孵化
「今度はこちらからも攻めるから、簡単に死んでくれるなよ」
フェルメがそう言い終えると、コナーの足元にモヤが現れ、コナーはフェルメの前へと飛ばされた。
「いらっしゃい!」
フェルメの拳がコナーの顔面を直撃した。顔への攻撃のおかげでダメージはあるものの、深刻な怪我を負うことはなかった。それよりも……。
「……!」
「気づいたかい?拳が当たると同時に闇の魔力で身体能力を低下させた。これで君の速度にも反応できそうだ、と考えていたんだが……もう立ち上がらないつもりかい?」
勝ち目がない。満身創痍とはいえ、これまでの戦いを生き抜いてきたコナーたちは決して弱くはない。だが、一方的にやられているにも関わらずフェルメが本気を出しているようには見えない。
「つまらないな……やはり現実はゲームのようにはいかないものだな。これで終いにしよう。」
フェルメが上に手を掲げると、吸い込まれてしまいそうなほど黒い、無数の小さな玉が現れた。
「この技の名は【黒珠】。触れたもの全てを呑み込む漆黒の珠。弱点は光……だが人間程度の光量で消すことができるかな?」
(避ける!?いや黒いモヤを使ってワープするかもだろ!だったら……)
フェルメの言葉で、各々が自身の光の魔力を全て放出した。光はコナーたちが目を開けていられないほどの光量となったが【黒珠】を消すには至らなかった
「やはりこの程度か」
フェルメの言葉に全員が死を覚悟した瞬間。コナーたちの耳に激しい轟音が鳴り響いた。
「なん……だと……」
コナーたちは激しい轟音とフェルメの声にに思わず光の魔力の放出を辞め目を開いた。すると、そこには天井に空いた大きな穴と焼け焦げた床に膝をつくフェルメの姿があった。
「コナーくん……君が?」
コナーは首を横に振った。コナーの体にこの規模の落雷を落とす魔力は残っていない。
「そうか……見逃していた……この戦いに参加していたもう一匹の存在を……!」
フェルメの言葉に反応するようにコナーの首元から一匹のトカゲが現れた。
「お前が……やったのか?」
コナーがそう言うとトカゲは傷口を舐めた。
(まさか……このタイミングとは!コナー、儂に主導権をよこせ!安心しろこれが最後の交代だ!)
(どういう……)
(話は後だ!早くしろ!)
コナーは言われるがままチャクに体の主導権を譲った。
「……おやおや、チャクさんじゃないですか。今更出てきても、その体に魔力は残っていないでしょうに。」
「あぁ、この体にはな」
チャクは指の皮を噛みちぎりトカゲの口の中へと流した。
「……一体何を…………まさか!」
炎の神アハウから貰った石でできたサラマンダーの卵。コナーはドワーフの集落でそれをペンダントにして肌身離さず大事に首から下げていた。
サラマンダーの卵はコナーの魔力を少量づつ吸い上げ緩かに孵化へとむかっていた。そう、コナーの魔力を。つまり、雷の魔力を吸い上げていた、このサラマンダーはコナーと同様にチャクの器になることができる。
「まったくアハウには感謝しなくてはな……」
先程まで小さかったサラマンダーは人の形に変わりコナーたちの前に立っていた。
「ここから反撃開始だ!」




