【シェイプシフト】プティット・ラ・メール
「クロエ、私を信じて一分だけ時間を稼いで!」
「何をコソコソと話しているか知らんが、何をしようと無駄じゃ!大人しく儂のコレクションになれ!」
「誰があんた……なんかの!」
再びファウストから放たれた火球をクロエは防御魔法で何とか防ぐことに成功した。
「辞めじゃ。死体になってしまえば傷を治せぬと手加減をしておったが、この際先に一人殺してから、もう一人を手に入れられればいい。」
ファウストは先程までより格段に長く魔力を体内で練り込み始めた。
「儂らは互いに魔法使い。つまり魔法を使った妨害以外は存在しない。」
クロエは必死に妨害しようと火球や空気の刃などの魔法を殺意を込めて飛ばした。ファウストも防ぐために魔法を放つため妨害にはなっているが、時間稼ぎに過ぎない。
(お願いシルヴィ間に合って!)
クロエはそれでも攻撃の手を緩めず魔法を撃ち続けた。
「無駄じゃ、無駄じゃ。お前がどんなに頑張ったところで十秒後に貴様は消し炭じゃ!」
そう言い放ったファウストの後ろを見てクロエは安堵した。
「後はお願いねシルヴィ……!」
「任せてクロエ!」
「……な!」
ファウストが背後から聞こえた声に振り返った瞬間、ファウストの体は壁へと叩きつけられた。
「き、貴様!なんだその体は!」
シルヴィはジル王子と共にサンテール女王レティシアの元、生物の構造について学んだ。結果魔人のような形だけの変異ではなく、完璧な変異を可能にしていた。
【シェイプシフト プティット・ラ・メール 】
サンテール周辺の海を守っていた守護獣。シルヴィは、この姿に彼の名前をつけた。その姿はリザードマンに近い姿となっていて。全身が鱗で覆われて、長いしっぽが生えていた。
「姿が変わったからなんだ!結局近づかれなければいいだけだ!」
そう言うとファウストは、あっという間に五つの魔法を展開しシルヴィにぶつけた。
「ハッハッハ!魔法で守る暇すらなかったようだな!」
シルヴィのいた場所は爆炎による煙で包まれていた。
「これで残すは貴様一人だ、こむす……ッ!」
(プティット様のように固く!)
魔法が直撃したシルヴィに目立った傷はなく、ファウストは煙から飛び込んできたシルヴィに気づきこそできたものの、反応することができなかった。
(プティット様のようにパワフルに!)
【シェイプシフト】により強化された拳がファウストの体を捉えた。筋力が強化されているだけではなく、鱗を纏い硬さを得た拳による威力は凄まじく、ファウストの体に致命の一撃を与えた。
(な……なんて娘だ!体のパーツだけではなく細胞単位で作り替えおる!い……急ぎ回復しなくては、このままでは……!)
「ま……待て!儂はもう戦えん!見逃してくれ!」
ファウストは回復のため時間稼ぎを試みた。
「……それ、血よね?」
シルヴィはファウストの口から流れる血液を指さした。
「そんなの見てわ……がっ!」
シルヴィはファウストの口の中に指を突っ込み魔力を流した。何かを察したファウストはシルヴィの手の中で暴れ始めたが、今のシルヴィの腕力を振りほどくことができず、次第に力がなくっていき動かなくなった。
「待つわけないでしょ。それにしても……きったな!」
ファウストを倒したシルヴィにクロエが駆け寄る。
「やったねシルヴィ!」
「クロエが一分稼いでくれたおかげだよ。その一分のおかげで【シェイプシフト】を使えたんだから。」
「でも、最後は何をしたの?」
「あぁ、あれは血液の流れを止めたのよ。確実に死んだことを確認したかったから仕方なく……ね」
ファウストを倒したクロエとシルヴィは、今いる部屋を出て、慎重に出口を探しに向かった。




