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マルク王の妬み



 (ここは一体……)


 時は同じくして、ジル王子も【テネーブル】の中へと移動させられていた。


 「……父 上?父上!」


 ジル王子の視線の先には行方意不明となっていたマルク王の姿があった。


 「………………」


 ジル王子は異変を感じ立ち止まった。


 「……どうしたジル。来てくれないのか?」


  (おかしい……どうして行方意不明になってから二年近く経っているというのに、服は綺麗で体は健康そのものなんだ……)


 「……父上、何があったのですか?ここがどこか教えていただけますか?」


 「…………流石は俺の子だ。勘づいたみたいだな。」


 マルク王の体から闇の魔力が溢れ出し、一瞬で部屋を埋めつくした。


  (これは……今までの、どの魔人よりも!)


 マルク王から溢れ出た闇の魔力は、どんより重く。今まで戦った魔人以上に不快さを感じる魔力だった


 「父上……どうして!」


 ジル王子が剣を抜こうとした瞬間、ジル王子は首を何者かに掴まれ、締めあげられた。


 「ガッ……ッグ……」


 目に見えない手の先に、必死に剣を振り、離させようとするが、首を絞める手が緩むことはなかった。


 「今わかったよジル。私はお前を妬ましく思っていたんだ……」


 父の言葉に反応するように、ジル王子は眩しいほどの光の魔力を解き放った。


 「ケホッ……ゴホ」


 光は部屋に広がった闇の魔力と同時に首を締め上げる見えない手を消し去った。


 (……今の手は父上によるもの。おそらく部屋全体に広げた闇の魔力が関係しているのだろう。)


 ジル王子が冷静に分析をしていると、マルク王は剣を抜きジル王子へと斬りかかった。


 「父上!正気に戻ってください!私はあなたと戦いたくない!」


 余裕をもって攻撃を防いだジル王子はマルク王の説得を試みた。


 「正気か……さっきも言ったはずだジル。私はお前が妬ましい!」


 ジル王子は後ろへと飛び退き疑問をなげかけた。


 「私が……妬ましい?」


 「あぁ、そうだ!私は王になんてなりたくなかった!父の冒険譚のように世界を冒険したかった!」


 偉大で尊敬していた父の口から愚痴がこぼれる。


 「友であるジョゼフやその周りの連中は父の冒険譚に憧れ、ギルドを作り、様々な冒険に出ている。私もそうなると思っていた……だが!私に待っていたのは動けなくなった父の代わりだ!」


 「私が毎日同じように上の人間と頭を悩ませている間、ジョゼフたちが冒険をしていると考えるたび嫌な気持ちになった。だけど!それが王族の運命なのだと我慢していた!」


 マルク王は間違った相手だとわかっていても、溜め込んだ感情をぶつけることを止められなかった。


 「なのに……どうして!どうしてお前は旅に出て冒険しているんだ……!どうして……私じゃなく、お前が!」


 マルク王は再び体から闇の魔力を放出しながらジル王子に攻撃を仕掛けてきた。


 (父上……)


 ジル王子は父の吐露した感情に戸惑いながらも冷静に剣の一撃を受け止めた。


 「……ッ!」


 ジル王子の頭部に激しい衝撃が走った。まるでゲンコツで頭を殴られたような衝撃を受け、ジル王子の防御が一瞬崩れた。その一瞬をマルク王は見逃さなかった。


 「恨んでもらって構わない」


 ジル王子は体を斬りつけられ深手を負ってしまった。


 「魔人や魔物がいなくなれば父のような英雄になる機会は二度と失われる。それだけは絶対にダメだ!」


 マルク王は実の息子に容赦のない追撃を始めた。

 

  


 

 

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