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【第一部完結】科学で興す異世界国家 ~理不尽に殺された技術者は第三王子に転生し、科学で王座に至る~  作者: Lihito


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47話:とっておき

「作戦があります」


俺は二人の兄を見た。


「まず必要なものを言います」


リアン兄上が身を乗り出した。


「聞こう」


「一つ目。白い布。できるだけ大きなものを、大量に」


「布?」


「はい。広場を覆えるくらいの規模で」


リアン兄上が眉をひそめた。


「……それだけの量となると、かなりの費用になるが」


「二つ目。食料。エンヴァの民に配るためのものです」


「食料だと?」


ヴァリウス兄上が首を傾げた。


「何をするつもりだ」


「人を集めます。できるだけ多く、広場に」


「……それで?」


「三つ目」


俺は少し間を置いた。


「リアン兄上に、文書を作成してほしいのです」


「文書?」


「エンヴァ王に署名させるための書類です。表向きは友好条約。物資支援の申し出という形で」


リアン兄上の目が鋭くなった。


「……何を企んでいる」


「その文書が、証拠になります」


「証拠?」


「はい。エンヴァ王が魔人と密約を結んでいた、という」


沈黙が落ちた。


ヴァリウス兄上とリアン兄上が顔を見合わせる。


「……どういうことだ」


「詳しくは言えません。ただ、署名させた後に、その文書の意味が変わる仕掛けがあります」


「仕掛け?」


「俺の技術です」


俺は二人を見た。


「内容は少しグレーです。正直、騙し討ちに近い。ですが——」


言葉を選ぶ。


——運命点を10点使う。


【運命点消費:10点】

【残運命点:410 → 400】


「絶対に悪用しません。証拠も残しません。俺を、信じてください」


リアン兄上が腕を組んだ。


しばらく黙っていた。


「……正直、意味が分からない」


「申し訳ありません」


「布と食料と文書で、どうやって密約の証拠を掴む? 僕には見当もつかない」


リアン兄上は溜息をついた。


「だが——」


俺を見た。


「お前が『信じてくれ』と言うなら、信じよう」


「リアン兄上……」


「経済戦でお前と競った時、思い知らされた。僕の計算の外から、お前は答えを出してきた。あれで分かったよ。お前の発想には、僕では追いつけないと」


リアン兄上は苦笑した。


「だから今回も乗る。どうせ僕が考えるより、お前の策の方が上手くいく」


ヴァリウス兄上が俺を見た。


「……俺は正直、よく分からん」


「申し訳ありません」


「いや、分からんでいい。ただ——」


ヴァリウス兄上は腕を組んだ。


「俺に何をしろと言うんだ」


「合図を送ります。夜空に閃光が上がったら、ヴァリウス兄上は兵を率いてエンヴァに入ってください」


「閃光?」


「爆発です。遠くからでも見えるくらいの」


「……何をするつもりだ」


「その時には、大義名分が整っています。エンヴァ王の罪状が、民の前で明らかになっている」


ヴァリウス兄上は黙って俺を見つめていた。


やがて、ふっと笑った。


「いいだろう」


「兄上」


「お前のやり方は分からん。だが、お前が『できる』と言うなら、信じてやる」


ヴァリウス兄上は立ち上がった。


「閃光が上がったら、俺が突入する。それでいいな?」


「はい」


「リアン、布と食料はお前が手配しろ。文書もだ」


「分かっている」


リアン兄上も立ち上がった。


「アレン。文書の内容は任せていいか?」


「はい。下書きをお渡しします」


「よし」


二人が部屋を出ていく。


扉が閉まった後、俺は一人で息を吐いた。


「……さて」


俺は立ち上がった。


「準備を始めるか」


***


一週間後。


俺は再びエンヴァに入った。


リアン兄上の名代として、物資支援の使者という名目だ。


「シンラ第二王子リアン殿下より、友好の印として物資をお届けいたしました」


エンヴァ王は玉座から俺を見下ろした。


太った男だった。

目が濁っている。

脂ぎった顔に、薄ら笑いを浮かべている。


「ほう。シンラが友好を申し出るとはな」


「民が困窮していると聞きました。リアン殿下は心を痛めておられます」


「殊勝なことだ」


王は文書を手に取った。


「これに署名すればいいのだな」


「はい。友好条約の証として」


王は羽ペンを取り、署名した。


何の疑いもなく。


——かかった。


「ありがたい。シンラとは末永く友好を——」


俺は頭を下げながら、文書を受け取った。


これで、一つ目の準備は整った。


***


翌日から、街の中で準備を進めた。


「シンラからの友好の祝いとして、祭りを開催いたします」


民衆に向けて宣言した。


「広場に舞台を作ります。当日は物資の配給も行います」


歓声が上がった。


困窮した民にとって、食料は何より嬉しい。


祭りの準備という名目で、俺たちは動いた。


広場の周囲に白い布を張った。

テントを建てた。

必要な道具を運び込んだ。


誰も怪しまない。

祭りの飾りだと思っている。


***


三日後。


準備が整った。


問題は、密会のタイミングだ。


セレナは「分からない」と言っていた。

急に呼び出されて、気づいたら終わっている、と。


待っていても、いつ来るか分からない。

だが、こちらから仕掛けることはできる。


——運命点を15点使う。


【運命点消費:15点】

【残運命点:400 → 385】


明日の夜、王と探究が会うように。

こちらの準備が整ったタイミングで、密会が起きるように。


因果を、捻じ曲げる。


***


当日。夕方。


広場には人が集まり始めていた。


「物資の配給は夜からだってよ」


「祭りって何やるんだろうな」


期待と不安が入り混じった声。


俺はテントの中で、最後の確認をしていた。


サリが入ってきた。


「殿下。探究が東塔に入りました」


「王は?」


「向かっています」


——始まる。


俺はテントを出た。


***


夜。


広場は人で埋め尽くされていた。


食料を求める民。

祭りを楽しみにしている子供たち。

何が起きるのか、興味津々で見守る大人たち。


俺は広場の中央に立った。


深呼吸する。


——運命点を45点使う。


【運命点消費:45点】

【残運命点:385 → 340】


本来なら、この距離では光が散乱して像がぼやける。

でも、今夜だけは物理法則をねじ曲げてでも、真実を届ける。


風よ、止まれ。

雲よ、晴れろ。

空気よ、澄み渡れ。

光よ、一寸の乱れもなく真っ直ぐに届け。


目を開けた。


風が止んだ。

雲が切れた。

西の空から、夕日の最後の光が差し込んだ。


——完璧だ。


俺は両手を広げた。


「皆、聞いてくれ!」


民衆が注目する。


俺は懐から粉末を取り出した。


空中に撒く。

松明を突き出す。


ボッ——!


火蜥蜴の息吹。


炎が夜空に舞い上がった。


歓声が上がる。


「あの芸人だ!」

「不思議な魔法使いが戻ってきた!」


俺は声を張り上げた。


「約束通り、とっておきを見せてやる!」


民衆が沸いた。


「今夜、夜空に絵を描く! 誰も見たことのない、最高の芸だ!」


期待に満ちた目が、俺に集まる。


——さあ。


俺はテントに向かって歩いた。


「サリ、セレナに合図を」


「承知しました」


サリが闇に消えた。


俺はテントの中に入った。


道具が並んでいる。

ガラス板。薬品。石灰。石炭。


全ての準備は整っている。


「……始めよう」

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