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【完結保証】科学で興す異世界国家~理不尽に死んだ技術者が、科学と運命点で優秀な兄たちを超えて七カ国を統べ、滅びの未来を書き換える建国譚~  作者: Lihito


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10話:運命点獲得

約束の期日。


雪深い街道を、重厚な荷馬車列が進んでいく。

荷台には、改良炉で精製された純度の高い鋼鉄の短剣100本と、大量のコークス燃料が積まれている。


北壁砦に到着すると、辺境伯ゼクスが腕を組んで待ち構えていた。


その背後には、数十人の兵士たち。皆、期待と不安の入り混じった目でこちらを見ている。


「……来たか」


ゼクスは荷台に歩み寄り、積まれた短剣の一本を無造作に抜き放った。


飾り気のない、黒ずんだ鉄の刃。


「見た目は変わらんな」


「中身が違う」


俺が答えると、ゼクスは鼻を鳴らした。


彼は短剣を試し切りもせず、指で軽く弾いた。


キィィィン……


澄んだ、長く続く金属音が、冬の空気を震わせた。


ゼクスの眉が動いた。


「……気泡がない。ムラもない」


彼は刃先を陽光にかざし、じっと観察した。そして、腰の自分の剣を抜き、短剣と打ち合わせた。


ガキンッ!


火花が散る。ゼクスの剣には、小さな刃こぼれ。短剣は無傷だった。


背後の兵士たちがざわめいた。


「……俺の剣より硬いな。ミスリルか?」


「いや、鉄だ。鍛え方が違うだけだ」


「ただの鉄で、この硬度か」


ゼクスは短剣をしばらく眺めていたが、やがてニヤリと笑った。


「見事だ」


その一言で、背後の兵士たちから歓声が上がった。


「これで冬を越せる!」「剣が折れる心配がなくなるぞ!」


ゼクスは騒ぐ部下たちを手で制し、俺に向き直った。


「約束通り、エンヴァ国境守備隊はアレン殿下を支持する。この冬、兵たちが凍えず、武器の心配なく戦えるのは、あんたのおかげだ」


ゼクスは重厚な誓約書にサインし、俺に手渡した。


その瞬間——


【運命点獲得:+15】

【現在の運命点:425 → 440】

【獲得理由:国内有力武力派閥との同盟締結】


(……ん? 運命点が増えた? 消費じゃなくて獲得?)


意識の中で、確かに数値が増加している。


(あぁ、そういう仕様もあるのか。勢力拡大で運命点が入る……これはうれしい誤算だ)


俺は誓約書を受け取った。


これで、国内最強の武力派閥の一つが後ろ盾となった。


「さて、殿下。約束の『紹介』だが」


ゼクスは執務机の引き出しから、一通の封蝋された手紙を取り出した。


宛名には、セバスが以前「攻略ターゲット」として挙げていた名がある。


『中央領主・フェルゼン侯爵』


「こいつは俺の古い戦友でな」


ゼクスは椅子にどっかりと座り、懐かしむような目をした。


「若い頃は一緒に戦場を駆けた。俺が前線で暴れて、あいつが後方で策を練る。良いコンビだった」


「今は引退されたと聞いているが」


「ああ。10年前に爵位を息子に譲って、隠居生活だ。だが、貴族会議への影響力は健在でな。中央の連中は今でもあいつの顔色を窺っている」


ゼクスは苦笑した。


「問題は、最近どうにも元気がないことだ。手紙の内容が年々暗くなっている」


「暗い?」


「食が細くなったとか、何を食べても味がしないとか、そんな愚痴ばかりだ。医者に診せても異常なし。『もう歳だ、食べる楽しみもなくなった』とこぼしていた」


ゼクスは肩をすくめた。


「美食家で有名な男だったんだがな。王都の一流料理人を呼び寄せても、首を振るばかりらしい。『驚きがない』とか言ってな」


(……なるほど。美食家が「驚き」を求めている、か)


俺の脳裏に、アルカスの畑で育つジャガイモの姿が浮かんだ。


この世界に存在しない作物。誰も食べたことのない味。


「ジャガイモ」という驚きを、あの老貴族に届けられるかもしれない。


「あんたの所の芋とやら、こいつに食わせてやれ」


ゼクスは俺の考えを見透かしたように言った。


「俺からの紹介状も入れておいた。こいつを味方につければ、貴族会議であんたの立場は盤石になる」


ゼクスは手紙を俺に押し付けた。


「期待してるぞ、小僧。……いや、殿下」


「ああ、任せろ」


俺は紹介状を懐にしまった。


北の武力は手に入れた。次は中央の政治力だ。


***


帰路の馬車の中で、俺は思考を巡らせていた。


(+15か。勢力拡大で稼げるなら、節約ばかりではなく多少使っていけそうだな)


セバスが向かいの席から口を開いた。


「殿下、次の一手はフェルゼン侯爵への接触でございますな。しかし、その前に——」


「ああ、分かってる」


俺は窓の外を眺めながら答えた。


「バーゴだろう?」


「御意。ベルン子爵は現在、殿下を恐れつつも、明確な傘下には入っておりません。今のうちに取り込んでおくべきかと」


「同感だ。恐怖だけじゃ長続きしない」


俺は顎に手を当てた。


バーゴは利で動く男だ。利益を共有すれば、裏切る理由がなくなる。


何か餌になるものは——


(……あるじゃないか)


コールタール。コークス製造の副産物である黒いドロドロ。


あれを砂利と混ぜて加熱すれば、泥濘む街道を固い舗装路に変えられる。ベルンとアルカスを結ぶ道が整備されれば、物流は劇的に改善する。


通行税で儲けたいバーゴにとって、これ以上ない甘い話だ。


「セバス、バーゴに書状を送れ。『道路整備への協力要請』という名目で」


セバスは一瞬きょとんとしたが、すぐに目を細めた。


「道路整備……でございますか。何か秘策がおありで?」


「ああ。コークスを作る時に出る副産物が使える。詳しくはアルカスに戻ってから説明する」


「承知いたしました。バーゴは二つ返事で飛びついてくるでしょうな」


セバスは満足げに頷いた。


俺は目を閉じた。


武力の後ろ盾は確保した。次は経済圏の確立。そして政治力。


(王位継承まで、あと2年ちょいか……)


やるべきことは山積みだが、駒は揃いつつある。


俺は揺れる馬車の中で、次なる一手を練り続けた。


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