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VS ジャン・バラボー



 【テネーブル】の一室。部屋の中はヤンとジャンの戦闘による轟音に包まれていた。


 「どうしたどうした!息が上がってるぞ!」


 状況はヤンが劣勢のようで。ギリギリで攻撃を捌けてはいるが、それもいつまで続くか分からない。


 「クソッ!」


 ヤンは一度距離をとるため全力で剣を振り抜き、ジャンの剣を大きく弾いた。


 「距離をとるか……それで次はどうする!また【あの技】を使うのか?」 


 【心世一体】回復魔法が使える仲間がいたから気兼ねなく使えていたが、使用後動けなくなるリスクが怖くて、ヤンはこの技を使えずにいた。


 「やるしかないか……」


 ヤンは深く深呼吸を始めた。


 「きたか!」


 ジャンは技の発動を止めるでもなく見守っていた。


 「さぁ、こいヤン!あの日のお前を見せてく……」


 ヤンの神速の剣がジャンの体を吹き飛ばした。剣によるガードをものともしない【心世一体】の攻撃を受けたジャンは笑っていた。


 「それでこそ俺のライバルだ!」


 ジャンはヤンを真似るように深く深呼吸を始めた。それを見たヤンの脳内に嫌な予感がよぎる。


 「……ッ!」


 ジャンが先程までめり込んでいた壁から、破裂音がしたと思うと、ジャンは一瞬でヤンとの距離を詰め折れた剣で鍔迫り合いを始めた。


 「驚いたか?あの日お前に負けてから、見よう見まねでお前達の技を練習したんだ。最初は驚いたよ……これがお前たちの見ていた景色かっ……てな!」


 そう言うと腹に蹴りを入れ、ヤンの体を大きく仰け反らせた。


 ヤンは周囲に言われるまでもなく理解していた自身が凡人であることを。約二年、毎日欠かさす練習をしていても天才とは歩幅が違う。ならばどうするか……。

 

 「なんだ……そっちから攻めて来ないならこっちからいかせてもらうぜ!」


 【心世一体】にはタイムリミットがある。限界を超えて使用すれば自我の崩壊に繋がる可能性がある。ジャンは戦いを早く終わらせようと焦っていた。

 

 「スゥー……ハッ!」


 ヤンはジャンの拳を防ぎ、息を吐くと同時に全魔力を乗せ剣を振りぬいた。


 「……ッグ!どういうことだ!?地力の差で俺の方が強いはず……」


 限界を超えた力による体の崩壊。【心世一体】のリスクについてヤンは常に考えていた。そしてヤンは今、この場で技を進化させた。


 【心世一体】は一度体内の魔力を吐き出し、大気から取り込んだ魔力で生命活動を維持することで発動する。解除後には魔力の喪失による息苦しさと限界を超えたことによる体への負担が使用者を襲う。


 なので、ヤンは体に循環している魔力を呼吸と共に一度に放出した。それにより一撃の威力は増大し、一度【心世一体】が解けることで体への負担を減らすことに成功した。


 (とっさの思いつきが上手くいってよかった……!)


 ヤンは再び大きく息を吸い込み【心世一体】を使用した。


 (どういう原理かは知らねぇが、お互い時間がないんだ……今は全力で攻める!)


 ジャンは【心世一体】を戦闘で使うほどの相手に巡り会えたことがなかった。結果、毎日練習をしていたヤンはジャンとの地力の差を埋めることに成功した。


 ジャンは傷から血が滴り落ちながらヤンへの距離を詰めた。ジャンは剣のリーチの差を埋めるように、空の魔力を使い空気を斬撃に変えて放った。空気の斬撃は通常放たれるものよりも格段に大きく速いスピードでヤンを襲った。


 ヤンはドワーフに貰った魔剣を使い、炎の斬撃を飛ばして、それを相殺した。


 (想定通り!)


 ジャンは低い姿勢のままヤンの懐に飛び込むと、足払いをして、ほんの短い時間地面から足が離れたヤンを天井へと殴り飛ばした。当然、天井の床が耐えられるはずもなくヤンは一つ上の階へと着地することになった。


 「あの一瞬でもガードはしていた。ダメージは大したことないはずだ、どこから来る……」


 ヤンの次の行動に意識を集中していると、大きな衝撃音と共に天井の床がジャンへと降り注いだ。


 (そう来ると思ったよ……ここだろお前がいるのは!)


 ジャンは床が崩れる際の衝撃音を聴き逃してはいなかった。ジャンの拳が瓦礫を吹き飛ばした先には、読み通りヤンの姿があった。


 「これで最後だヤン!」


 ジャンの言葉に覚悟を決めたのか、ヤンは空中で剣を手放し大きく振りかぶった。


 (悪いな……付き合わせちまって。)


 呼応するようにジャンも拳を強く握り、大きく振りかぶった。


 二つの拳が衝突した瞬間、激しい衝撃音が城全体に響き、勝負は決した。


 「トドメは……ささないのか?」


 先程とは打って変わって静かな部屋。瓦礫の中に倒れるジャンの右腕は潰れてしまっていて、誰の目から見ても戦える状態にないことが伺えた。


 「……あなたは大森林で俺たちを一度見逃しでくれました。なので一度だけです……一度だけあなたを見逃します。」 


 ヤンはそう言い残し部屋を出た。


 「まったく……かなわねぇな。」


 

 


 

 



  

 

 

 



 

  

 


 

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