平和
「さぁ、これで邪魔者はいなくなった。話の続きをしよう。」
エクレレがゲートにより飛ばされ、コナーとパぺティアの二人になった【テネーブル】の一室。パぺティアはコナーにした質問に固執していた。
「邪魔者?同じ魔人なら仲間だろ。」
「ん、あぁ。私は魔人ではありませんよ。ほらこの通り。」
パぺティアは仮面を外して素顔をコナーに見せた。コナーの見たパぺティアの顔は、今まで会った他の魔人のように生気がない青白い顔ではなかった。
「……人間なのか?」
「まぁ、人間というよりはエルフや人魚に近い存在ですかね。膨大な闇の魔力に囲まれていたもので長生きなんです。」
「だったら、どうして自分を魔人だなんて嘘を……」
「理由の一つは他の魔人に魔人でないことを悟られないため。もう一つは私という存在が語り継がれる時に人間として語られないため」
「どういうことだ!」
「長くなるので、それは後。今度は君が私の質問に答える番だコナーくん。この世界に君たちが命をかけるほどの価値があると思うか?」
パぺティアは真剣な表情でコナーに問いかけた。
「俺は……そこまでの価値はないと思う。」
「では、魔物の一掃を諦めると?」
「そうは言ってない。ただし、チャク様にこの体は渡さない。何年かけてでも自分の力で魔物をこの世界から一掃する。」
パぺティアはコナーの回答に満足したのか満面の笑みを浮かべた。
「やっぱり、君たちだった……」
パぺティアがそう呟くと同時に、パぺティアの腹部を何者かの右腕が貫いた。
「フェルメ……様。」
パぺティアが床に倒れると右腕は虚空に消えた。
「ハァ……ハァ……ハァ」
息も絶え絶えなパぺティアを上から見下ろしたコナーは、なんとも言えない気持ちになっていた。
「コナーくん……すまない……全ての質問には答えてやれそうにない……」
「……だったら一つだけ答えろ。お前は何をしたかったんだ。」
「何をしたかったか……私は永久的なハッピーエンドの話を作りたかったんだ……それには全ての人間が一つになる必要があり……象徴になる英雄と倒される悪役が必要だった……」
パぺティアは内蔵に溜まった血液を吐き出しながら声を絞り出した。
「きっと永遠は無理かもしれない……けど、魔人を倒すため協力した種族との絆は生まれた……きっと、あの王子様なら平和に繋げてくれるはず……」
「そんなやり方……」
平和のため……戦争を経験したパぺティアとコナーでは、言葉の重さが違う。だからこそ否定の言葉も肯定の言葉も自分が口に出してはいけないとコナーは理解していた。
「すまないコナーくん……最後に一つだけお願いしてもいいかい……」
「…………」
「私にトドメをさしてほしい……私を殺して英雄になってくれコナー・エイベル……」
「………………」
コナーは静かに頷き、剣で首をはねた。
(これでいい……世界にとってのハッピーエンドは悪役にとってバットエンドでなくてはならない……ありがとうコナーくん……君の人生が幸せなハッピーエンドで終わることを願っている……)
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「コナー、大丈夫!?」
クロエたちが階段を上り雷鳴の聞こえた部屋へと入ると、そこにはパぺティアの前に佇むコナーの姿があった。
「……コナーが倒したの?……コナー?」
パぺティアのこれまでの人生を無駄にしないために、コナーはそっとパぺティアの顔に仮面を被せ、クロエたちの元に駆け寄った。
「あぁ……これで終わったよ」
コナーが皆を安心させようと言葉を放つと、どこからともなく若い男の声が部屋に響いた。
「まだ終わってないだろ?」




