リイナは村の子ではない。

「・・・」

ディーノはしばらく沈黙していた。

「で、そのリイナって子の容姿は?」

一瞬、何を聞かれたのか理解できなかったが、

「ちゃ、茶色の髪に若草色の瞳ですが・・・」

「アジトの場所が解らないから何ともいえないが・・・」

彼は苦虫を噛み砕いたような表情を浮かべた。


「数人で周辺を探らせよう」


「有難うございます!」とエレーナが涙を浮かべ、頭を下げた。


ディーノは、美形というより男前。綺麗というよりカッコイイ。

彼もそこそこもてるんですけど、後に出てくる相方が美形すぎるので、隠れがち。

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