終わりの約束
二作目です。終末の世界観を作りたくて書いたのですが、時間と俺の想像力が無さすぎて浅くなってしまいました。一つ前の作品よりも短いので読みやすいとは思います。よかったら一読お願いします。
終末の日が訪れた。
ニュースでは太陽の公転軌道がずれたとかなんとかなどと言っていたが、世界が今日終わるという現実を認識した直前に、何も耳に入らなくなった。少年は壊れた機械のように、何を考えるわけでもなく、どこにいくわけでもなく、呆然としたまま道を歩いていた。街中を見渡すと、店の窓ガラスを割ったり商品を盗んだりする破壊行為を堂々と行っている者、誰に向けてしゃべっているのかもわからずに大声で謎の演説をしている者、愛人同士なのか二人で抱きしめ合い涙を流している者。世界が終わる日の光景にふさわしいものとなっていた。地球滅亡の日にやる事が人それぞれで違うことに少年は他人事のように不思議だなと思った。
なんでものを壊したり盗んだりするんだろう。いまさら悪事を働いても、それで手に入れたものも快感ももうすぐ消えて無くなってしまうのに。
なんで自分の気持ちを赤裸々に告白しているんだろう。誰かに気持ちを伝えようとしても、誰にも聞こえなくなるのに。
なんで抱きしめあっているんだろう。直接的な愛情表現を最後にしたところで、それすらも塵と化すのに。
そう、全部、無くなっちゃうんだ。だったらもう、何も考えずに、死を迎えた方が……。
世界が終わる実感が持てないまま、少年は通っている高校に辿り着いてしまった。
なんで学校なのかと自問自答していると、
「♪〜〜」
学校から音が響いてきた。すると少年はまるで蜜に吸い寄せられた昆虫のようにその音色に引き寄せられていた。音のする方向へ向かうと、音楽室に着いた。ドアを開けると、一人の少女がピアノを弾いていた。なんの曲を弾いているのかわからなかったが、少年は無意識に美しいと思ってしまった。
少女がピアノを弾き終わると、少年は思わず尋ねた。
「なんでピアノを弾いているの?」
少女は少年の存在に気づき、一瞬驚愕したが、すぐに笑みを浮かべて言った。
「さあ、なんでだろうね」
少女はおかしいとばかりに笑った。
「もしかしたら、私という存在を、音楽を通して少しでもこの世界に刻み込みたいからかな?」
少年は疑問に思った。
「誰も聞いてないのに?」
「君が聞いてくれてるじゃない」
少年は惹かれた。世界から人も、建物も、本も、音も消えてしまう今日に、この世界で生きた証を残そうとする少女の生き様に。
「……すごいなあ。僕には思いつくことすらできないな。第一、僕に生きた証を残そうって思えるほど誇れる人生を歩んでないしなあ」
少年が落ち込んでいると、少女はある提案をした。
「それじゃあさ、一緒に音楽奏でようよ」
「え?」
「今までの人生に自信が持てないんだったらさ、今、この瞬間を誇れるようになろうよ」
その言葉が少年の心に深く突き刺さった。それから少年は歌を歌い、少女はピアノを弾きあった。拙い歌声だった少年も、少女とメロディーを奏でていくと、不思議と楽しくなり、いつの間にか世界が終わることなど忘れて歌い続けた。
「はー楽しかったー」
少女は満足したかのように仰向けに倒れた。少年も満足していた。こんなに心の底から楽しめたのは久々だった。
すると突然、大きな地響きが鳴った。
ハッとびっくりした二人は窓の外を見上げた。
太陽が目の前にいた。空が赤色に染まっていた。
「……そっか。世界、終わっちゃうんだ」
少女はどこか寂しそうに呟いた。それに感化されて、少年は本音を呟いた。
「……死にたくないなあ」
少年は気づけば涙を流していた。まだ生きたい、まだこの世界でやり残した事がたくさんあるんだ。そう心で叫んだ少年の手を、少女は握った
「もし私たちが生まれ変わったら、やり残したこと全部やろう。またいっしょに演奏しよう」
少女も涙を浮かべながら、そして微笑みながら言った。
「……ああ、必ず」
二人は約束を交わした。世界から何もかもがなくなってしまったその日に。
世界が終末を迎える光景は、絶望でもあり、美しくもあった。
終
読んでいただきありがとうございました。終末のエモい雰囲気をミリ単位でも感じ取っていただけたら嬉しいです。




