表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/76

ラスボス



 「まだ終わってないだろ」


 コナーが背後からの声に振り返ると、そこには自分たちとそう変わらない容姿をした何かが立っていた。

 

 「彼とは創作論について語り合ったことがあってね。彼は世界が平和になることこそがハッピーエンド。僕は自分が幸せで終わる物語こそがハッピーエンド。思えば僕に意見をした人間は彼が初めてだった……」


 黙々と語りかけてくる存在が人間ではない……神であることをその場にいる全員が感じ取っていた。その身から漏れ出す闇の魔力に、コナーたちの体は意識せずジリジリと後ろへ下がっていた。


 「さぁ、子供たち。最終バトル、いわばラスボス戦だ!どちらがハッピーエンドへ辿り着くか決着をつけよう!」

 

 こちらの五人はこれまでの戦いで疲労困憊、そして相手は神だ、勝ち目はない。


 (……チャクさんなら勝てますか?)


 (……完全な状態なら可能性はあるが今の状態じゃ時間稼ぎが限度だな。)


 (……それでいいです。)


 コナーはチャクとのやり取りで覚悟を決めた。


 「みんな聞いてくれ!俺が時間を稼ぐから、みんなは……!」


 「逃げろなんて言わないよな?」


 コナーの言葉はヤンに遮られた。


 「そうだよコナー!私たちは逃げない!最後までコナーと戦うよ!」


 「まぁ……本音を言うと逃げたいけどね。でも、逃げるなら全員で、でしょ?」


 クロエとシルヴィが肩を叩く。


 「コナーくん……全員でハッピーエンドを掴み取ろう!」


 ジル王子に背中を押され、コナーは前を向いた。前方には闇の神。後方には助け合える仲間。コナーの進む道は決まった。


 「いいねいいね!そういうのだよ、僕が見たかったのは!僕はアールピージーは好きだけど、最後に主人公が勝利する物語ばかりで嫌になっていたんだ!そういう絆の力?みたいなのに打ち勝ってこそ、僕は僕のハッピーエンドを迎えられる!」


 (RPG?いや、今はそんなことよりも……)


 「……みんなで生きて帰ろう!」


 コナーは半分も残っていない魔力で、【強化魔法】と【魔力循環】を使い、後ろを振り向くことなくフェルメめがけ走った。


 「最初は君か!」


 フェルメの体をヤンの重たい一撃が捉える。


 「思えば、君が一番成長をしたね。だけど!」


 何度かの攻防の後ヤンの体にフェルメの拳がめり込む。


 「ヤン!」


 「【心世一体】の反動で限界みたいだね。いつもよりキレがない。」


 ヤンが回復されることを警戒したのか、ジル王子たちから離れた場所へと吹き飛んでいった。


 「コナーよけて!」


 クロエの声でコナーが横へ飛ぶと、横を巨大な炎の塊が、物凄い熱を放ちながらフェルメへと放たれた。


 「やった!」


 激しい爆音と共にフェルメのいた場所が燃え上がった。


 「クロエとシルヴィ王女、君たちみたいな魔法使いは視力を奪えば無力になる。」


 気づけば爆発した場所にいたはずのフェルメは、クロエとシルヴィの後ろに立ち頭部に手を当てていた。


 「二人を離せ!」


 咄嗟にジル王子が斬りかかろうとするも、二人を盾にされ攻撃をすることができなかった。


 「これでよし」


 フェルメは二人の頭から手を離し、元いた場所へと戻った。


 「クロエくん!シルヴィさん!」


 「ジル王子……そこにいるんですか……」


 「……!こんなものすぐに光の魔力で!」


 ジル王子が二人の瞼に触れ光の魔力を送り浄化を試みた。


 「……どうして戻らない!」


 「君程度の光の魔力で僕の闇の魔力を払えるとでも思ったかい?」


 フェルメはジル王子を嘲笑し鼻で笑った。


 (クロ……シルヴィ。二人の心配は後だ、今は戦いに集中しろ。少ない魔力で、どう戦うか考えろ。)


 コナーは【肉体強化】【魔力循環】で強化された体に一瞬だけ雷の魔力を纏い瞬間的に最速の一撃を放った。


 「【瞬雷】」 


 離れた一撃はフェルメを捉えたが、フェルメの体に傷はなく、コナーの剣だけが折れる結果となった。


 「君の速度は脅威だ。だが、エクレレとの戦闘で対策の仕方は分かった。」 


 コナーは斬られたフェルメの服の下に小さな鱗が体中を覆っているのを確認した。剣が折れてしまったことからエクレレ以上の耐久力があることが伺えた。


 「さっきから、まるで見ていたような物言いですね。」


 時間稼ぎ。万事休すのこの状況、少しでも回復と考える時間が必要と思ったジル王子はフェルメへと質問をなげかけた。


 「僕の魔力を与えたものを通じて実際に見ていたからね。パぺティアは例外だったけど。」


 (いける……このタイプは敵との会話を楽しむ。今は質問をぶつけて少しでも体力を回復させないと)


 「パぺティアが例外とは一体どういう……」


 「そのままの意味さ。彼には魔力を与えていないから、彼が何をしていたか私に把握することはできなかった。だからこそ、コナー・エイベルと二人になった時は驚いたよ。急いでエクレレを向かわせたけどね。」


 コナーは妙にエクレレを敵視していたパぺティアの行動に合点がいった。エクレレはパぺティアの見張り役だったのだ。


 「もう時間稼ぎは充分だろう。さぁ、戦いの続きを始めよう。と言っても君たちは満身創痍のようだが……」


 「待ってください!最後に一つ質問をさせてください。いつから私たちのことを覗いていたのですか?」


 「初めから。人物によっては生まれた時から。」


 「一体どうやって……」


 「さぁね」


 コナーにはフェルメが一瞬クロエの顔を見て小さく笑ったような気がした。


 「さぁ、もういいだろ?再開だ!今度はこちらからも攻めるから簡単に死んでくれるなよ!」


 

 

 

 


 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ