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世直しRTA 僕を裏切者というならば。

作者: sirosugi
掲載日:2025/12/23

勢いで論破するざまあ展開を書きたくなったので。

 PM7:00

 国の重鎮たちが集まる夜会の場で、僕こと、第二王子リザバは、兄であり王太子であるプローブの国王就任を祝うはずだった。父である先代国王が亡くなり約一年。王弟であるリグル叔父上の助けを借りながら国の政ごとをなんとか継続させて一年。喪が明けたことを記念する今日、この場でプローブは正式に王冠をいただくことになる。

「めでたき席なのだが、その前に国の膿をだしておく必要がある。」

 豪華な衣装とマントを着て、謁見の間に現れたプローブは、もう王になったかのように堂々と中央へと歩き、家臣筆頭として膝をつく僕の前に立った。

 先王と同じ色である金髪と青い瞳と甘い顔と堂々とした姿。その姿を見ればだれもが王としての威厳を感じる。

 馬子にも衣裳。馬鹿にも王冠といったところだ。

「なんと立派な御姿か。」

「これで今後も安心ですな。」

「それに対して、リザバ様は・・・。同じ王族だというのに。」

 ひそひそと聞こえる口がさない声。

 思えば昔からそうだった。5つ上の兄であるプローブは、自分が王になることを疑わず、自分が世界で一番、賢く強いと思い込んでいた。そして、自分の判断こそが正義と疑わない。

 そういった姿勢は率いられる側としては正しく、頼もしく見えるだろう。

「リザバ、この裏切者め。」

 だから、この言葉も本心からの言葉だろう。何も知らなければ、僕だって呑まれて、自分が何をしたか、必死に頭を働かせていただろう。

「なんのことですか、兄上?」

 だが、今日は違う。このくそ野郎に日頃の鬱憤をぶつける日だ。

「なんと、自覚なしか。この裏切者め。王族でありながら、遊びと女におぼれ、国庫の金を持ち出したのだろう?」

「はっ?」

 今、聞きましたとばかり驚いたフリをしてやると、プローブはペラペラとしゃべりだす。

「父上が亡くなってから一年、皆が喪に服しつつも国を立て直すために奔走しているというのに、貴様ときたら、己の職務を笠に着て私腹を肥やし、毎晩の放蕩三昧、挙句、足りぬ分は、国庫の金を持ち出したというではないか。それに、貴様がわが妃と内通しているという証拠も宮廷長がつかんでおる。まったく嘆かわしい、これを恥と、膿と言わずとしてなんとする。」

 要するに、俺は毎晩、遊び惚けて、その金を国庫から持ち出した。おまけに義姉上である王妃と内通、つまり浮気をしていると。

 この内容を理解できた人間はいただろうか?酒でも入っているのか呂律の怪しいプローブの声は低く、活舌が悪い、おかげでピンポイントで、国庫の金とか、内通なんて言葉だけが場内に響いて、周囲は余計に混乱する。

 あれだ、横領のニュースなどを聞いて、当事者が全員悪者と勘違いするそんな現象が、何も知らぬ来賓の方々に起きている。

「この裏切者が。」

 そして、その流れにのってこちらに罪を擦り付けようとするプローブとその影でニヤニヤと笑っている兄の側近たち。愚かな兄にここまでの絵は描けない、おそらくは、彼らの入れ知恵だろう。

 しかし、これはひどい。毎晩の放蕩三昧?妃と内通?

 ふざけるな、こちとら、お前の不始末の尻ぬぐいのせいで、この一年、まともな睡眠もとれてないってのに。

「世迷い事を。それは、アンタだろう。」

 もうひどすぎて、普段の口調を守ることはできなかった。

「な、なまい。」

「毎晩、商売女を大量に王城に招いて宴会騒ぎをしていたのは、アンタだろうが、それで請求書は僕の名前にして、支払いは部下任せ、だから自分は関係ないってか?」

「うっ。」

 そう、この兄は、見た目こそいいが、ダメ男だ。

 とくに先王と王妃様が病に倒れられてからは叱る相手がいなくなり、遊び三昧、おふざけ三昧。それで溜まった遊びのために、国庫の2割が吹き飛んだ。

 2割ってなに? どんなことしたら2年分の財政を吹っ飛ばせるの?

「何を言っている、それはお前だろ。」

「お前が働かないから、そんな暇、1分だってなかったわ、こっちは。」


 自体の重さが発覚したのは、悪徳な高利貸しの商人による契約書だった。

 豪胆にもその商人は、執務と戴冠式の準備でくそ忙しいタイミングで僕の元を訪ねて、借りたものをお返しくださいと慇懃無礼に言ってきた。

 とりなえずその場にいた全員でタコ殴りした上で、契約書を確認すれば、プローブの多額の借金とその利息、その担保にされていた国庫の金だということが発覚した。しかもこの商人は口八丁でプローブを騙していたらしく、金利がおかしく、本来ならば国庫の2割程度だった借金が5割ほどにまで膨れ上がっていた。最終的に僕に押し付けるつもりだったらしく、契約書もろくに読んでなかったのだろう。

 仕方ないので、お金は国庫から払いました。

 国庫から金を持ち出すのは仕方ない。どんな形であれ、契約は契約。払えないと突っぱねるというのは、王族であっても許されないのだ。

「ただ、契約書の名前に勝手に僕の名前を使ってんじゃねえよ。」

 正確には連帯保証人が僕の名前になっていた。見栄を気にするプローブは放蕩の支払は自分のポケットマネーで支払ったと周囲には説明し、その実は経費の使い込み、足りない分は僕に押し付けようとしたのだ。

「し、しかたないだろ、俺の小遣いじゃ。」

「小遣いじゃえよ。王族の生活は内廷費っていうんだよ、生活のためであってお小遣いじゃねえ。」

 そう言って僕は、兄の後ろで蒼い顔をしている、宮内庁のトップを睨む。

「お前がちゃんと説明しないからだからな。」

「ひ、申し訳ありません。」

 王族というだけで金が自由に使えるというわけではない。貴族の場合は、与えられた役職による給料や、領地運営、あるいは商売をすることで、資金を蓄える。しかし、王族は違う。

 王はその職務に専念するために副業は許されない。だから、王族の生活は税金によって賄われ、その管理のために宮内庁という組織と役割がある。

 彼らの仕事は、予算内で王族の生活を保障し、なおかつその権威を落とさないことだ。

 だが、あろうことか、宮内庁のトップはプローブの乳兄弟で、腰巾着のお坊ちゃん。立場を悪用して他の王族の内廷費まで使い込んで、プローブの贅沢な生活を支えていた。

「し、しかし、妃たちから、不満は。」

「それは僕がずっと補填してたからね。」

 僕は成人してからは、独立して王族ではない。その立場を利用して、摂政兼外交官兼経理係と色んな役職を掛け持ちし、その給料をもとに、資金運用したり事業を興して資金を増やし、そこから義姉上など離宮の人々の生活や、他の親族の援助などを行ってきた。

 それは、先王亡き後、本来ならば、王太子であるプローブが内定費を使って取り仕切るべきことだ。だが、この馬鹿にそんな甲斐性も知恵もない。宮廷長に丸投げして、その宮廷長も立場を笠にきて槍大砲だったわけだ。

 妃というのは、王族よりもつらい立場だ。次代の子を産むことを第一、王族の権威を保つことを第二にするために、結婚後は離宮に移り住み、外交以外ではそこから出ることは叶わない。籠の鳥とする代わりにその生活と人権は国が保証する。だというのに。

「なにが、実家からの仕送りがあるから、内廷費は不要だ。ふざけてんのか、不義理なのはどっちだ。答えろ、宮廷長。」

「い、いえ、そんなことは。」

 俺の言葉を否定する宮廷長だが、その時点で何人もの重鎮たちが彼を冷たい目で見ていることに気づき、顔が青ざめる。その視線の多くは、彼がどや顔で内廷費が足りないからと、金の無心へ行った相手だった。姫として、働き手として娘を送り出した重鎮たちか支度金を持たせることはあるし、仕送りをすることもある。

 だが、その身を預かる以上、彼女たちの生活を支えるのは王家の義務だ。だというのに、宮廷長と国王はそれを着服し、使い込んだのだ。その事実は、事前に周知してあるので、親族の怒りは本物である。

「お前がどや顔で、僕に進言してきたことは、書面でも動画でもきっちり残してあるけど、なんならここでお披露目しようか。」

「ひ、ひひいいいいい。申し訳ありません。」

 もはや息も絶え絶えになりがなら宮廷長は土下座して、もはやこちらを見ようとしなかった。右腕ともいえる男のその行動に、プローブは少しひるむが、ふてぶてしい態度は変わらない。

「そう、それだ。お前は妃たちに金銭を与え、不義理をしていたんだろ。」

「んなわけ、あるかー。王宮の兵士なめてんのかー。」

 無駄に伝統を重んじるこの国は、血の重さを重んじる。プローブの女遊びも高貴な血を残すためと公務扱いで経費が落ちるというほどだ。だからこそ、離宮に入った王妃と側妃たちは貞淑であることが求めれ、その生活は徹底的に監視され、王子である僕ですら離宮に入る際は、厳しいボディチェックを受けた上で、常に5人以上に監視される。

 それだけ厳しいし、それだけ誇りをもっているし、離宮の警備兵や女官たちは強い。

「殿下は、我らの仕事を疑われるのか。」

「い、いや、そんなわけ。」

 プローブが己の失言に気づいたときにはもう遅い。戴冠式という晴れ舞台に訪れていた妃たちとその親族、彼らを見守っていた離宮の女官。全員が怖い顔をしてプローブを睨みつけていた。

 戴冠式の場で、あえて殿下って言ったあたり、女官長様が激おこだ。

「誓って申し上げますが、リザバ様は不貞など行っておりません。それどころか、国王様が亡くなられてからのこの一年、離宮を訪れたのは、昨日のただ一日のみ、それも昼間の顔を合わせた程度です。」

 その点は申し訳ないとも思う。喪に服すという関係上、離宮では質素な生活をするのが慣例であったし、僕も忙しかった。僕からの支援を使って離宮を維持してくれら女官長たちにはホント感謝だ。

「宮廷長とブローブ様は、離宮の調度品や装飾品を持ち出されていたようですが。」

 はい、横領罪と盗難も追加で。

「証拠、証拠があるのか?こんなのはお前や宮廷長やオクマたちが仕掛けた謀略じゃないか。不敬罪だ、反逆だ。衛兵たちよ、この者たちの首をはねよ。」

 これだけ事実を並べたというのに、まだ己の非を認めないプローブ。だが、腐っても王太子であり、その権限は存在し、その命令は絶対だ。

 衛兵たちは疑念を浮かべながらもその職務を全うしなければならない。

「証拠?そんなに見たいならな見せてやるよ。」

 素直に認めて隠居宣言でもすればまだ救いがあったのに。

 僕は用意していた宝玉の一つを掲げる。そうすると、広間にでかでかと一枚書類が投影される。

「こ、これは。」

「借用書、しかもプローブさまのサインが。」

「ちょっとまで、あれは王印ではないか?」

 精密でありながら分かりやすいシンボルのマーク。特殊な魔法により王族か許可を得たものしか使えない王印が押された書類。その内容は国王の言葉と扱われる。

「な、なあ。」

「相手の商人がどや顔でみせてくれたよ。」

 それがどんな形であれ、王印を使った契約をしたのなら商人にとっては最大の名誉と信頼である。内容をぼかしつつその書類を見せて自慢する商人は多い。

 しかも内容は金貸し。王家に貸しがあるなんてものは、下手な利権よりもすごいことだ。

「おいそれと、国庫の中身を担保にしてんじゃねえよ。」

 だが問題はその日付だ、まだ王になっていないプローブは王印を持ち出すことはできても、使うことは許されない。おまけに借金の担保は国庫の中身、血税である。

「相手方への返済金は、国庫の一部を使わせてもらった。利子も馬鹿みたいに膨らんでいたから、お前の負債で国庫の半分が消えたぞ。」

「はあ、何やってるんだお前。」

「「「何やってるは、こっちのセリフだわ。」」」

 不当でも契約は契約。違法取引やらなんやらで、商人を絞り上げることは可能かもしれないが、まずは目の前のプローブを絞り上げないといけない。

「ふざけるな、こ、こんなものはしらん。王印を偽造した不届き者がいるんだ。」

 この後に応じてプローブはまだ否定する。ただもう勝ち目はないとわかったのか、俺に責任を押し付けるのはあきらめたらしい。


 今更許されないけどね。


「おのれ、私の名をかたって悪さをしたのか、ならば宮廷長と商人や関係者を処刑せねば。」

 トカゲのしっぽ切り。言われた宮廷長とわが物顔で出席してた御用商人たちの顔があからさまに青ざめる。

「プローブ様。それはあんまりです。」

「我々がどれほど。」

「うるさいうるさい。すべてお前たちが勝手にやったことだ。それとしらずに贅沢をしたのは反省するが、貴様らのような膿こそ、消してやる。」

 どの口が言うのか、それでも王子であるプローブの言葉は正義であり、嘘も真実となってしまう。このまま奴が証拠をもみ消せと言うならば、我々は従うしかない。

 

 まあ、それも対策済みなんですけどね。


「その真偽については、私が保証しましょう。その書類と、返金については、今朝、私の前で問行われたものです。」

「教皇猊下?」

 低いのによく通る声に、一同が首をかしげる。その間に堂々と広間に姿を現したのは、この国の国教である精霊教のトップである教皇様だった。

「なぜ、ここに?」

「知れたこと、戴冠式は精霊と我々の見守る中で行われることですから、当然出席していますが。」

 王とは、精霊に認められたリーダーである。だからこそ精霊教の教皇によって、王冠をいただいてこそ、プローブは王となる。だが、精霊教は複数の国で信仰されており、平等さを保つために、教皇が戴冠式を執り行うことはなく、委任された枢機卿と呼ばれる幹部が行うことことが慣例だ。その枢機卿もプロープの側近たちが金で味方に引き入れていたが、教皇様がいる以上、それも通じない。

「この度は、リサバ様の働きかけにより、私は立ち合い人として出席させていただいております。招待状は、プローブ殿の名前でしたが、恐れ多くも、リサバ殿が直接届けてくださいましたよ。」

「な、なな。」

 うん、そうだよね。この式典の準備すら僕と一部の善良な官僚たちに丸投げだったよね、お前。

 まさか、来賓名簿の確認すら適当だったとは。少なくとも教皇様が来訪されると知っていたら、宮廷長あたりがもう少し慎重に動いていただろうに。

 政教分離の原則に基づき、精霊教は政治に関わらない。だが、この場において、もっとも言葉が重いのは教皇様だ。これを否定するということは、精霊教の否定、つまりは自分の王冠を否定することになってしまう。プロープは黙るしかない。

「早朝の礼拝の場で、この返金の取引は私の目の前で行われました。これにより最悪の事態はさけられましたが、プローブ殿が、王印を持ち出して契約をし、国庫を明け渡そうしたのは事実です。」

 これで詰みだ。

 教皇様の言葉と、投影された書類、もちろん原本は僕が確保している。このためにわざわざ商人を引き連れて教皇様の前で返金をおこなった。本来ならば借金というのは恥であり、隠蔽したがるものだ。商人も僕がそこまで大胆に暴露するとは思っていなかったらしく、教皇様を前に青ざめていた。なお大金を手に入れた後は、いきなり僕の元を訪れたことによる公務執行妨害でその身を勾留、本来は許されたない王族との無許可の取引など余罪を引っ張り出している最中です。


 まあ、それはともかくとして。


「プローブ、王になる立場でありながら勝手な振る舞い。これは国民と国への重大な裏切りだ。お前こそ、国の膿だ。」

 その宣言に返す言い訳をプローブは持っていなかった。


 プロープとその仲間たちが衛兵たちに連れていかれていかれる中、僕が真っ先にしたことは、義姉上とともに教皇様へ詫びることでした。

「「教皇様、このたびはお手数をおかけしてしまい大変、申し訳ありません。」」

「いえいえ、こちらとしても不心得者をあぶりだすことができたので、助かりました。」

 精霊教は、権力とは不可侵で、人々の健やかな生活と死後の安寧を図る宗教だ。孤児の保護や農地の開拓、結婚などの儀式を取り仕切る組織である。国のためであったとはいえ、それを私的に使ったことはほめられたことではない。それでも、プローブを排除するためには徹底的にする必要があった。

 他にも各所へ謝罪をして、責任を取る必要があるが、まずが教皇様へだ。

「それで、これからリザバ殿はどうするおつもりですか?」

「はい、かねてより考えていたことがあります。」

 先ほども言ったように、教皇様の前での宣言は、世界を見守る精霊への誓いであり後になって無しにすることはできない。義姉上が、プローブ以外の伴侶を持たず、国のために尽くすと誓ったように・・・。

「私は、王族としての名を捨てようと思います。」

「ほう。」

 高らかな宣言に周囲がざわつく中、事前に相談していた義姉上は少し寂しそうに、教皇様はおどろきつつも冷静なまま先を促した。

「先のプローブの一件。悪いのはあのくそ兄貴です。ですが、それを今日まで止めなかったのは私の落ち度です。慣例や家族の情、そういったものから、いつかあのクズでもまともなると甘い考えをしていた私にも責任はあります。」

 監督責任、あるいは、見て見ぬふりをしたことへの責任だ。

「だからこそ、私は、王族としての地位を返上し、在野に下ろうと思います。」

 プローブが廃嫡されたなら、順繰りで自分が王太子となって、次期王となることもできる。だが、私達のことを考えて、王弟して国王代理にすらなろうとしなかったリグル叔父上。彼の姿を見ていたのもある。

「リグル殿のように、甥っ子を見守るという道もあると思いますが。」

「いえ、それではだめです。兄の起こしたこの一件はは、我ら兄弟でけじめをつけます。」

「そうですか、アナタが作る国を見てみたかったのですが。」

 残念だと肩をすくめる教皇様だが、僕の決意は固い。

「リグル、今日までありがとうございます。後の事は。」

「義姉上。これよりは遠くから見守らせていただきます。」

 可愛い甥っ子、姪っ子を近くで見守れないのは少し残念に思う。だが、これだけの事態が起きたのだ。

「こればかりは、あの愚物の言葉通りです。国の膿をだしておく必要があります。私は子どもたちの未来のために、これらの因縁を断ち切りたいのです。」

 義姉上はそれ以上は何も言わず、寂しそうに微笑んだ。

 教皇様はそれぞれの表情をじっくりと観察し、その覚悟を理解し、手を叩く。

「では、リザバ殿のその決意、精霊の見守る中、この教皇が聞き届け、記録しておきましょう。これよりはただのリザバとして、生きられよ。」

「・・・はい。」

 厳かに行われる光景に、思わず拍手が生まれた。

「リザバ様。万歳。」「リザバ万歳。」

 まるで、僕が王冠をいただいたような雰囲気だが、これは違う。カーテンコール、終焉を告げる拍手でった。


 ここから先は、厳かなる追放だった。兄であるプローブは法にのっとり死刑。彼に加担していた国の膿は優秀な兵士と裁判官によって余罪を吐かされ関係者は投獄か追放された。

 リザバ王子がその身をもって、守った国をこれ以上好きにさせない。

 固く決意した王城の人たちは、徹底して不正を正した。何人かは己の罪を自白して罪を受け、隠れていた卑怯者はネズミのごとく追い立てられた。

 こうして、王国の闇は払われ、プローブの息子であったプラムが即位するときは、より一層発展していたと、老年になったリグル叔父上は手記に残している。


 まあ、そんなわけないけどね。

「はあ、すっきりした。これでもう憂いなく隠居できる。」

 教皇様の前で宣言という最大のカードを切った僕は、意気揚々と荷物をまとめ、その日のうちに王都を脱出していた。

 引継ぎ?税金、確定申告?知らないね、そんなもの。

「リザバ様、よかったんですか?王都はすごい混乱しているって噂がここまで届いてますけど。」

「いいんじゃないの?義姉上がいるし。」

 食うに困らないだけの私財と、幼馴染で一番信頼できるメイドであるモニカ。それだけをもちだして僕は国境を超え、隣国の小さな村へ隠居していた。

 小さな畑で薬草を育てながら、医者の真似事をしてのんびりと生活している。客はほとんどおらず、晴耕雨読で平穏な日々。これまでの忙しかった反動もあり、余生はダラダラとモニカにお世話をしてもらいながら僕は怠惰に生きることに決めていた。

「いいんでしょうか?」

「義務は果たしたからいいの、それに。」

 いまだに心配そうにしているモニカをそっと抱き寄せて、そのままソファーに倒れこむ。

「きゃー。」

「こうして、堂々とモニカといちゃつけるなら、他に何もいらないから。」

「お、お手柔らかに。」

 うん、王位なんてどうでもいい。愛する女性と一緒に過ごせればそれで幸せ。


 そこだけは、兄と似ている。やっぱり僕は王になるべきじゃなかったんだ。


金の問題は身を亡ぼす?

本当は、根回しから書いていたのでうが、勢いで書いたので展開に荒があり、短編として供養した作品です。

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