キラキラ、輝く
「はぁ、はぁ、はっ!」
ガンッ!ダン… ダンダン…
シュートはリングに嫌われた。どうやらリングはかなり彼のことが嫌いらしい。練習すればするほど感覚がズレていっているようだ。思わず座り込む。
「なんで急に全然… スランプってやつか? んなレベルでもねぇだろ俺…」
ふんっ!と気合いを入れて立ち上がり、そしてボールを拾ってドリブル。仮想敵をフェイントで抜いて、立ちふさがるディフェンスをフェイダウェイシュート。
ガンッ!
「はぁ…」
再び座り込む。今度は立ち上がれない。
「お?やっぱりいたわ。おーっす」
「………おぅ」
落ち込む少年に笑顔で声をかける少年。同じバスケ部の二人。仲は悪いわけではない。が、性格は真逆と言ってもいい。だから誰にでも明るく接する彼、山田のことが苦手だった。山田はというと、むしろいつも真面目で一生懸命な山村のことを尊敬すらしているまである。
「練習、休みだって言われたべ」
「休んでらんねー」
「いや、んでもさ」
「こんな状態で、休んでる場合じゃねぇだろ」
「いや、んでも」
「ほっといてくれよ。お前、どうせ悩みなんてねぇだろ。俺の気持ちなんてわかんねえだろが」
いつもの口論。だったのだが、今日は虫の居所がよっぽど悪かったらしい。山村が余計な一言を放つ。シュートは外すのに、この言葉は見事に山田の胸に届いたようだ。
「あ~」
山田が頭をポリポリとかく。
「あ、その、悪い」
ばつが悪そうに謝罪する。それはそうだ。心配してくれているチームメイトに言う言葉ではない。
「あ、いや~やっぱそう見える?」
「え?あ?悩み無さそう?」
「うん、それ」
「あ~… うん。無さそう」
「やっぱりかー」
風向きが変わった。
「え?何?」
「前にも言われたことあってさ。ちょっとショックだったんよ。まだ言われるかー」
「言われてたのかよ。じゃあ、あるの?悩み」
「うーん… 悩みが無いことが悩み?」
「おい!」
おい!
「いや、じゃなくて。えーっとな、俺だっていろいろあるんよ? テストの点も低かったし、筋トレやっても筋肉つかないし、チームの雰囲気を良くしようって、けっこう頑張ってキャラ作ってんだよこれ」
「え?作ったキャラなのそれ?素じゃねえの?」
「悩んでる暇があったら考えて動く!がモットー! をやってるうちに考え無しの陽キャって浸透した。だから悩みが無さそうって言われることが悩み」
「あぁ…」
気づかれない努力。それを嘆くのも仕方ない。まだまだ少年なのだ。それでいいと思えるほど心は成長しきってはいない。気づかれても周囲が気を遣いそうだから仕方ないと言えば仕方ない。
「逆に、お前の悩みって何よ?」
「だから~シュート全然入んねぇの! スランプ?」
「いやいや~」
「じゃねえよ!バカにしてんのか?」
そう怒られても仕方ない返しだ。陽キャを演じるにも程度がある。が気持ちはわからなくもない。
「スランプのわけないっしょ。てか、練習休みの理由、覚えてる?」
「え?え~っと… そういえば何でだっけ?」
「お前、真面目なのに抜けてるとこあるよな」
「うっせ!で、何でだっけ?」
山田がリングを指差す。
「リング、歪んでるから。業者が来て直してくれるまで休み。変な感覚ついたらダメだから。基礎練だけしっかりやっとけ。ばーい監督」
「………あ」
そういう大事なこと、聞き流してしまう体質はいい加減に治してほしいものだ。リングと一緒に治してもらえ。
「なんか、ごめん」
「ん~?違うべ~」
「あ~… ん~… その、ありがとな」
「おう!」
山田が満面の笑み。さすがの山村もつられて笑う。
どうやら二人で基礎練に行くようだ。仕方ない。この二本のスポドリは二人のアツい友情に捧げてやるとするか。
「まったく、青春真っ盛りか!キラキラ輝きやがって」
私は二人に向かって走る。
「うぉーい山田村!」
「お、ジャーマネ~」
「まとめて呼ぶなっての」
「うっせ!ほれ」
「お?サンキュー」
「どした?」
「いーからもらっとけ。そしてさっさと片づけろ!」
「まったく。青春真っ盛りかあいつら」
監督は嬉しさ半分、呆れ半分。車のキーをくるくる回し帰路につく。




