VS ファウスト
本日の二十一時にも更新あります
「シルヴィ、ここは……?」
「私にも分からないわ……少なくとも安全な場所ではないみたい。」
【テネーブル】の一室。クロエとシルヴィは、足元に現れた黒いモヤに囚われ、気づけば知らない部屋へと連れてこられてしまっていた。
「パぺティアめ……分かっているではないか。ローサの体は失われてしまったからな。」
「ねぇ、シルヴィ。あれって確か……」
「……大森林にいた死霊術師ね。けど死んだはずじゃ……」
(いや、そんなことよりも……) (それよりも……)
((なんか視線が気持ち悪い!))
クロエとシルヴィはファウストから向けられる嫌な視線に強い嫌悪感を覚えていた。
「のぉ若いの。儂はお主らの体に傷つけたくないのじゃが、大人しく死体になる気はないか?」
「クロエやるわよ!」
「うん、シルヴィ!」
クロエとシルヴィは「これが答えだ!」と言わんばかりに、自身の放てる最大の魔法をお見舞いした。
「これで倒せてるといいんだけど……そう上手くはいかないわよね……」
二人の魔法を受けたファウストは、まるで何事もなかったかのようにその場に立っていた。
「ならばいたし方ない……半殺しにした後にじっくり体をいじるとしよう!」
ファウストは羽織っていた服を脱ぎ捨てた。
((うわっキモ!?))
ファウストの体には五人の人間の顔が埋め込まれていて、その一つ一つの顔がまるで生きているように二人は感じた。
「ローサほどではないが、コレクションに加えるには充分な美しさだ。戦いの後が楽しみじゃ!」
ファウストが不敵な笑みを浮かべると同時に、体に埋め込まれた五つの顔がそれぞれファウストの体内から魔力を抽出し始めた。
「シルヴィ、後ろに下がって!」
六つの脳を使ったファウストの魔力抽出は凄まじい速度で巨大火球を生み出し、クロエたちを襲った。間一髪クロエの光の防御魔法が間に合ったものの、その威力は凄まじく、防御魔法の周囲は焼け焦げていた。
「ほう、今のを耐えるか。」
「デタラメね……」
「貴様らにローサや、せっかく手に入れたエルフのコレクションを奪われて気づいたんじゃよ。妻を失う悲しみを!コレクションを壊される苦しみを!」
「沢山殺しておいて……!」
「儂は言葉を話さない死体が好きなんじゃ。歳をとって老いることのない死体がな。だから儂は人を殺す。」
「狂ってる……」
「はなから分かり合えるとは思っておらんよ。儂はそういうふうに生まれた、ただそれだけだ!」
ファウストは自身の体から大森林の際に二人の体の自由を奪った、ガスを発生させた。
だが、前回のように上手くはいかなかった。二人は以前より格段に魔法への理解を深めており、空気や地面に含まれる魔力を感じ取れるまでになっていた。
二人はファウストが生み出したガスが自身の体に触れた瞬間、相反する光の魔力をガスに流し相殺した。
「あの頃よりは成長しているようだな。だが、これはどうだ!」
再び五つの顔が同時に魔力の抽出を始め、クロエとシルヴィは放たれる魔法を相殺するため、魔法が放たれるのを待つしかなかった。
今度の魔法は勢いよく放たれた水球。水球の恐ろしさは直撃のタイミングではなく、破裂した後の水流にある。その威力は通常の魔法使いが放ったものでもオークやトロルなどの重たい魔物が転倒するほど。
クロエは床を強く踏みしめ魔力を流し、縦に鋭い壁を作り出した。
「そのようなもので防げるとでも!」
縦に作り出した壁に水球が触れた瞬間破裂し、大量の水が二つに分かれクロエたちへと押し寄せた。
「あとはお願いシルヴィ!」
それを聞くと、シルヴィは壁の右側から押し寄せる水へと飛び込んだ。
「一体何を……」
シルヴィが飛び込むと右側に流れてきていた水の勢いがみるみると弱くなり、緩やかな流れへと変わった。
「やったねクロエ!」
クロエが水の流れを二つに分けたのは、シェイプシフトで自身の体を作り替えたシルヴィがギリギリ耐えられる勢いにするため。シルヴィは水に飛び込むと同時に、水に魔力を流し支配を奪った。
「でも、どうしようシルヴィ。」
二人はファウストの攻撃に防戦一方になっていた。理由は最初の攻撃にあった。最大威力の魔法を受けて無傷、いや、魔力により相殺されたことが二人には分かっていた。
自然が溢れている場所ならまだしも、建物の中では、純粋な魔力量と実力の勝負になってしまう。今は何とか防げているものの、時間の問題であることは明らかだった。
「クロエ……私を信じて、一分だけ時間を稼いで!」




